十六歳
営業を終え静かな店内厨房の明かりが締めの清掃を行う二人の人を浮かび上がらせている
一人はコックコートを纏う四十代の男性
一人はエプロン姿の幼さが滲む十代の少年
キュッキュッとステンレスの調理台を拭き上げ一息ついた少年に声が掛かる
「優斗終わったか」
優斗と呼ばれた少年は声のした方を向き笑顔を見せる
「終わったよ父さん」
「よしそれじゃ帰るか」
柊優斗十五歳、翌日誕生日を迎える少年は両親が経営する洋食屋つむぎ亭を手伝う事を小さな頃から楽しんでいた
「お前も明日十六歳になるのか、早いもんだな」
帰り道夜空を見ながら呟いた父の柊周助の顔は嬉しげにどこか寂しげに映る
日常になっていた帰り道に漏れ出た父の感情に戸惑いながら自身が十六歳と言う一つの区切りを迎えるんだと芽生えた気持ちに何か変わるんだろうかとも思っていると
「明日お前に伝える事がある」
父から確かな覚悟を感じる眼で告げられる
何かしてしまったんだろうか?だが返事を発する前に家に着いてしまった
玄関ドアを開けた音を聞き奥から優しげな女性が迎えてくれる
「おかえりなさいご飯出来てるわよ」
母である柊朋子の迎えに父と子で「ただいま」と返す
「ん?茜は?」
「お風呂先入ってるわ、もう出るんじゃないかしら」
「あっおかえりー」
脱衣所から出て来たホカホカの湯気と共に堂々と下着姿で仁王立ちした女性に周助と優斗は揃ってため息をつく
「姉ちゃん服着て出て来てよ……」
「……茜、もういい歳頃なんだから」
男性陣のため息など意に返さず満面の笑みで仁王立ちを崩さない柊家の長女柊茜は顔立ちやスタイルは良いモノの自由すぎる性格の持ち主だ
「ほらほら茜早く着替えてきなさい、ご飯にするわよ」
「ふぇーい」
姉に振り回されながら食卓を囲み、何気ない会話から一日を振り返っていく
高校生となり明日十六歳を迎える
店からの帰り道に父が言った「明日お前に伝える事がある」何があるのか気にはなりながら口に出さず明日の用意を済ませベッドに転がりこんだ時コンコンとドアノックと共に「優斗起きてる?」
姉の呼びかけがする、起きてるよとドア越しに伝えれば静かに入ってきた
「優斗明日十六歳だねおめでとう」にこやかに祝いの言葉をくれた事に照れはでるが素直に「ありがとう」と答える
「……お父さん何か言ってた?」
「なんか明日伝える事あるって言ってたよ」
「そっか……そうだよね明日聞かないとね、お祝いもするからね!楽しみにしときなよ!おやすみ」
そう告げると姉は足早に去っていった、ドアは閉めて欲しいのだが……
あの口ぶりからして明日何を話されるか知っているのだろう、しかしわざわざ部屋まで来るくらいの事なんだろうか?
僅かな不安を感じながら明日にはわかる、そう切り替え目を閉じて意識を手放していった




