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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第九章 王国へ
98/110

第98話「ハリスは伊達じゃない」

前回のあらすじ……。


担当:リナ・ベルナール

図書室へ行った。

アタシは「海賊王エリーザの軌跡」を呼んだ。


この小説はかの有名なジョセフ・トーラが書いたもので、世界的に大人気が出ている。

海賊の王という二つ名を持つアレックス・エリーザの息子、リック・エリーザが主人公の物語。


物語の冒頭でアレックスは死亡してしまい、大海賊を息子のリックが引き継ぐことになってしまう。

戸惑いながらも大海賊としての頭を張り、押し寄せる幾多の魔物や他の海賊の妨害を乗り越え、少しずつ海賊王としての成長を見せていく。


この小説の見どころは山ほどあるけど、まずは主人公リックの成長の様子。

小説である事を最大限に生かして、その様子が手に取るように分かる。


迫力ある戦闘シーンや、弱気を助け外道を挫く人情ドラマもあふれている名作だ。

ぜひ皆さんもどうぞ。


(この物語はフィクションです!!)




――疾風の翼船内・倉庫・視点:ハリス・ローレンス――



 俺――ハリス・ローレンス――は、2本の長刀を合体させ1つの薙刀を作り、構える。

 相手の方も、二刀流のダガーを構えたようで準備万端のようだ。

 始めるか……思った時、ちょうど数人の団員共が部屋に入ってざわついているのを目にした。


「おい……あのガキ、団長と一騎打ちするみたいだぜ?」

「はぁ? 何考えてんだ? あんなひょろちいの瞬殺だろ」


「お前知らないのか? あのガキ『フェニックス』を1人で打ち負かしたらしいぜ!?」

「おいおい……お前までそんな与太話を信じてるのか?」


「いや、俺実は、あいつ知ってるんだ……」

「なに? 知り合いか?」


「そう言うんじゃなくてだな。あのガキこの前船の外壁を突き破ってここに特攻してきたことがあるんだ」

「それってまさか……あのエイリアス襲撃事件の時の?」


「そうそう! 村でヘマして捉えた奴が脱走した時と同時に起こったやつな。あんとき、俺は脱走者を探してたんだが、突然あのガキ共があらわれてな……、他の奴らはともかく、あのツンツン頭の少年だけは強かったんだ。なんていうか……動きが読めない」

「そりゃお前の腕が鈍ったんじゃねぇの?」


「ばか! まあ良いからみてろ? 見ろあの団長を……」

「団長……笑ってる……のか?」


 その話を聞いて初めて自分が笑ってる事に気付いた。

 おっと、久々の強敵候補に思わず笑みがこぼれたようだ。


 しかしエイリアスといいこいつといい、なんだよ。

 最近世の中面白くなってきたじゃねぇか。


「何笑ってんだよ。馬鹿にしてんのか?」

 少年が言ってきた。


「いやいや? いいから、そっちから来いよ」

「先手は苦手なんだ。そっちからでいいって」

 先手が苦手?

 変った奴だな。

 まあいい。


「なら、遠慮無くこちらから行くぜ!!」

 俺はスイッチを入れた。


 先手が苦手……つまり一直線に突っ込んだ所で恐らくかわされるかカウンターだろう。

 面白い。

 試しに引っかかってやるか。


「そぉら!」

 俺は薙刀を水平に振る。


 ――やはり避けられた。


 少年は宙返りで俺を飛び越し俺の背後に付いた。

 ほお……やるじゃん。

 だが!


「喰らえッ!」

 着地と同時にダガーを振る少年。


「よ~み通り♪」

 それを読んでいたので、後ろを向きながら右にスッとずれてその攻撃をかわす。同時に薙刀で攻撃を払う。


「震痺撃ッ!」

「――なッ!? いてぇ!」

 俺は少年の右ダガーに衝撃を加える。


 ……今のでダガーを手放すと思ったんだがな。

 だがこの技は斬った衝撃で相手の腕を麻痺させる技だ。


 しばらく利き腕の右手は使えまい。

 これは案外早く勝負がつきそうだ。


「終わりだ! 烈風尖!」

 俺は瞬速の突きを少年に向けた!


「んなろッ!」

 ――かわされた!?


「うおぉ!?」

 足払いされた!

 こいつ、スライディングでかわすと同時に足払いをしかけやがった!


 俺は一瞬だがバランスを崩してしまう。

 加えて突きの衝撃で体が大きく前傾する。

 背後から少年の攻撃が!


「クロスエッジ!」

「転風壁ッ!」

 少年の剣技を、薙刀を回転させて防ぐ。


「――くッ!」

 凄まじい火花が散り、今度は少年がバランスを崩した。


「ストームエッジッ!」

 俺はすかさず技を決める。

 回転した薙刀に風を乗せそのままぶった斬る!


「ぐぉッ!」

 少年はその崩れた体制から回避が敵わず、左手のダガーで防御した。

 当然衝撃は生半可な物ではないのでそのまま横に吹っ飛ばされる。

 右ろにはコンテナの山。


 叩きつけられてお終いだ。


「これで――なッ!?」

 俺は目を疑った。

 少年はなんと、そのままコンテナを蹴りジャンプし、上下反転し俺に天井を蹴ると同時に、俺にダガーを投げて牽制する。


「くッ!」

 俺はダガーを弾いたが、少年は天井を蹴った勢いで俺の脳天に左ダガーの柄の部分を――


「んがっ!!?」

 俺の脳裏に火花が散り、俺の意識が飛びそうになるが持ちこたえる。


「いってぇ……」

 頭を片手で押えながら声を絞り出す。

 コイツ……あの高さから垂直に降下し、重力に加え天井を蹴った脚力と、振りかぶった腕力で思いっきり脳天を突きやがった……。


「うぉい! 気絶しろよ!!」

 少年はそれを狙っていたらしい。

 なんつーセンスだ……。


 サーカスかよ……。

 だが!


「ダガー1本で俺に勝てんのかぁ?」

 俺は突撃した。

 右手のダガーを拾われないように注意しながら戦わなければ。


 確かに右手は痺れさせたはずなんだが……。

 そうか、俺はダガーが落ちてきたから咄嗟に弾いたが、あれは『投げた』んじゃなく『落とした』だけだったのか……。


 右手は使い物にならなかった。

 だからああいう方法を取ったのか……。


 迂闊だったな。

 阿保かと思ったが案外頭も回るらしい。


 その上あのセンス、咄嗟の判断力、それについて行ける身体能力……。

 いいね、この上ない逸材だ。


 だが――

「経験と技術は、まだまだだな」

 そう、少年には場数が足りてない。


 そのせいで、まだ未発達の部分が見える。

 例えるならば金の卵やダイヤの原石といったところか。

 確かに凄い。


 だが、所詮は『卵』であり『原石』でしかないのだ。

 俺は回転させた薙刀を少年に振る。


「当たるか!」

 少年は避けた後俺の背後に素早く回り込み、左ダガーで突きをする。


「無駄だ」

 俺は後ろを向いたまま薙刀で攻撃を抑え、振り向く勢いでダガーを弾く。


「うおっ!?」

 またも火花が散る。

 少年はまたよろける。


「今度こそ――」

 俺は薙刀を振る。

 少年はガードする。

 その瞬間、俺は薙刀を2つに分離し、右手の剣で左手のダガーを弾いた。


「うわぁっ!?」

 少年のダガーは空中に弾かれ、少年の手を離れ遠くの木箱に刺さった。


「――終わりだ」

 同時に俺は左の剣を少年の首元に突きつけた。


「う……おお……はは、やっぱ負けちまったか~」

 そういう少年の顔は悔しそうというよりはむしろ清々しかった。



――視点:アーク・シュナイザー――



「おおおおお! すげぇ! お前すげぇよ!!」

 ハリスとの一騎打ちに勝ったと思ったらいつの間にか出来たギャラリーから歓声が沸き起こった。

 どゆこと!?


「あの団長に善戦するなんてよぉぉ! おい、こいつ『フェニックス』なんて目じゃねぇぞ!」

「斬られた反動を利用してコンテナを蹴って反転、ナイフを投げると同時に天井を蹴って急降下からの突き! 俺、サーカスでも見てんのかと思ったぜ!!」

「アークさん! いやアーク様! あの戦い方……流派は? 師匠は!?」


 なんだこいつらぁぁぁ!?

 一気に駆け寄ってくるんじゃねぇぇ!!


 今戦い終わった直後で汗だくなんだから!

 暑っ苦しいだろうがぁぁぁ!!


「いやいやいやいや! 待って、一旦落ち着こう! な? っていうか俺これでも負けてんだけど……しかも右ダガーの回収ミスって追い詰められて死んでるっていう無様な――」

「それでも団長のあの驚いた顔! 団長にあの顔させただけで殆ど勝ちみたいなもんだぜ!!」

「そ……そうかな? ハハ」

 もういい……。

 なんかコイツらの気迫に負けたよ……。


「アーク君、いやアーク様! あの戦い方……流派は? 師匠は!?」

「お前しつこいよ銀髪! あと普通にアークでいいって!」

 あれこいつ……どっかで見た気が……。


「気に入りませんでしたか? じゃあアーク大将、いやアーク殿、いや…………アーク伯爵!」

「伯爵ってなんだよ!! 悩んで決めた結果がそれかよ! やだよ!」 


「じゃあ――」

「っていうかお前、さっきの『フェニックス』の奴じゃん!」

 そう、俺を伯爵呼ばわりするヘンテコな奴は、実はさっきのスコードとか言うガラの悪い男の一人だった!!

 キャラ変わり過ぎじゃね!?


「あ、バレました? 俺、アーク伯爵の戦い方見て、惚れました! いやぁ、戦いは歳に関係ないんですね」

「頑なに伯爵かよっ! 呼び捨てで良いってば!」

 なんなんだよコイツ!

 なんでこんなに笑顔なんだよ! さっきのゴロツキ顔はどこに行った!?


 ……なんか俺、とんでもない奴に好かれたんじゃ……。

 そう呑気に思っていたら……――。



「――大変です団長ッ!!」

 突然、倉庫の扉を開けてガイスが駆け込んで、大声で叫んだ。

 辺りが急に静まる。


 その慌てようは普通じゃなかった。

 なんだ……何が起きたんだ……?


「どうした」

 真剣な表情で歩み寄りながらハリスが聞き返す。


「紅蓮の覇王の……大艦隊が押し寄せています! 総数およそ20隻!」

「なんだと!?」

 紅蓮の覇王……最大の規模を誇る盗賊団が……攻めてきた!?



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