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私のこの手が真っ赤に燃える

 推定原作主人公であろうアイビーさんの、勝利の祝いの席を私開くことにしましたの。


 えぇ、勝利記念の日から数日が経過して本日はその祝いの席。


 ……なんだかモノすっごい時間が経過している気がしますが、えぇきっと気のせいでしょう。数カ月、より正確には五カ月位は経過している気がしますが、気のせいのはずです。


「リーリエ様、アイビーさんの祝勝パーティのお料理ですが―」

「えぇ、ちょっとは女性らしいことを、と考えて私作ろうと思います」


 えぇ、ちょっとした友人たちを集めてのパーティ、その位ならばある程度の料理は作れ―。


「リーリエ様っ!? まさかお料理をなさるのですか?」

「えぇ、まぁ淑女のたしなみというものです、簡単なモノにはなりますが私が一人で作ります。ですので、カリンさんは手伝わなくてもよろしいですわ。もちろんメイドたちにも手伝わせませんわよ!」


 えぇ、ちょっと位格好をつけてもいいではありません? ですので私、全力でお料理しますの。


「かしこまりました! では、総勢50名の招待客の分すべて作る邪魔になってはいけませんし、私も離れておきますね!」


 今なんだかとんでもないことが聞こえた気がします。


「あの、カリンさん? カリン? 今何て言いました?」

「邪魔になってはいけないから、私も離れておきますと」

「違う、そこじゃない。もうちょっと前」


 えぇ、そこではありません。そこはただの優しさですわ。


「かしこまりました!」

「戻りすぎですわよ!?」


 なんでしょう、ここまで古典的なギャグで返されるとわざとやっているのではないかと、それはもうまじめに考えざるをえません。


 彼女がそういうことをするタイプではないというのが、より頭を抱えさせてきます。


「50名、50と言いませんでしたか?」

「はい、言いましたよ?」


 おかしい、私の予定では私に、カリン、後は王子2人と主賓であるアイビーさんだけのはず。


 気が付かないうちに10倍になっている。1匹見たら100匹いると思えではありませんが、さすがにおかしい倍率ではないでしょうか?


「……ど、どうしてそんなことになっているのです?」


 分からない、分からないからカリンに問うて。


「貴族の中でも最上位の家系のリーリエ様、そもそも王族である王子が2名、そしてとどめに長い歴史でもほとんどいない、平民でありながら、学園に入学しているアイビー様、格とかいろいろな事情とかで増えるのは当然です」


 なんてこった、悪役令嬢などと自負していましたが、こんな展開など想定はしていません。


 貴族という自負はしていましたが、立場があるというのは常に考慮しているべきでしたわね。


 ……というか、食材の方が足り―。


「ちゃんと食材は用意してますので頑張ってくださいね、それでは!」


 ……足りるなら、まあやれないことはない……ですわね。


 思い出すのは前世の記憶。


 解決策はその中にある、私の直感がそう語り―。


「あの方法ならいけますわ」


 その答えを見つけたのです。




 会場はある事情で屋外にしました、屋内ではやりたいことができないので。


 そして時間の少し前には、既に多くの人々が我が家の庭園集まっていた。


 ざっと見る限り50という予定していた人数よりも、きっと多いのでしょう。


「見栄張りやがってる方が大量にいますわね、わざわざ彼氏彼女連れてきて……、こういうやり方は私初めてなんですけれど」


 時間になった、であるのならば―。


「レディース&ジェントルメン! 我がリヴァーレ家の庭園へようこそいらっしゃいました」


 ちょっとした技術の応用で、庭園の中に私の声が鳴り響きます。


「私、此度のパーティーを主催いたしました―」


 どうやら来場していただいた皆様が、こちらを見てざわめく声が聞こえてきました。


 それはそうでしょう、なにせ―。


「リーリエ・リヴァーレ、本日は高いところから失礼させていただきますわね」


 聖機士に乗っているのですから、ホーアオブバビロンとい、正直機体名を変えたい我が愛機。そのコックピットから声を届けているのです。


「さて、食事も用意していなくてすみません。ですが本日、私が皆様のために料理を自らの手でふるまいたいと考えておりますの」


 私のこの言葉に、友人たちはもちろん他の来客の皆さまもまた、驚きを隠されない様子。それはそうでしょう、だって皆さん予想ができているのでしょうから。


 わざわざ私が聖機士に乗っているということの意味を。


「ですが、小さな私の掌では皆様全員分の料理を作ることなどできません」


 小さな手では無理なのならば、大きな手を使えばいい。


「ですので、我が愛機を駆使して料理を作らせていただきますわ!!」


 それなりに在る聖機士の歴史の中で、恐らく初めての、料理を作る聖機士という光景が今この瞬間誕生するのです。


「さぁ、私のこの手が真っ赤に燃えるの、おいしい料理を作れと轟き叫ぶのよ!!」


 鋼の勇者ホーアオブバビロンが、戦場ではなく台所に立つ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お帰りなさい! 久しぶりですね 戦闘後の会話がないことに少しがっかりしています。 しかし、新しいタイプのロボットのばかげたことはそれを補った。 頑張って, リーリエ様! 食べ物や家族の庭を…
[一言] 鋼鉄の料理人……まさしくアイアンシェフ……! 巨大料理、まるで山形芋煮会会場かKMFピザ作りの再来ですねえ。
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