あと二日!
副リーダーの鹿島詩華さんは、普段ポワポワしているが切り替えたら凄いのだ。
リーダー福羽のやらかしをさっとフォローするし、その頭の良さで最適解を導き出す。
だが彼女は目立つ事なく、あくまでその瞬間だけ切り替えて事が過ぎればいつものポワポワ状態に戻っている。
学年二位の秀才、かつライブハウスを拠点にガールズバンドの所属、だがあまりその姿は知らせて無いみたいで不思議ではある。
(ファンを増やすとかを考えて無さそうなんだよな)
「柊君どうしたの?鹿島ちゃん見つめて?」
雛鷹さんが詰め寄る、彼女が思うような甘酸っぱい何かとかでは無い。
「いや、鹿島さん凄いサポートしてるのに目立つ事が無いのが凄いなって、リーダーの福羽は何やっても目立つのに」
「あー鹿島ちゃん上手く隠すよね〜こないだのテスト学年二位とかは別だけど私生活が謎の女……」
「なんか言い方が怪しいけど……あまり知られてない事だらけだよね」
自分は鹿島さん本人から直接聞いたりする機会があったから知っているだけで、それも偶然に近い事から繋がった。
「私も鹿島ちゃんとは全然喋るけど、殆ど謎なのよ?唯一知ってるのがピアノかキーボードをやってるってぐらいで」
その先のアントガールズと言う幼馴染で結成されたバンドやスパイスボックスと言うライブハウスを拠点にライブをしている情報までは知らないようだ。
本人が伝えてない事を敢えて漏らす必要も無いだろう、鹿島さんへの不思議さは残るが意図してやっているのが感じる。
(恥ずかしい……いや、恥ずかしがるような性格でも無さそうだけどなぁ……)
文化祭まであと二日、追い込みが掛かるクラスの中で燻銀に輝く鹿島さんを眺めながらお化け屋敷迷路背景の絵を塗っていった。
「よーし!今日はここまでにしようぜ!」
リーダー福羽の区切りの号令が響く。
外を見れば完全に陽は落ち真っ暗だ、時計は十九時を周っている。
バイトや家の用事でなかなか参加出来ないクラスメイトも居るが、全員が手を取り合って繋いで来ている。
自分もバイトで抜けたりしたが文化祭本番二日前にしてなかなかの物が出来ている。
「よしよし!明日総仕上げだ!皆気を付けて帰れよ!」
「オオー!」
リーダー福羽もすっかり板についた、元々クラスの中心だったが今回の文化祭で更に固まっただろう。
「柊、文化祭は茜さん来るのか?」
「姉ちゃん?いや特に声掛けてないけど……」
「ちゃんと声掛けといてくれよ〜俺大トリの幽霊妖怪ミックスお化けやるんだから!」
そう言えばお化け屋敷なのにお化けは最後に一回しか出ない、それまでは可愛い着ぐるみや衣装のファンシー迷路なのだ。
「福羽お化け役?いつの間に……」
「あれ?割と最初の方に決めたぞ?」
記憶に無い、会計で精一杯だった。
そう考えると皆のまとめ役リーダーをやり、当日は大トリまでやる体力が凄い。
「やっぱさ、柊の店つむぎ亭イベントもだけど準備からするって楽しいな!」
イキイキと楽しさを表す福羽に思わず笑う。
(本当に楽しそうにするよなぁコイツは)
「何の話〜帰らないの二人とも〜?」
伸びのあるポワポワ感ある声、鹿島さんが動かないこちらを気にして来てくれた。
「いやぁ、イベントって楽しいなって!」
「福羽君元気だよね〜でも鍵返しに行かないと小狐先生怒るわよ?」
「あっやべ!皆出ろ出ろ鍵閉めるぞ!」
慌ただしく残る者を追い出していく、この抜けをカバー出来る副リーダー鹿島さんのコントロールが絶妙なのだ。
「ふふ、帰ろ柊君!」
「そうだね、暗いけど大丈夫?」
「うん、福羽君が送ってくれるんだ」
「へー……え?そうなの?」
「リーダーとして副リーダーを守る!だって」
絶妙なダサさはあるが福羽が一歩仕掛けているような感じだ、これは雛鷹さんが食い付きそうな案件だなと思っていると、その福羽が帰ってくる。
「いやぁちょっと怒られたが、さぁ帰ろうか!」
校門前でそれぞれ方向が違うから解散となる、そっと振り向けば福羽と鹿島さんは並んで歩いている。
福羽の家とは違う方に……
「ふふ、何か夏より仲良くなったんじゃない?」
自分は少し笑って家路を歩く。
文化祭まで実質一日、良いイベントにしたいなと夜空を見上げた。




