第99話 外行きの衣装
文化祭準備。
結論として半ドン。
午後のこと。
「~~~♪」
春人のアトリエに私はお邪魔していた。春人は鼻歌を奏でながら御機嫌で、私の存在を感知しているのかも怪しいところ。
熱心に衣装を縫っていらっしゃった。
「ソレ着て外に?」
「うん……」
朗らかに頷かれる。
フリフリのロリータファッション。
「私の分も作ってくれる?」
「一緒の……?」
「合わせで良いんじゃない? ダメ……かな……? 普通にそれなりな愛らしさは口幅ったいながら持ってるつもりだけど……」
皮肉にしか為っていないとも言う。
「っ……」
パァッと、華やぐ春人の笑顔。
――チューリップみたい。
少しそう思った。元々の春人御本人が美少女顔だ。華やげばそれだけ魅力的にも映るのだろう。場合によっては私より可愛らしい。無念。
「じゃあ作っちゃうね……」
寸法もとっている。
型紙も。
であれば、布と糸を調達するのみ。
「幾らかかる?」
「五千円もあれば……十分かな……?」
「じゃとりあえずコレで」
五千円札を取り出す。
「承りました……」
春人は受け取って、スケッチブックに向き合った。
「何するの?」
「完成予想図を……書くの……」
スケッチブックに……とのことらしい。
落書きくらいで良いらしい。ただ、イメージを固めると、作業に雲泥が現われるとか。コスプレってわからないな。西方浄土……じゃなかった……裁縫上手には、それ相応のルールがあるようだ。
「冬コミの衣装も?」
「まだ時間が……あるから……」
それはまぁ。
そうですよね。
夏休みが終わったばっかりだ。
冬について考えるより、秋物の服を見る方が優先か。
シャシャーッと、スケッチブックに線を引く。
それがまた手慣れていて、
「本当に好きなんだね」
「魂……」
とのことのようで。いや、いいんだけども。その熱意の根幹にこそ首を傾げざるをえなく存じます。
「やっぱり男の人と?」
「ケースバイケース……」
否定はしないんだ。
それもどうよ?
「だって……寂しいよ……」
「――――――――」
少し……胸を突いた。
春人の言葉が。
うちは健全な家庭だけども。
両親健在。兄一人。私一人……の安楽な家族。
寂しい……か。
わかるようなわからないような……それでもわかるような。とても一概に纏まってくれない焦燥感。
「なんなんだろ?」
この気持ち?
少しざわめく心の奥。
ふと貧血を起こしかけた。
「――――――――」
「大丈夫……?」
傾いた私に、心配そうな春人の声。
私はアトリエのテーブルに手を突いて、
「だいじょぶ」
もう片方の手で制止させた。
少しトラウマが。
けれど心配させても旨みは無い。ここは突っ張る場面だろう。そうでもしないと女の子じゃない。意地があるんです女の子には。
「それより私のロリータは?」
「イメージ図……」
ピンクでフリフリながら、胸元が少し開いていた。
「こういう場合、全身布だらけにするんじゃないの?」
「僕と違って……おっぱいがあるから……陽子さんには……」
あるけども。
それを此処で言いますか。
ちょっと恥ずかしい。
ちょっとっていうか大分ね。
本当にほんなこつ。
「でも服は可愛いわね」
「えへへ……」
照れ笑いの愛おしさよ。
抱きたい。
男根無いけど。
ちょっと春人をナンパする男性の気持ちがわかったかも。
女ではありますれど。
でも、だから、多分春人は害意がないのかな?
そんなことを思った。
敵。悪。害。毒。これらが春人からは感じない。ソレがどんな結果をもたらすのか? わからないけどなんとなく、「悪くないよね」そんな風に。
「何が……?」
「何でもございません」
言えるか。恥ずかしすぎる。




