呆れるほどに有効な戦術ですわ
まぁ、色々あったりしましたが、この世界の話でもないですし……。
とりあえず、なんやかんやあって、アイビーさんの例の日。
「決戦の日だったな」
はい、アレックス様、説明ありがとうございます。
アイビーさんとしょっぱい貴族令嬢との決戦の日、アイビーさんが負ければ学園から出ていくことになった――。
「まぁ、余裕ですわね」
私は知っているのです、彼女が努力をしていたことを。
えぇ、私相手に百発一中位にはなりましたもの、それだけできれば十分ですわ。
「ほう、言うじゃないか」
「そもそもの聖機士学園一年生のレベルが低かったですから」
いや、まぁアイビーさんの相手して、授業の内容から理解したのです。
「まぁ、乗ったことある奴ほとんどいないからな、入学前に」
「あー、でしたか」
私は乗りたくて乗りたくて仕方がなかったので、そりゃもう時間が許す限りは訓練に費やしましたし? 前世もゲームという形ではありましたが、そりゃあもう、成績が心配になる程度には訓練をしていましたから。
まぁ、アレですわ。
「私がいま強いのは予習復習が完全に終わってるだけですわね」
「それが卒業生レベルにはなってるのが問題なんだがな」
あら、勉強が粗方終わっていることの何が問題なのでしょう。
っと、決闘が始まりましたわね。
結論から言えばアイビーさんが終始圧倒。
はっきりと言って劣勢になる要素がかけらもありませんわね。
「射撃武装は……まぁ、金かけていいのを使ってるが、それだけだからな」
聖機士は各パーツの組み合わせによって無限の性能を持つのです。
が、あちらさんの機体……バランスがクッソ悪いのです。
「足は機動力特化のアキレス社のもの、かと思えば胴体は堅牢さに長けた……代わりにすこぶる重いガイア工房のもの、これでは――」
「足がもろく遅い機体になってしまいますわね」
こうなってしまえば、造作もなく足をへし折ることができてしまいます。
聖機士、というかまぁ足があるものすべての弱点として、足が折られれば真面に動けなくなるというものがあります。
えぇ、人間だって動物だって、足が全部へし折られれば何もできなくなるといっても過言ではありませんわね。
「重装甲ならば全身を、機動力を求めるのならば全身軽くってのは当たり前の話なんだがな」
「とは言えそれ、二年生で習うことでしょう?」
「一年生でカスタムをする奴はいないからな」
と、アレックス王子と適当にお話をしていれば――。
「二人の言っていることはよく分からないんだが……まぁ、そう言うことなんだろうな」
ウィリアム王子がきょとんとした顔をしていらっしゃいます。
「まぁ、王子は指揮官として前線ではなく後方から騎士たちを支えるのが仕事ですし」
「弟の俺は全線で戦う英雄、そっちはその英雄の力を最大迄発揮させる英雄として、力を合わせるのさ」
うーん、いい顔してますわね、アレックス王子。
私のタイプではありませんが。
えぇ、私のタイプは仮面をかぶってもっと渋い声の感じと言いますか……まぁ、いいでしょう。
「そろそろ、決着つきますわね」
私の言葉と共に、アイビーさんのメサイア、右腕を突き出せばそこからワイヤーが飛び出ていきます。
ワイヤーが相手の聖機士に絡みついたら――。
「このまま高速で円運動!!」
リーリエさんから教わった、決め手!!
相手を中央で固定し、円を描くように回り込み続けながら、射撃を行う!
「なっ、これは――」
そのまま動けない相手の下へ近づけば――。
「バインドフィニッシュ!!」
ワイヤーを引き、相手をこちらに引き寄せながら、叩き斬る!!
「呆れるほどに有効な戦術ですわね、惚れ惚れしますわ」
「あれ、奇人ローマンの得意技だったか」
「お父様のものから、かなり改善というか一般人でも使えるようにしたものですわ」
だってあの人ドリルとパイルバンカーだけで戦っていた変態ですわよ?
本来のアレ、ただひたすらに回転運動で翻弄しながら接近、ドリルとパイルバンカーを叩きこむってだけですもの。
それをするには、相手からの攻撃を的確に避けるための、急停止と急発進のタイミング、加速の調整など、正直馬鹿みたいに面倒なのです。
それを補うための、拘束のためのワイヤーという訳ですわね。
「とは言え、劣化なんだろ?」
「一般人レベルならむしろ使いやすい上位互換なのですけれど――」
お父様曰く、ワイヤーを使うと逆方向への移動が難しくなるから、腕を使わない射撃で狙い撃たれる可能性があるだとか。
……それができれば誰も苦労はしないのですけれどね。
「しかし見事な勝利だ」
ウィリアム王子のお褒めの言葉、あの子も聞いたら嬉しいでしょうね。
まぁ、国のトップになる予定の方からの直々のお褒めの言葉なんて誰だってそうでしょうけど。
「しっかし……面白い女だ」
乙女ゲーム感マシマシですわね、詳しくないんですけれど!!
えぇ、私は詳しくないんですけれど!!
「まぁ、とりあえず……カリンにはサポートスタッフさせていましたし、アイビーさんにねぎらいでも行きましょうか」
教え子が成果を上げたというのは、自分の勝利よりも嬉しいモノですわね。




