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襲撃――1

 カード紹介の前に一つ。今回は長くなりすぎたので二分割か三分割します。


 前書きカード紹介第三弾。今回も再び篠崎隼人対西村弥生戦で使われたカードの紹介です。


 マーメイド・マリンテルス


 水属性水族、HP230の魔法転移モンスターです。

 魔法転移召喚の条件はマリンラブカよりも軽い3ターン目で水属性のHP70以上のモンスター1体です。


 魔法転移召喚に成功した場合の効果は、デッキからHP150以下のマーメイドモンスターを墓地へ送る、所謂墓地肥やしですね。

 手元が実質、というか、事実上第二の手札なので、墓地は第三の手札でしょうか。


 起動効果は墓地の水族、魚族のモンスターをコストに相手モンスター1体に90ダメージを与えるというもの。

 90あればある程度狩れるのでそこそこ有用かもしれない。ただ、墓地コストなので、蘇生、サルベージ主体だとネックになるかもしれない。


 墓地起動効果は、このカードをコストにしたマーメイド魔法、配置カードのサーチです。魔法サーチって強いんだけど、モンスターが魔法の役割果たしてそうだよね。手札誘発とか。

 月が白く輝き、星がきらきら光る空の下を伊香保卯月は夜空色の外套を羽織ってフードを目深にかぶり男と相対する。

 男の名前は疋田昌司、大学生だ。


「待ってましたよ、疋田昌司」

「なんだ、お前」


 大柄な昌司と比べると少し小柄な卯月は一層小さく見える。並べば親子のように見えるだろう。


「なんだっていいじゃない。バトルフィールド展開」

「お前まさか――」


 昌司の言葉は七色の光に包まれて消える。




「お前……、なるほどなあ。捻り潰してやる」

「面白い事言うね。わざわざ潰されに来るわけないじゃない」

「俺が、お前らみたいなやつを何人潰してきたか、知らないわけじゃないよな?」


 卯月が鼻で笑いフードをゆっくり脱ぐと、焦げ茶色の髪、サイドテールが小さく揺れる。


「先攻は貰うよ、スタートフェイズ」


 ――1ターン目、先攻、伊香保卯月


 フィールドに現れたのはとんがり帽子をかぶり水色のローブを羽織った少女、《ジュエルウィッチ・マリン》と日焼けしている逞しい体に緑と白のユニフォーム、黒いハーフパンツをはいた《爆走ランナー・ミラクルサード》だ。


「手元から魔法カード、《鉱石魔術・アクアシフト》発動。手札のカード1枚を封印して、ジュエルウィッチモンスターの魔法転移召喚回数を1回増やす。さらに、フィールド上にマリンが存在することで、カード1枚ドローし、手元から《ジュエルウィッチ・アンバー》を召喚」


 現れたのは橙色のとんがり帽子とローブという服装に黄色の長い三つ編みが印象的な丸めがねをかけた少女だ。


「《ジュエルウィッチ・マリン》を転移元に、魔法転移召喚。1ターン目、HP70以上のジュエルウィッチモンスター1体、おいで、《ジュエルウィッチ・ほたる》」


 《ジュエルウィッチ・マリン》が光に包まれて消滅し、同じ場所に現れたのは、分厚い本を大事そうに抱えた長い深緑色の髪を持つ少女、《ジュエルウィッチ・ほたる》。


「《ジュエルウィッチ・ほたる》効果発動、手札を1枚捨てカードを1枚ドローする。さらに、マリンの効果発動、手札から《ジュエルウィッチ・フィア》を召喚」


 身の丈ほどもある蒼く長い杖を持った少女、《ジュエルウィッチ・フィア》はただ虚空を見据える。


「手札から《鉱石魔術・タイダルウェーブコランダム》発動、手札1枚を封印してカードを2枚ドローする。さらにフィアがいることによって、デッキからカードを1枚ドローし、手札を1枚捨てる」


 《ジュエルウィッチ・フィア》は静かに瞳を閉じると、その長い杖を掲げる。

 すると彼女の周りを水が渦を巻いて空へ上り、弾けた。


「墓地に存在するアクアシフトと《ジュエルウィッチ・ルビィ》を封印し、2ターン経過させる」


 ジュエルウィッチ・ルビィは《鉱石魔術・タイダルウェーブコランダム》で墓地へ送ったカードだ。


 ――3ターン目、伊香保卯月


「《ジュエルウィッチ・ルビィ》効果発動、ルビィが封印されたことでデッキから《ジュエルウィッチ・シスト》を召喚」


 紫色の光を放つ万年筆に似た杖にモノクル、発達した胸部から、他のジュエルウィッチとは違い、少女というよりは女性、という雰囲気だ。


「《ジュエルウィッチ・フィア》の効果発動、ライフを200払い、墓地のマリンを手元に加える」


 ――伊香保卯月

 ライフ1800


「魔法転移召喚。フィアを転移元に3ターン目以降、HP120以上のジュエルウィッチモンスター1体。来て、《ジュエルウィッチ・アレキサンド》」


 眩い光が蒼い《ジュエルウィッチ・フィア》を消し去り、七色の淡い光を放つ珠を周囲に浮かべ、強気に笑う《ジュエルウィッチ・アレキサンド》をのこす。


「アレキサンド効果発動。デッキから《鉱石魔術・スターボウレイン》を手札に加える。そしてカードを3枚セットしてターン終了。さあどうぞ、あなたのターンよ疋田昌司」


 《ジュエルウィッチ・ほたる》達4体の後ろにMCGカードの裏面が3枚現れて消えていく。

 セットしたカードはそのターンは発動できないが、相手のターンでも発動が可能となる。


「まだだっ、お前のターン終了時、《爆走ランナー・ミラクルサード》効果発動。フィールドのこのカードと手元の1枚を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする」


 ミラクルサードが力を籠めるような動きをすると、茶色のオーラが彼を包み消えていく。


 ――3ターン目、伊香保卯月

 ライフ1800

 手札3枚、手元6枚

 墓地3枚、封印4枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・ほたる》1体、《ジュエルウィッチ・アンバー》1体、《ジュエルウィッチ・アレキサンド》1体、《ジュエルウィッチ・シスト》1体、セットカード3枚


 ――疋田昌司

 ライフ2000

 手札6枚、手元9枚

 墓地2枚、封印0枚

 フィールド、なし


「いくぞ、俺のターン。手札から《爆走ランナー・エキセントリックファースト》を召喚し、ドロー。墓地の《爆走ランナー・ミラクルサード》効果発動。ミラクルサードを封印し、ドローする。手札から《爆走ランナーズインストラクター》を召喚」


 赤いユニフォームに黒いハーフパンツをはいた体格のいい男性、《爆走ランナー・エキセントリックファースト》と、紺色のジャージに身を包み、鬼のような形相で白いタオルを肩にかける色黒の熱血漢、《爆走ランナーズインストラクター》が現れる。


「エキセントリックファースト効果発動。このカードと手元のカード1枚を墓地へ送り、デッキから《爆走ランナー・ファンタスティックアンカー》を召喚」


 《爆走ランナー・エキセントリックファースト》がバトンを後ろへ投げつけて消えると、突如として現れたきらびやかな極彩色のユニフォームに真っ黒なサングラスをした《爆走ランナー・ファンタスティックアンカー》がそれをキャッチし、インストラクターの隣に並ぶ。


「この時、捨てられた《爆走ランナー・ラッシュ》の効果でデッキから《爆走ランナー・スピードスターター》を手札に加える。続いてファンタスティックアンカー効果発動、ファンタスティックアンカーを手札に戻し、デッキから《爆走ランナー・マキシマム》召喚」


 まるで忍術のようにバトンを残してファンタスティックアンカーは姿を消し、バトンは重力に従って落下し、地面と衝突するギリギリのところで拾われる。

 それを拾ったのは二メートルをゆうに超える巨漢、《爆走ランナー・マキシマム》。


「手札からスピードスターター、ファンタスティックアンカー効果発動、スピードスターターは自分フィールドに爆走ランナーが存在する場合、手札から召喚でき、ファンタスティックアンカーは手札1枚を墓地へ送ることで召喚可能」


 黄色いユニフォームを身に纏い、クラウチングスタートと体勢をした《爆走ランナー・スピードスターター》と再び現れた手品師のようにきらびやかな《爆走ランナー・ファンタスティックアンカー》。


「そして《爆走ランナーズインストラクター》効果発動。ファンタスティックアンカーを手札に戻し、墓地から《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》を召喚」


 《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》は青いユニフォームに黒いハーフパンツと、ファースト、サードと似通った衣装だ。


「手元から魔法カード《爆走ランナーズハイ》発動。手元の戦士族モンスター1体を墓地へ送り、デッキから2体目の《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》を召喚」


 2体のオーバーテイクセカンドお互いを視認すると、頷きあう。


「バトルフェイズ、スピードスターター、《爆走ランナー・マキシマム》で《ジュエルウィッチ・アレキサンド》を攻撃っ」


 勢いよく飛び出した男が少女たちの倍はあろうかという巨漢を引き連れて迫ってくる。


「この瞬間魔法カード、《鉱石魔術・スターボウレイン》発動。手元のカード1枚を封印して《爆走ランナー・マキシマム》を手札に戻し、アレキサンドがフィールドに存在することによってカードを1枚ドロー。そして、墓地の《爆走ランナー・エキセントリックファースト》を封印する」


 《ジュエルウィッチ・アレキサンド》の周りに浮かぶ珠が《爆走ランナー・マキシマム》の上を旋回しながら七色の光線を照射する。

 マキシマムはそのまま光の粒となって霧散し、光線はそのまま昌司の墓地を照らす。


「ちっ、なめたことしやがって……。次行くぞ」

「まだだよ。鉱石魔術魔法が発動したことでほたるの効果発動、墓地の《爆走ランナー・ラッシュ》封印する」


 昌司は鼻をひくひくさせて卯月を睨む。

 その顔は誰が見てもわかりやすく不機嫌だ。


「はあぁあ……。ふう……」


 深呼吸を終えると、卯月へ向けられる敵意は一層強くなる。


「インストラクターとオーバーテイクセカンド2体で《ジュエルウィッチ・ほたる》を攻撃っ、踏み潰せ」


 《ジュエルウィッチ・ほたる》は《爆走ランナーズインストラクター》の攻撃を手に持っている辞典のような本を使って受け流す。

 しかし、1体目の《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》に蹴り飛ばされて倒れたところを2体目のオーバーテイクセカンドに頭を思い切り踏み潰され、糸が切れたようにぴくりとも動かなくなって消滅する。


 オーバーテイクセカンドが自分の望み通り踏み潰してくれたこと、それを見た卯月が顔を逸らしていたことに気分を良くして昌司はにやりと笑う。


「俺はこれでターンエンド」


 ――4ターン目、後攻、疋田昌司

 ライフ2000

 手札7枚、手元6枚

 墓地1枚、封印5枚

 フィールド、《爆走ランナーズインストラクター》1体、《爆走ランナー・スピードスターター》1体、《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》2体


 ――伊香保卯月

 手札4枚、手元5枚

 墓地5枚、封印5枚

 フィールド《ジュエルウィッチ・アンバー》1体、《ジュエルウィッチ・アレキサンド》1体、《ジュエルウィッチ・シスト》1体、セットカード2枚


「私のターン、ドロー。墓地に存在するスターボウレイン効果発動。墓地のこのカードとほたるを封印してデッキから《鉱石魔術・スターリーラズリ》を手札に加える。手元から《ジュエルウィッチ・マリン》を召喚。そしてアレキサンドを転移元に魔法転移召喚。星の祈り、夜空の誓い、想いを紡いで一つとなれ。5ターン目以降、HP170以上の魔法使い族モンスター1体。ホロスコープを描いて現出せよ。《ジュエルウィッチ・ラピス》」


 アレキサンドを群青の光が包み込み、足元には黄金色に輝く線がいくつも現れ、繋がり、ホロスコープを描く。


 光の中から現れたのは艶のある金髪にこと座を模した髪飾りをして、夜空の羽衣に身を包んだ少女だ。

 端正な顔立ちは幼さを感じさせるも、儚くてそれでいて力強い。

 おもむろに開かれる双眸に光が差し込み、優しく微笑む。人を超えた神秘性はまさに天女そのもの。


「ラピスの効果によって、墓地からタイダルウェーブコランダムを手元に加え、タイダルウェーブコランダムを発動。手札のカード1枚を封印して2枚ドロー。この時、封印された《ジュエルウィッチ・フィア》の効果発動、封印されているほたるを手元に加える。そして、再びラピスの効果発動。デッキから《鉱石魔術・スターリーラズリ》を手札に加えて、スターリーラズリ発動。手札のカード1枚を封印して《爆走ランナーズインストラクター》を破壊」


 《ジュエルウィッチ・ラピス》が手を突き出すと、その後ろにおうし座が描かれ、その星の一つ一つから群青色の光線が放たれ、着弾と同時に爆発する。

 爆炎が晴れた時には既に《爆走ランナーズインストラクター》は消滅した後だった。


「ラピスが存在することにより、破壊したモンスターの効果はこのターン終了時まで無効になり、デッキからカードを1枚ドローする。さらに、墓地のスターリーラズリと《ジュエルウィッチ・ラル》を封印し、デッキから《鉱石魔術・エンドオブオナー》を手札に加える。カードを2枚セットしてバトルフェイズ。アンバーで《爆走ランナー・スピードスターター》を攻撃」


 アンバーが杖を振った瞬間、スピードスターターは何かを感じ取ったかのように地を蹴り駆け出す。

 直後、スピードスターターのいた場所に岩の杭が飛び出すが、駆け出した先からも杭が現れ、なすすべなく胴体を貫かれ消滅する。


「続いてシストとマリンで《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》を攻撃」


 万年筆で描かれた蛇がその身体を使ってオーバーテイクセカンドの首を絞めあげ、マリンのはなった水が体に穴をあけ、そのまま消滅する。


「ラピス、お願いね。ラピスで《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》を攻撃、スターリースカイ・ピュリフィケイションっ」


 ラピスは頷くと祈るように手を合わせる。


 その時、昌司は怪しく笑っていた。


 背後に現れたおとめ座、その星々から放たれた閃光はオーバーテイクセカンドのいたあたりを吹き飛ばし、一切の抵抗を許さない。


「私のターンはまだ終わらない。《ジュエルウィッチ・シスト》の効果、このカードを手札に戻し、手札から《ジュエルウィッチ・ルビィ》を召喚。ルビィ、疋田昌司を攻撃」


 シストは紫色の光となって消え、代わりに真っ赤なオートマチック拳銃に真っ赤なカウボーイハットをかぶった、どちらかというとガンマンな少女が現れた。


 ルビィは昌司に銃口を向け、引き金を引く。

 弾丸は途中で燃え盛る紅蓮の炎に変わり、昌司めがけて一直線に突き進む。


「この瞬間、手札のオーバーテイクセカンド効果発動っ。手札のこのカードとデッキ、墓地に存在する《爆走ランナー・マキシマム》1体を召喚する。《ジュエルウィッチ・ラピス》の攻撃で破壊されたのはオーバーテイクセカンドじゃねえ。《爆走ランナー・ミニファスト》の効果、相手ターンに1度、自分フィールド上の爆走ランナーモンスター1体を手札に戻し、このカードを召喚する。あの爆煙の中じゃ、何が破壊されたか分かんねえよな。さあ、どうするよ」


 昌司と火炎の間に屈強な男二人が並ぶ。


「攻撃対象変更、《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》へ」


 紅蓮の炎は青いユニフォームを焦がすが、オーバーテイクセカンドの闘士は失われない。


「ターン終了……」


 ――5ターン目、伊香保卯月

 手札5枚、手元5枚

 墓地3枚、封印10枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・アンバー》1体、《ジュエルウィッチ・ラピス》1体、《ジュエルウィッチ・マリン》1体、《ジュエルウィッチ・ルビィ》1体、セットカード4枚


 ――疋田昌司

 手札6枚、手元6枚

 墓地5枚、封印5枚

 フィールド、《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》1体、《爆走ランナー・マキシマム》1体


「俺のターン、ドロー。さて、そのメスガキ共もお前もぶっ潰してやる。墓地のミニファスト効果、このカードを封印してデッキからミニファスト1体を手札に加える。手札からフィールドカード《爆走ランナーズサーキット》発動」


 ただの荒れ地だったフィールドが、観客が声援を送る舗装された道路に変わる。


「手札の戦士族モンスターを墓地へ送り、ファンタスティックアンカー召喚。この瞬間、《爆走ランナーズサーキット》の効果発動。手札のカード1枚を墓地へ送り、ミラクルサードを手札に加える」


 手を振りながら観客の前へ現れたファンタスティックアンカー。彼を見た観客たちの反応は映画俳優のそれだ。


「良い声援だろう? 手札からミラクルサードを召喚」


 緑色のユニフォームに身を包むミラクルサードは観客たちに手を振るとファンタスティックアンカーと握手を交わす。


「《爆走ランナーズサーキット》効果発動、手札と手元のカード1枚を入れ替える。そしてミラクルサードの効果で入れ替えたラッシュとこのカードを墓地へ送り1枚ドローする。……、来た、来たぞ。手札から魔法カード、《魔術合成(ウィッチクラフト・アセンブル)》発動っ。手札の《爆走ランナー・ミニファスト》、手元の《爆走ランナーズインストラクター》とフィールドの《爆走ランナー・マキシマム》を合成素材とする。強者よ、その存在によって雑魚共を平伏させよっ。魔術合成召喚っ、現れよ、《爆走ランナー・エクシードマキシマム》っ」


 3体のモンスターが溶け合い、混じり合い、一つの光の玉に変わる。

 それは徐々に大きくなり、人の形を成す。

 表面を覆っていた光がはじけた時、そこに立っていたのは2メートルや3メートルどころの騒ぎではない巨人が立ち、ジュエルウィッチ達を見下ろしていた。


「エクシードマキシマム効果発動、魔術合成召喚に成功した場合、デッキから爆走ランナーモンスター1体を手札に加える。俺はエキセントリックファーストを手札に加える。もう一度ミニファストを封印し、デッキからミニファストを手札に加える。手元のエキセントリックファーストと手札のカード1枚を墓地へ送り、デッキからスピードスターター召喚。更にエキセントリックファースト効果、このカードを封印し、墓地から《爆走ランナー・マキシマム》を召喚」


 他の爆走ランナーモンスターと比べても倍近くあるマキシマムも召喚されるが、それでもエクシードマキシマムの存在から見れば子供のようなものだ。


「バトルフェイズ。行けっ、エクシードマキシマム、手始めにあのメスガキ、《ジュエルウィッチ・ラピス》を攻撃っ。ランナーズマキシマムチャージっ」


 鈍重そうな見た目とは裏腹に、ラピスめがけて勢いよく疾駆する。


「この瞬間魔法カード、《鉱石魔術・スターリーラズリ》発動、手札1枚を封印し《爆走ランナー・エクシードマキシマム》を破壊」


 先程のようにラピスが華奢な右腕を突き出すとおうし座が現れ、光線を放つ。

 光線は、エクシードマキシマムの巨体に命中し爆煙に変わる。


「スターリーラズリの効果で1枚ドローし、ラピスの効果によって封印されているスターリーラズリをデッキに戻す」


 煙が晴れそうだという時、中から伸びてきた巨大な左腕にラピスが捉えられてしまう。


「え、何? ――まさか、破壊耐性?」

「あっははははは、無駄だよそんな小細工。エクシードマキシマムは相手の魔法、フィールド、配置カードの効果を受けない。よって、《鉱石魔術・スターリーラズリ》の効果は受けないっ。エクシードマキシマム、そのまま握り潰せっ」


 ラピスは大きく目を見開き、呼吸をしようとぱくぱくする口から涎が伝う。

 身体が砕ける嫌な音共にラピスの身体から力が抜け、消滅する。

 防ぐためのカードもなく、卯月は黙ってその光景を見ていることしか出来ない。


「……はぁ、……はぁ、……はぁ」

「おぉいおい、どうしたぁ? まさか、この程度できてるんじゃないだろうな?」

「――ラピスの効果発動っ。デッキから《鉱石魔術・フローライトゴースト》を墓地へ送る。さらに魔法カード、《鉱石魔術・ボルカニックコランダム》発動、手元のカード1枚を封印し、相手ライフに150ダメージを与える。加えてルビィが存在することによって、更に50ダメージ与え、カードを1枚ドローする」


 ルビィの拳銃から放たれたのは弾ではなく、炎で出来た矢だった。

 その矢はエクシードマキシマムのすぐそばを通過して、昌司の前に展開されたバリアを射抜く。

 矢は命中と同時に燃え盛る炎となって昌司をバリアごと包み込んだ。


 ――疋田昌司

 ライフ1800


「かっ……、はあ、熱いじゃねえか。それにしても、無様だな。エクシードマキシマムを倒せないから俺を焼くことしか出来ない、そう言うことだな」

「墓地に存在するボルカニックコランダムとアレキサンドを封印、スピードスターターに80ダメージを与える」


 ルビィの弾はスピードスターターの胸に命中し、その身体を燃やして消滅させる。


「なるほど。だが、今までのお前を見る限り、魔法カードの効果を受けないエクシードマキシマムを突破することは出来ないだろう? 愛玩道具として隷属するなら、まあ、生かすことも考えてやるぞ。さて、続きだ。マキシマム、《ジュエルウィッチ・ルビィ》を攻撃、さっきの礼をしてやれ」


 ルビィは拳銃を乱射するが、豆鉄砲くらいにしか感じていないのか、怯むことなく接近して突き飛ばす。

 倒れたルビィに馬乗りになると何度も顔を殴打し、やがてルビィは消滅する。


「ファンタスティックアンカー、オーバーテイクセカンドで《ジュエルウィッチ・マリン》を攻撃」

「マリンが相手によって墓地へ送られたことによって効果発動、封印されているボルカニックコランダムを墓地に戻す。そして《鉱石魔術・フローライトゴースト》効果発動、墓地のフローライトゴーストとルビィを封印して、デッキから《鉱石魔術・エレメンタルハート》を手札に加え、ルビィが封印されたことでデッキから《ジュエルウィッチ・フィア》を召喚」


 フィアは海のような色の髪を耳にかけ、目の前に佇む巨人を睨むように見る。


「次から次へうじゃうじゃと……、ちっ、ターンエンド」

「それは疋田昌司、あなたも大概だよ」

「俺はいいんだよっ。そんなことよりターンエンドつったろうが」


 ――6ターン目、疋田昌司

 手札3枚、手元4枚

 墓地12枚、封印8枚

 フィールド、《爆走ランナー・オーバーテイクセカンド》1体、《爆走ランナー・エクシードマキシマム》1体、《爆走ランナー・ファンタスティックアンカー》1体、《爆走ランナー・マキシマム》1体、フィールドカード《爆走ランナーズサーキット》


 ――伊香保卯月

 手札7枚、手元4枚

 墓地5枚、封印15枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・アンバー》1体、《ジュエルウィッチ・フィア》1体、セットカード2枚


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