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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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先々の悩み、今の悩み

 その日の営業が終わり閉店した店で父と母とで、ちょっとした面談が行われる。

「さて、優斗も学校始まったけどテストもすぐなんでしょ?勉強時間大丈夫なの?」

「うん、まあまだ今の内はね」

「そう……でも優先順位は学業一番だからね?バイト調整はすぐに言いなさいよ、家族経営の強みはどんどん使いなさい」

 母は力強く相談はしろ、勉強をしろと圧をかけてくる。

 ありがたい限りで……

 父も口を開いた。

「ドリアの名前は息抜きに考えれば良い、優斗が納得するように結果を求めるんだ。私達は最大限サポートするから」

「うん……まだイメージがわからないけど」

「まあ学生なんてそんなもんさ、働き出してからの方が長いのにたった三年無い中で詰め込まれる。そしてそれが指針になるからね」

「父さんは学生の時に決めてたの?」

「……実は何もイメージが無かったよ、進路を決めると言う事は後になって大事だと気付くから言えるんだけど、当事者が一番イメージ湧かないだろう」

「そうね〜それは分かるわ〜どうしても自分のやりたい事ってなんなのか具体的に持つ人の方が少ないわね、勿論持ってる人もいるけどね。」

 両親が揃って言うからには難しく、でも逃げられない話なんだろう。

 夢を持つや、将来をイメージとは簡単に口に出来るが中身が難しいのだ。

「でも出来る事はあるからね」

「出来る事?」

「学力を上げておく事、あれは数字で出るから目安になるよ」

「……まあ、頑張る」

 何はともあれ勉強は頑張れよと言う事だろう、耳が痛い話だが事実だと理解はしている。

「さ、帰ろうか。茜がお留守番で待ちくたびれてるかも」

「そうね、優斗少ししたら懇談あるでしょうしプリント出してよ?」

 テスト終わったら懇談、進路の話も絡むだろう。

 未だ将来が掴めない自分に話が出来るのか不安しか無かった。


 ——夏休み明け本格的二学期、通常授業開始

 中々にキツイ。

 クラスの皆も堪えてるようだ、月が変わればテストもあるしその先に進路面談もある。

 高一の夏休みよ永遠に、そんな言葉が身に沁みて分かる。

 今現在の自分に関わる事を整理する。

 次の日曜日は鹿島さんのアントガールズライブ。

 それまでにつむぎ亭新メニューの名付け。

 そこからテストに向けての勉強。

 更に進路面談に向けた将来の道探し。

 そして都度入るバイトと日々の学校。

 まあまあ重たいなと遠い目をしてしまい、窓を眺める。

「……柊!」

 突然の声に我に帰る。

「おいおい、夏休みが抜けないか〜?ほら次読んで」

 先生に注意され恥ずかしい……

 自身の先が思いやられる。


 なんとか午前を乗り切り昼休み、食堂に福羽と向かう。

 席を取り頼んだ物を見つめる。

「……柊?大丈夫か?ボーっとしてよ」

「ん、ああ悪い大丈夫……なあ福羽、うどんってなんでうどんって言うんだ?」

「……は?お前本当に大丈夫かよ……」

「違う違う、実は——」

 頭がおかしくなったと思っていそうな福羽に、店のメニューの名前付けを考えてる事を相談した。

「ほー、なるほど。でもドリアなんだろ?」

「まあそうなんだけど、いざ決めろと言われたら、な?」

「わからんでもないが……そもそもつむぎ亭のメニュー名はストレートじゃん」

 福羽は夏休み臨時バイトで知っている、確かにウチのメニューは「つむぎ亭ビーフシチュー」や「さくさくエビフライ」と言った固有名詞にちょろっと足すぐらいだ。

「茜さんに相談してみたら?店の事考えてるし乗ってくれそうだけど」

「姉ちゃんなぁ……過去に暴走して却下されてるんだよ」

「え?そうなの?」

 つむぎ亭新メニューは期間限定や季節限定物もある。

 過去その中で姉も名付けを任されたが、どこの国の言葉かわからない単語同士を組み合わせて造語にするものだから、採用された事がないのだ。

「姉ちゃんが将来子供に名付けする事になったらゾッとする」

「なんかわからんが茜さん、そんなに酷いのか……」

 答えは出ないまま、うどんは何故うどんなのかと思いながらうどんを啜った。


 午後の授業もやり切り、クラスは死屍累々だ。

 これが今火曜で金曜まで続くと思うと気が滅入る。

「柊君、大丈夫?ボーってしてるね〜」

 鹿島さんが声を掛けてきた。

「いやぁ、鹿島さんは変わらないね凄いや」

「いやいや、私もやっぱり堪えてるよ〜夏休み明けだもん」

 そうは言っても元気さは変わらないように見える、心配される自分との差がはっきりわかる。

「始まったばかりだから頑張ろうね!そうそう日曜日のライブだけど」

 鹿島さんはライブの事を伝えようと耳元に顔を近づけてきた。

「これライブフライヤーね、福羽君にも言うけどワンドリンク制だから入ったらチケット貰ってドリンクカウンターに行ってね」

 そう告げると顔を離した、今のはなんだったんだろう?なんだか甘い香りがした。

「う、うんありがとう」

 妙なドキドキ感を感じながら去っていく鹿島さんを見る。

「どうしたんだろ、ライブの事隠す感じだよな……」

 意図的な行動に思える、今度聞いてみようとフライヤーを鞄に入れ帰宅準備に入った。

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