六
「覚えていますか。あなたがこの街に滞在していたのは百鬼夜行を壊滅追いやるだけが目的だった。仕事完遂と見るや、あなたの子でありペットであり求婚者であり友である僕を、置いていってしまった。やっと探し出して僕はありのままの自分で…つまり、子鬼から上格してそのまま妊婦の腹に住み着き鬼人となった訳ですが…とにかく、ありのままの『ひと』の姿で思いを告げました」
そして、と彼は溜めた空気を吐き出した。
「藍太さんはこうおっしゃったのです。『俺は、もう若くねえ』」
僕はあなたがもしや、何か特殊な好みをお持ちの方だと解釈した訳です。
藍太は、一連の騒動が自分によっていたとは考えなかったらしく、かぱんと間抜けに口を半開きにして老けた青年を見つめた。
大変生真面目に彼は口を開く。
「ストレートに聞きますけど、奥さんの何が良くて、僕では何が駄目なんです?」
藍太は、それに答える言葉を持てず、情けなくも隣で沈黙している孫に救難信号を送る。瑠輝は、珍しく呆然と恭介に視線をやるばかりに徹していた。
恭介は、実際は子鬼の頃から年を換算すれば藍太と同じ又は一つか二つばかり年上である。
彼は、真実藍太の好みのタイプを見付けようとしただけであり全くもって害意は無かった。
よって、余計面倒なことになったのだ。彼が自分の息子だと信じている夫妻には、デタラメに嘘八百自営業を並べ立てて仕事を創作し業務の雑務を手伝うことを決断したと乾きまくった口で説明した。いや、そうするしか残された道は無かったのだ。
承知しなければ、奴はまた意味不明な嫌がらせをかねるアプローチをすることが容易に想像出来たのである。
押し掛けて勝手に技術を吸収していく孫。
無駄に能力の高い助手。
自分の引退が急速に遠のいたのを藍太は感じとった。
完
× 090223
リクエストの切ないおっさんラヴを取り違えた感。が酷くてしかし、押し付けた作品です。若干名、新たな扉が開いたそうです。
いらっしゃいませ、爺はいいぞ。




