第46話 ドレスコード問題
どうも様子がおかしいのが気になるな。
それに、ジョルジオも心配そうな顔でロマーノを見ているような……?
「ロマーノ様? ビビの言っていることが分かるのですか?」
やっとビビの言っていることを翻訳出来たかもしれないのだ。
とりあえず挙動不審なのは置いといて、今は詳しい説明をお願いします!
「いえ……、私にも幼い子どもがおりますので。なんとなく、こう言っているのではないかと思っただけです。当たっているかどうかはわかりません」
「そうなんですか。それなら、ビビ本人に聞いてみましょう。ビビ、お父さんのお名前は、えーと……なんだったかしら」
あれ、もう忘れた。
「ヴィルジリオ……」
そうそう、それそれ!
難しい名前だよね、ビビくらいの子どもに正確に発音しろっていう方が無理だわ。
「うん! とーしゃのおにゃまえは、びゆでぃーおー!」
また言えてないけど、どうやら正解みたいです!
やっと自分の言っていることが通じて嬉しいのか、ビビはパアッと明るい笑顔を見せている。
「……陛下、ビビの父親の捜索は、私にお任せいただけないでしょうか?」
「それは構わんが、心当たりでもあるのか?」
ほんと、実は知り合いなんですか?
「いえ、そういうわけでは。ですが、騎士という身分の者ならば、探し出すのにそう時間はかからないでしょう」
なるほど、騎士ネットワークを使って調べるってことですか!
これは期待できそうだな。
いやあ、ロマーノって、てっきり顔で採用されたとばかり思っていたけど、仕事も出来るタイプなんだね。
……って、当たり前か。
国王陛下の旅に同行してくる騎士なんて、よく考えなくてもエリート中のエリート、選ばれし騎士に決まっている。
「よかったわね、ビビ! きっとすぐに見つかるわよ」
「う? うん」
あれ、喜ばないの?
今日一日でものすごく進展したというのに、ビビにはいまいち伝わってないみたいだなあ。
まあ、ぬか喜びになっちゃうかもしれないし、父親が見つかってから理解してくれれば十分か。
「アメティースタ公爵夫人。至急手紙を送りたいのですが、もし差し支えなければ書斎をお借りできますでしょうか」
ロマーノはスッと私に近づいて来たかと思うと、小さな声で書斎を借りたい旨を伝えてくる。
「ええ、もちろんです」
このコテージにも書斎はあるし自由に使ってもらって全然かまわないけど、なんでそんな小声?
顔もめっちゃ真剣で怖いくらいだし、いつものチャラさはどこへ行ってしまったんだろう。
へんなの……。
「カーラ。ロマーノ様を書斎へご案内して差し上げて」
私は、ちょうどお茶を運んで来たカーラに案内を頼んだ。
ここにはノーラも王宮から来た侍女もいるし、お茶を注ぐのはカーラ以外の人にお願いすればいい。
「かしこまりました」
「ロマーノ様。お急ぎでしたらハヤメールを出しますので、お手紙を書き終わったらお知らせください」
馬車に積んで王都まで送ったら、着くまでにおそらく2週間くらいはかかるだろうし。
下手したら、手紙より先に本人たちが王都に帰り着いてしまうかもしれない。
「それは大変助かります。ありがとうございます」
「いいえ、お礼を言うのはこちらの方です。ビビの父親を捜すために骨を折ってくださるのですから」
「……」
私がお礼を言って微笑むと、ロマーノは目が合うのを避けるように頭を下げた。
そしてそのまま踵を返し、傍で待っていたカーラと一緒に行ってしまった。
……やっぱり様子が変じゃない!?
その後私たちは、お茶を飲みながら明日からの観光について国王陛下と王妃様の希望を聞くことにした。
ちなみに子ども達は、窓からの景色がよっぽど気に入ったらしく、きゃあきゃあ言いながらガラスに張り付いて動かないので、室内ピクニックよろしく敷物の上にケーキとジュースを並べてそこで食べてもらっている。
「そういえば、宣伝用の映画をご覧になっていただけたと伺いました。どこへ行きたいかなどのご希望はございますか?」
いつの間にか王都に持って行かれちゃったから、私はまだ見てないんだけどね。
「わたくしは湖と演劇を楽しみにしていたのよ。湖はここからでもよく見えるから、行きたいところは劇場かしらね」
ふむふむ、観劇をご希望ですね!
我がアメティースタ公爵領観光の目玉なんですよ、さすがお目が高い!
「母上、3日後がこけら落としの公演ですので、みんなで観劇に行きましょう。父上と母上に見ていただけるとあって、劇団員も張り切って練習していますよ。プリマヴェーラ辺境伯家やフィオーレ伯爵家、他にも友人たちへ招待状を送っていますので、それなりに盛況になるのではと期待しているところです」
そうだったの!?
わあ、3日後にみんなに会えるんだ、嬉しいな!
「そうか、それは楽しみだ。このような辺境の地で社交が出来るとは思わなかったぞ。クリスティアーノは旅の間は動きやすい服装でと言っていたが、念のために礼服も用意しておいてよかったな」
「しゃ、しゃこう……」
それは光を遮るアレですか……、遮光。
いやいや、現実逃避してる場合じゃない!
礼服って……、女性ならイブニングドレス的なゴージャスなドレスのことだよね。
ど、どうしよう!?
私、劇場へ着て行く服がない!
「はー……、だから用意しておけとあれほど」
クリス様、小言は後でお願いします……!
今はこの状況をどうやって乗り切るか一緒に考えてください!
リアルにシンデレラ状態に陥ってしまいました!
そ、そうだ。
一回プリマヴェーラ辺境伯家へ行って、お母様にドレスを借りる?
「ふふっ、クリスティアーノ。わざとそんな意地悪なことを言うものではないわ。マルチェリーナのドレスはちゃんと用意してあるから心配しなくていいのよ」
「えっ?」
用意って、私のドレスを?
王妃様が?
「マルチェリーナのためにドレスを作りたいから、結婚式のドレスを作った裁縫師を紹介してほしいとクリスティアーノに相談されたの」
そんな、クリス様!
ただでさえ仕事が忙しかったのに、私のドレスのことまで考えてくれてたなんて!
私って、実はものすごくいい旦那様を持ったんじゃなかろうか。
結婚してからの方がどんどん優しくなった気がするし。
クリス様は、釣った魚に餌をやらない人とは真逆のタイプだったんだな……。
なんという嬉しい誤算だ。
「まあ結局は、ドレスは母上が贈ってくれることになったんだけどな」
クリス様は若干不服そうな表情を浮かべている。
「クリス様。私、そのお気持ちだけで嬉しいです! 王妃様も、私のためにお気遣いいただき、本当にありがとうございます」
「いいのよ。今回の旅のお礼だと思って受け取ってちょうだい。実は、この領にはまだいいお店がないかもしれないと思って、前々からドレスを作らせていたの。季節や用途に合わせて10着ほど作らせたわ」
え、いきなり10着も!?
さすがお金遣いもロイヤル級ですね……?
ま、まあ、お金持ちがお金を使わないと経済が回らないって言うしな。
私たちも、そこはもう少し見習わないといけないのかもしれないね。
更新が遅れまして申し訳ありませんでした。




