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最強のBランク暗殺者 ~腐敗した王宮を自主退職したら、面接で不採用にした才能の原石たちからの、逆スカウトがとまらない~  作者: 糸音
第1章 ハンターギルドの剣聖

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面接① ~後に剣聖と呼ばれる少女~

寡黙なイケオジ主人公のハイファンタジー。

楽しんで頂ければ幸いです。

 

「次の者。入れ」


 白い漆喰で塗装された廊下。とある部屋の前で身を強張らせていた少女が、立ち上がった。

 緊張で顔をひきつらせながら、ドアの前で少し戸惑ったあと、思い出したように両開きのドアを開ける。自分より先にこの部屋へ入っていった者の動作を思い出した。


「――し、失礼いたします!」


 少女の故郷は王都から馬車で10日はかかる、廃れた農村だ。石造りの建物も、目を見張る装飾が施された廊下も、床の上に敷かれた赤い絨毯を踏みしめる感触も、何もかもが初めての体験だ。


 そんな慣れない環境で、自分より先に部屋から出てきた男が、死んだような顔をしていたら、緊張もピークに達するだろう。


 ここで失敗すれば、故郷の皆の食い扶持が無くなる。


「名と年齢、それと出身地を」

「はい! フィリス、です! 家名はありません! 今年で10歳になります! ルーネス領の農村から来ました! 本日はよろしくお願いします!」


 緊張で締め付けられた喉でも、何度も練習した言葉を噛まずに言い切ることができた。 勢いよく体を折りたたむような一礼をすると、目の前の広い机に置かれた資料と、自分の顔を見比べていた人物が、小さく頷いた。




「面接を担当する、モルヴェント・リヴフリードだ。本日はよろしく頼む」




 淡々とした声色の、くぐもった声の後、面接官を名乗る人物が頭を下げる。

 少女の緊張は相変わらずだったが、その礼を見てフィリスの中に、少しの安心感が芽生えた。


 モルヴェントと名乗った人物は、使い古した鉄仮面で顔全体を覆っており、表情を伺うことはできない。鉄仮面の中で反響する低い声から察するに男なのだろう。

 ここに来るまでに会った、整然とした制服に身を包む兵士たちと違い、目の前の男は、少し色の褪せた皮の服の上から、胸当てや、籠手などの防具を着込んでおり、兵士というよりは密偵のような装いだ。


 そんな怪しげな格好なのに、軽く会釈するだけの動作が、王都に来てあった誰よりも、感じが良かったように少女は思えた。


「そこの椅子に掛けてくれ。今からいくつかの質疑応答を行う。返答には嘘偽りなく答えるように」

「はい」


 モルヴェントが示した椅子に、一礼してから腰を下ろす。

 こうして、フィリスの軍部採用をかけた面接が始まった。



 ♢ ♢ ♢




「それでは、『紋(もん)』の発現は9歳から?」

「はい。背中と両腕両足に『身体強化』の紋と、左手の甲に『治癒』の紋です。……それと、胸のあたりに、見たことも無い紋が」

「『固有紋(ユニーク)』か」


 フィリスが頷きながら、少しためらった様子で、服の裾に手をかける。

 そのまま服を脱ごうとするのを、「脱がなくていい」とモルヴェントが制す。


「今の大きさはお前の掌と同じくらい。特定の距離を自在にワープできる、『瞬間移動』の紋といったところか」

「……分かるんですか?! まだどんな紋なのか、私にも分かっていないのに」

「俺のはそういう固有紋だ」


 鉄仮面の奥で、何かの模様が淡く光る。


「固有紋の方は力を扱えていないのだろう。まだ体が紋の力に適応できていない。だが、年を重ね、体が出来上がれば、身体強化と合わせて、相当な戦士になるだろうな」


 自分でもどんな力が眠っているのか分からない固有紋の性質を、モルヴェントが断言するように告げる。


 これが、噂に聞いていた『魔王討伐の立役者』か。


 認められたことよりも、目の前の人物の潜在能力の高さに驚かされて、フィリスは嬉しさを握りつぶした畏怖の念を、唾と一緒に飲み込んだ。


「お前の潜在能力は分かった。後は、その年で兵役を志願した理由を聞かせてくれ」


 面接の要、といわれる、『紋』についてのアピールは十分にできたように思う。

 気持ちを切り替えるように、フィリスは背筋を整え直して、志望動機をはきはきと告げた。


「故郷の皆の為、稼ぎに来ました。王宮で戦士として功績を上げ、故郷の皆が飢えに悩むことなく、安心して暮らせるようにしたいです」


 フィリスの言葉に、モルヴェントが何かを考え込む仕草をした。

 しばらくの沈黙の後、モルヴェントが続ける。


「今から尋ねることには、ありのままの気持ちで答えてくれ」


 嘘をついていたわけじゃない。念押しの意味で告げられた言葉にフィリスは頷いた。

 そして、二人の声以外何も聞こえない面接室の中、質疑応答の時間が続いた。『紋』について――戦士としての潜在能力を量る時間よりも、その時間は長く続いた。


 気が付けば、面接は予定時刻を30分ほどオーバーしていた。他の者の倍の時間をフィリスに割いていたことになる。


 そして、面接の終わり、モルヴェントがフィリスに改まった様子で告げた。




「――そういうわけで、俺はお前のことを不採用にしようと思う」




 この日から15年の時が立ち、このとき不採用にされたフィリスという少女は、王宮の外で戦士として名を上げ、『剣聖』と呼ばれるほどの人物となった。


 彼女が治める領地についての報告書を、満足そうにモルヴェントが眺めていたところ、彼宛に王宮からの呼び出しがかかった。


 用件はおおよそ予想がつく。


 モルヴェントは作業机の引き出しに忍ばせていた辞表を手に取り、謁見の間へと向かうのだった。


読んでくださりありがとうございます!


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話が面白くなるように頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

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