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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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第一話「最後の走り屋の最後の軌跡」④

 魔法で空を飛べないってのなら、グライダーとか人力プロペラ機とか作ったりして、そう言う方向で発展しそうなもんだし、飛行船くらいなら作れそうなもんなんだがなぁ……。

 

 実際、2050年代の日本では核融合発電の副産物でヘリウムが大量に余るようになったんで、一時期はほぼ絶滅した飛行船が復権してる。


 なんせ、俺の本業も電動飛行船運用の個人会社だったからな……そこら辺は詳しいぜ。

 その前は、物流トラッカーだったんだが、いい加減割が合わなくなって来てたんで、スパッと辞めて、個人事業を立ち上げたんだよ。

 

 ちなみに、業務内容は各地の飛行船発着所へ飛行船を飛ばして、人や物を載せて、リクエストされた発着所を順番に巡るって内容。

 

 あくまで運用だから俺が現場に行かなくても、飛行船はAIの自動操縦だったし、荷役もロボット任せだったから、基本的に、業務支援AIが提案してくる次どこへ行って、何を運ぶかって予定の候補を提示してもらって、いい感じのプランを選んでゴーサインを出す。


 まぁ、たまに修正案を出すようなこともあるんだが、基本的にAIおまかせで余裕黒字だったんで、ほぼリモート業務で、それも朝イチにタブレット片手に小一時間ほどかけて、今日はこれでやっちゃってってやるだけの簡単なお仕事だった。

 

 他には、悪天候とかトラブルの際にどう対応すればいいかの緊急判断をしたり、人を乗せる時には運転台に座ってるだけながら、機長として現場に出て、客の話し相手になったり、観光案内みたいな事をやったり、弁当やら飲み物をサービスして、テーブル囲んで一緒に飲み食いして、土産物を売りつけたりだの……。

 新規顧客の開拓や常連の会社の付き合いゴルフなんかも仕事のうちだったんだが、いつも助かるよーって労いの接待宴会へのお呼ばれなんかもあったな。


 個人会社ならではの顧客の細かい注文や要望に対応出来る事と、顔が見える事業主ってのを売りにして、それなりに繁盛してた。

 

 もちろん、EVトラックやら高速EVバスの方が大量の人や荷物を運べるんだが……。

 そこそこのスピードが出て、発着場も2-30mくらいの広さの広場とか、それこそビルの屋上なんかでも十分なので、地味にあちこちに残ってる山奥の陸の孤島みたいな地域や離島で自給自足生活を送る人々の足代わりや、生活必需品の定期便を運んだりとかそう言う仕事も良くやった。


 道路網や駅とかターミナル関係無しで、海の向こう側だろうが割と一直線で目的地に行けるから、総合的な輸送時間が早い上に、とにかく運航コストが安いから運賃も格安という事で重宝されていて、結構な数の同業者がいたし、利用者も結構多かった。


 最近では飛行船の両サイドに広告用ディスプレイを付けることで、空飛ぶ広告塔として運用してたから、広告代で結構儲かってたな。


 もっとも、この世界の奴らは、マナを使う魔法と魔道具に完全に依存してるから、自然科学への理解も乏しくて、飛行船どころか、機械関係技術も全然発展してない……。


 実際、この世界でも再現できる飛行船の設計図なんかも描いて、爺さんにも見てもらったんだが。

 こんなもん話にならんって一蹴された……。


 やっぱり、空の上だとマナ供給が途切れるってのが一番の問題でなぁ……動力の問題がネックになって、そこがどうしても解決できないんだよなぁ……。

 

 ぶっちゃけエアライドとか、油断してると空飛びそうになるくらいなんだが……。

 既存技術でも、あと一歩で、飛行機なんかも作れると思うのに……。

 

 なんだか、いまいち残念さが漂ってるんだよなぁ……この世界の技術って。


 もちろん、俺も最初は戸惑ったし、散々苦労したんだが。

 住めば都……転生ボーナス何だが知らんが、生前はアラフィフが見えて来てた平成ジジィで、あっちこっち痛めてすっかりくたびれてた身体も20代くらいの頃くらいに若返ってたし、俺も魔力操作……要するに魔法が使えるようになってて、エアライドの操縦に関しても、そこそこの適性があったし、運送業のノウハウもあったから、食い扶持に困ることも無かった。


 まぁ、最初のうちは拾ってくれた爺さんのところで、運送業者兼修理業者のアシスタントみたいな事やってたんだが。

 ある日、爺さんが亡くなって、途方に暮れてたところで、ちょっとした仕事がきっかけで知り合った俺と同じように現代日本から召喚されたって話の少年勇者とそのお供達と共に、世界のためにって戦ってたんだわ。


 もっとも、残念ながら、俺には勇者のような神様に与えられたチートもなく、勇者のお供だった賢者や聖女みたいな卓越した魔法が使えるわけでもなく、剣技とかも全然駄目で、要は微妙なお荷物くん……。


 もちろん、異世界で生きていくに当たって、それなりの武術とか魔力操作なんかは身につけてたんだが。

 ……チートにゃ、まるで程遠かった。

 

 最終的には、戦場へ向かう勇者パーティの送迎車の運転手みたいな扱いになって……お約束のように、パーティ追放食らっちまった。


 ……とは言っても、いびり出されて追放されたとかそんなんじゃなくて、どっちかと言うと俺が自分から身を引いたって感じだったんだがね。


 なんせ、勇者パーティの奴ら……勇者からはやたらと嫌われてたけど、他の奴らからはむしろ慕われてた……。


 特に、賢者と聖女のお子様姉妹。

 こいつら、勇者を支えるのがお役目のはずなのに、年長者の意見を聞きましょうって言い出しては、何かというと俺を頼って、何でもかんでも俺に決めさせようとしやがってたんだわ。


 まぁ、それで失敗するどころか、俺の慎重論が正解だったって事が重なって、勇者も面白くなくて、すっかりやる気なくすし、俺は俺で実力は雑魚なのに、何かと言うと頼られるって理不尽なことになってて、すんげぇ困ってたんだわ。

 

 なんせ、結局俺……エアライドをちょっと早く走らせる事が出来る程度しか出来なかったんだからな。

 もっとも、俺の愛車は伝説のエアライド職人とも呼ばれてた爺さんが自らスペシャルチューンした魔改造車だったから、そっちの方が活躍してたな。


 勇者パーティの危機に颯爽とエアライドで現れて、エアライドの主砲を一発ぶちかまして、そそくさと全員回収して撤退。

 そう言う役回りが多かったんで、他のメンバーからはいつも感謝されてたんだがね。

 

 もっとも、パトロンの王様やら教会の大司教様やら貴族のお偉い様方には、役立たずの無能モノやらなんやらと、やたらと嫌われてた。


 こっちはきっちり勇者パーティを無事に連れて帰れた時点でミッションコンプリートって事で、毎回そこは完璧だったんだから、ケチを付けられる謂れはないんだが。


 実際、俺が回収に来た時点で、勇者やルードリックなんかも、重傷を負って虫の息で死にかけてたってのも何度もあったし、賢者と聖女の姉妹も魔力を使い果たして、マナ欠乏症で揃って倒れてるとか、そんな事も珍しくなかった。

 そんな状況では、撤退以外選択肢なんて無かったんだが。


 やれ撤退が早過ぎた……もう少し粘れば勝てたのに何故退かせたとか、そんな調子で、後から勇者くんが言ってた見当違いの文句を鵜呑みにして、誰も死なせずに済ませてやったのに、何故か俺一人がガン詰め状態で責められるってのが、常態化してたんだよな。


 俺も最初は我慢してたんだが……テメェら、何も解ってないのにいい加減にしろって、怒鳴りつけて反論したり、公衆の面前で罵ったりとやりたい放題やって、完全に相容れなくなってて、いい加減引き際だとは思ってたんだわ。

 

 まぁ……気持ちは解らなくもない。

 英雄なんて、若くてアホなくらいがちょうどよくて、半端に賢しい地味なおっさんとか、そりゃお呼びでないだろ。


 おまけに、俺が強制撤退させたせいで、自分たちの計画が台無しになったりすりゃ、そりゃ逆恨みだってするだろ。


 撤退タイミングについても、確かに勝つか負けるなんてのは、紙一重だから、撤退は限界ギリギリまで粘ってからってのも解るんだが。

 パーティ戦ってのは、基本的に誰か一人が倒れた時点ですでに負け確なんだよなぁ……。


 いくら多少の怪我なら治癒魔法で治せるからって、そんな一瞬で重傷が回復するようなもんじゃないからな。

 そこら辺は、聖女がいつも愚痴ってたから、良く知ってる。


 そもそも、撤退ってのはまだ戦える……余力がある段階でするもんなんだが、そこを全く解ってないヤツらばっかりなんだよなぁ。


 結局、形勢不利で全滅が見えて来てから、撤退しようとしたところで、全滅するのが先延ばしになるだけなんだわ。


 ビジネスなんかも一緒で、時代の変節やら物の価値の変化やらで赤字続きになってきたら、その時点で潮時だからなぁ。

 そこをまだ頑張れるとかやって、万年自転車操業状態になってたり、にっちもさっちもいかなくなって、ご破算とかよくあるんだがね。


 そこら辺は、実戦をくぐり抜けた歴戦の奴らほど良く解ってたんで、聖騎士ルードリックやもう一人の仲間、剣聖ドレイク辺りは、いつも危ないところだったから助かったって言ってたし、騎士団長なんかも俺の撤退を決める判断力は絶妙だったって、毎回絶賛してた。


 俺も、勇者パーティの誰一人として死なせたくないって思ってたから、いつもギリギリ一歩手前くらいのタイミングで救援に入ってたし、そもそも勝負にもなってないってパターンばっかりだったんだよ。


 勇者くんは、彼我の戦力差も戦局も見れないアホだったから、ちょっと不利になったくらいで、強制撤退された事で、まだ戦えたのにっていつもキレてた。

 もっともドレイクなんかからは、死に急ぎたいなら、今から一人で戻ればいいって諭されてたし、聖女なんかは、勇者の無茶のしわ寄せをモロに食らう立場だったから、なら次から治療は一番後回しでいいですね? とかやって、黙らせたりもしてた。


 基本的に勇者の話しか聞いてくれない国王やら貴族連中は、俺のせいにしとけば、勇者の名声を落とさずに済むとか思ってたみたいで、勇者の話を鵜呑して、毎回俺のせいにして、無能だなんだと文句言ってきて、ブチ切れた俺が言い返したり、罵り返すってのが常になってきててなぁ。


 しまいにゃ、決闘を申し込んできたバカ貴族をその場で殴り倒して、治療院送りにしたんだが。

 逆恨みで暗殺者送り込まれたりと、いよいよヤバいことになってきた。

 

 なんでまぁ……さすがに命を脅かされるようになってきたんで、魔王本人との決戦後、一段落付いたからって、勇者パーティの他のメンバー、聖騎士ルードリックのおっさんとドレイクに頼んで、いつも余計なことばかりする無能者……って糾弾してパーティ追放。

 そんな追放劇を演じてもらって、めでたくパーティ追放お役御免ってなったって訳だ。

 

 ちなみに、本人達は心底嫌そうな顔してて、割とグダグダな追放劇になったし、事情をよく解ってなかった聖女と賢者の双子姉妹は「だったら、私達も抜けます!」とか言い出して、むしろ勇者パーティ崩壊みたいになったらしいんだが……。


 でもまぁ、それも過去の話。

 今の俺は地味ーな運び屋として、毎日地方都市と山一つ超えた田舎町を往復して、物や人を運ぶ……そんな日々を過ごしている。


 まぁ、地味っちゃ地味なんだが……あっちでの稼業も似たようなもんだったからな。

 分相応って言葉もあるんだし、そんな悪い生活だとは思ってない。


 最初は飯がマズいとか色々あったんだが、料理好きな賢者ちゃんから色々と知られざるスパイスの知識やら、うまいモンスター食材について教えてもらって、創意工夫を重ねて、自力でウマ飯を作れるようになってからは、だいぶ改善された。

 

 それに、勇者たちがやりあってた魔王との戦争も、決戦後……別に魔王本人はピンピンしてたし、こっちは完敗だったんだが。

 何故か、向こうから一方的に休戦を申し込んで来て、占領地域も無条件返還とかなって、元々負け越してただけに否応なしに休戦状態になった事で、世の中も少しは平和になって……俺は俺で、こう言う生活も悪くないって思うようになってたんだ。


 ところが……だ。

 まず、季節はもうすぐ春って時期なのに、季節外れの大雪が降った。 

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