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ほう、次は、ナースさんか。いいねぇ。尻の弾け具合が堪らんよ。こらこら、客は、きみの棒台詞なんざ、望んじゃいないんだ。
早送り。早送り。おっと、行き過ぎた。
あぁん?セーラー服???明らかに二十歳は越えている女優が、“せぇんせっ、ほんとは、こんなことしたかったんでしょ”と、画面に迫ってくる。
まず、第一に、僕は、学生服が嫌いだ。第二に、僕には、良い大人があんな猿どもにうつつを抜かすことが理解できん。
僕は、山田玲聞。やっとクラス担任を任されたばかりの新任中学教員だ。ちなみに、担当教科は国語。彼女募集中。
教職員というものは、自分が考えていた以上に多忙だ。クラスを任されてしまうと、それは人知を越えたものになる。昼夜問わず、生徒の後始末に奔走する姿は、さながら24時間365日出動体制のセキュリティー警備員だ。
具体的に通常の業務内容は、授業、授業前準備を軸に、提出物のチェック、テストの作成、問題行動のある生徒フォローが主になる。
残業や雑用を終えて、やっとプライベートな時間が持てるのは、たいてい深夜1時を回った頃。それも、運がよければと、付け足しておく。
大学時代から借りているワンルームマンションは居心地がいい。なにより、他人を気遣う必要がない。存分に、アダルトビデオを鑑賞できる。キャスター付きチェアをギイギイいわせノートパソコンのモニターを除き混む。今のところ、これが唯一の息抜きだというのだから、我ながら、痛ましい限り。
突然、横広のデスクの隅で、スマートフォンのバイブレーションがけたたましく鳴り響いた。
スマホのディスプレイに印字された名前を一瞥して、随分と慌ててしまったものだ。DVDを止めようとして、ノーパソの主電源まで落としてしまう始末。
“おぉ、どうした。”僕は、冷たい汗を拭った。
『玲聞』
“こら、先生と呼べないのか”あくまで、毅然とした態度を忘れてはならん。
『黙って』
“すまん”前言は撤回する。社会は、相手ありきで、回っているのだ。上下関係は、役職のみで完結するものではない。
ちょうど、目線にあるデジタル時計が2:57に変わった。
“有栖川。もう、3時だぞ。今じゃなきゃ駄目なのか”
有栖川シャロンという少女は、僕の受け持つ生徒の一人だ。
どの業界にも、タブーとされる事項があるだろうと思う。こと教育現場にかけては、暗に、生徒と私的に関わることは最大の禁忌とされている。異性ともなれば、なおさらだ。世知辛い世の中だとは思うが、これがお互いを守る最大にして最善の策であることは、もはや、僕が言及せずともご理解いただけるだろう。
いやぁ、だもんで驚いたね。はじめて学年主任に彼女を一任された日には、その場から飛び降りてやろうかと思ったよ。
“この際、細かいことは無視してもらって構わない。きみの道徳心を信じている”
この日から、僕の基本業務に、報告書の提出義務が付け加えられた。よって、教師生徒間で個人情報(この場合、電話番号)のやり取りがあったことは、全職員が把握している。
『落ち着いて。今、後ろを振り向いちゃ駄目よ』
ノートパソコンの黒くなった画面が、鏡の役割を果たして、あぐらをかいている僕と、その背後に見知らぬおかっぱ頭の少女を写していた。




