第85話 打ち上げ
「お疲れ様でした」
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私たちは互いに乾杯した。
お通しと刺身が、まず並べられる。
お兄ちゃんと凜ちゃんは、生。
私と春人はジンジャーエール。
「いやぁ……美味い! そして可愛い!」
「でっか」
「実際に可愛かったですよ。二人とも。あれでは劣情を呼ぶでしょう。その……大丈夫ですか? ストーカー的に」
イヤな事言うね、凜ちゃんは。
「陽子さん……」
へぇへ。
「やっぱり……写真が……おかずに……」
「食事中」
ペシッとチョップ。さすがにシャレになっていない。
「えへへ……」
どうやら妄想がノンストップでアクセルべた踏みらしい。
女の子の格好をして。女の子の下着を纏って。その下着を……肢体を撮られて。オナニーの供物にされる。
それが春人の喜びらしい。
今は、金髪で、顔も隠していないので、女性的感性が表情にモロに溢れ出ていて、恍惚としていた。
本当にこやつは……。
「生をもう一杯」
「ハイボールを」
差し押さえ気味だ。
「なにか遠慮してるの?」
私はお兄ちゃんに聞いた。
「未成年の預かりがあるからな。酷く酔えないんだよ」
「二次会で、飲みますから」
時間の関係で、私と春人は一次会で解散と相成るらしい。
健全だ。全うとも言える。
こう言うところは大人なんだよね。
お兄ちゃんにしろ凜ちゃんにしろ。
「大人の対応だね」
「それはもう。酒を酌み交わすのはイベント事ですので。陽子さんが成人になる日が待ち遠しいほどです」
さいでっか~。
「あ、もう呟かれてる」
春人の写真が、ネットに掲載された。
――陰陽陰子。ちなみに健全な写真だ。が、猛烈にコメントが付いてきた。
「あはぁ……」
だから蕩けるなって。言って詮方なき……だけども。
私も一緒に映っている。
一応化粧もしているし、オタク界隈の市場は狭いから、足を引っ張る事はないだろうけど。
「楽しかった面は否定出来ない」
それは確かだ。
春人が作ってくれた衣装。
採寸。仮縫い。モデリング。
全てが愛おしい。
「お前本当に男か?」
お兄ちゃんが、春人に問うた。
「抱いてくだされば……わかりますよ……」
「いいのか?」
「ええ」
確かにお兄ちゃんも『大人の男性』だ。
しかも顔が整っている。
そりゃ春人も良い感じだろう。
「男色の趣味はないんだが……」
「日高先生とは?」
「止めてくれ。マジで」
「拙は先生好きですよ?」
「お前の場合は烏丸茶人だろ」
お兄ちゃんのペンネーム。
「ま、気が向いたらな」
生を飲みながら、刺身に箸を付ける。
煮魚。
天ぷら。
活き作り。
とても豪勢な打ち上げでした。
「同人だけでも生活出来るな」
とのこと。
皮肉な結果ではあれども。
「でもライター止めないよね?」
「書きたい話もあるしな」
「いいなぁ」
「何がだ?」
「お兄ちゃん……好きな事を仕事にしていて」
「本当に好きなのは陽子だけだ」
「またそうやって茶化す……」
「本音なんだが……」
「抱く?」
「いいのか!?」
食いつき凄いね。
「ジョーク」
「誰を殺せばいい?」
そういうことをいうから、誤解されるんだけど?
「はあ」
溜め息。
そして一次会は円満に終わった。
お兄ちゃんと凜ちゃんは別のバーへ。
私と春人は、タクシー代を渡され、帰途につく。
さすがに荒稼ぎしただけはあって、金には不自由してない御様子。
そんな感じでコミマはお終い。
とっぴんぱらりのぷう。




