第1話 宅配司書と作家志望 ⑭
ガラス張りの壁からヤシの実と海辺が覗ける会場。
南国の花々とキャンドルが灯る開放的な場所で式はつつがなく進行した。
新郎新婦の紹介、なれそめは友人の紹介という、政略結婚にありがちなカモフラージュ、たいして親しくもない友人のおざなりな余興。プログラムの一連の流れが歓談という名の暇つぶしとともに水のように流れゆく。
ところがある時、緩慢な時の流れが止まる。
高砂の隣の舞台に、見慣れぬ女が降り立ったからだ。
薄紫のドレス。シャワーツリーの花を零すようにハーフアップのトップに飾り。
美しく儚げな女だ。
不審に思った招待客がプログラムを見通せば、余興の最後に、珍妙な文字列を見出す。『ブックトーク』。
女は薄桃色のヒールを引き胸に手をあて一礼し、かすかに微笑んで祝福の言葉を告げる。
「ご両家の皆様、本日はおめでとうございます」
年頃にしては堂々たるたたずまいで、陶器のような顔で破顔し、女は名乗る。
「ウィスタリア私立図書館宅配司書サービス所属。ラヴェンナ・ヴァラディです」
戸惑いに広がるざわめき。だが音楽的な響きの名前は、奇妙にこの場に相応しいように思えた。
「ヨーロッパにあるウィスタリア私立図書館から新婦のプルメリア様より依頼され参りました。わたしが捧げるのは『ブックトーク』――あるテーマに沿い、いくつかの本を連ね、それこそが一つの物語のように紹介する余興です」
女の前に設えられたテーブルに、大小の本が並べられていく。
泰然とした泉のような瞳は、涼やかに微笑んだ。
「ウィスタリア私立図書館より、プルメリア・アネラ様に捧ぐ、ブックトークのテーマは、『アウトサイダー』です」
平生そう頻繁に耳にはしない単語にまた、かすかなざわめきが起こり、刹那。
会場の照明がゆっくりと落ちた。




