第97話「反帝国内戦時代」
前回のあらすじ……。
担当:ジャミル:ハワード
むむむ………。
俺ァ図書室で空駆船の本を読んで操縦法を覚えようとしていた。
なンかあった時役に立つかも知れねェしな。
………。
うん、言おう。
全く分からん!!
なンだァこの腐れ教本はァ!!
全然理解できねェぞ!!
難しすぎすぎンだゴルァ!!
――――
「…………」
そんなことをやっていたら、リナは既に本を読んでいて自分の世界に入っていた。
なになに~。
『海賊王エリーザの軌跡』……へぇ、小説か。
リナはこういうのが好きなのかな。
俺もなんか読むかな~と思った。
その時、テーブルの上に乱雑に置かれた1冊の本にふと目が止まった。
『シャルル人の狂気~反帝国内戦時代の恐怖~』
「反帝国内戦時代か……確か、つい十数年前まで続いてたらしいじゃねェか」
ジャミルが俺の視線に気付いて声を掛けた。
「ああ……俺は親父から話にしか聞いてないけど、酷いもんだったらしいな……」
俺は本を開いた。
反帝国内戦時代――。
悲劇の始まりは、実に数百年も前と言われている。
NC1700年代。まだギル・ラシアトス帝国が出来て間もない頃、国内には数百の民族がいた。
その中でも魔核大戦以前から力を誇っていた古い民族がいた。
それがシャルル人。
シャルル人は揃って頭がよく、古代文明を次々と解明してき、魔核大戦の禁畏を次々と復活させていった。
だが、当時の皇帝はシャルル人ではなかった。
他の民族も、いずれ国がシャルル人に乗っ取られてしまうのではないか、との懸念を抱かせてしまう。
NC1944年。その懸念は恐怖に繋がり、やがて皇帝はシャルル人に攻撃を開始した。
『ハール内戦』の勃発である。
ハールとは、帝国が初めてシャルル人に攻撃を加えた地名だ。
だが、戦争を起こしたことが、既に過ちだった。
シャルル人は怒りを通り越し、その狂気に火を付け、今は存在しない『死毒霧』という魔法で帝都を覆い、1万人以上の罪のない市民を死に至らしめた。
後に『ラシアトス大虐殺』と呼ばれる。
以降、数十年に渡り、帝国とシャルル人の内乱は続いた。
これを、『反帝国内戦時代』という。
NC1975年、内戦時代末期。シャルル人はついに自分の国『アーセルム神国』を作り、二度目の『死毒霧』を行おうとした。
が、帝国騎士団と盗賊団『紅蓮の覇王』の初の共同作戦『迅雷作戦』によって、シャルル人ほぼ全滅に陥った。
その後、数年間にわたる帝国の掃討作戦により、シャルル人と、その血を受け継いだ者全ては歴史から姿を消した。
だが、シャルル人が全滅した今でも、帝国内の反シャルル思想は根強い物となっている――。
俺は本を閉じた。
「『迅雷作戦』か……、リードの親父も、確かその作戦に参加したって聞いたな……」
俺は昔聞いたことを思い出す。
「マジでかァ?まァ、あれは30年ぐれェ前の話だから、年齢的にはギリだなァ」
リードの親父が何歳だったかは覚えてないが、迅雷作戦に参加したのは間違いなかったはずだ。
「ただ、どういう訳か、当時の事を全く語ろうとしないんだよな……親父は」
「それほど辛ェ作戦だったって事なンじゃねェの?」
にしても、シャルル人の始まりってこんなに昔からあったんだな……。
俺も、シャルル人に直接的な恨みこそないが、昔から腐るほどシャルル人の悪行を聞かされてきたせいか、それだけで悪者だというイメージがあった。
何十年もその思想が受け継がれていくなんて……当時の帝国国民の恨みは相当強い物だったんだろうな……。
ん……待てよ?
俺はもう一度本を開き、さっきの一行を探した。
あった!
『シャルル人は揃って頭がよく、古代文明を次々と解明してき、魔核大戦の禁畏を次々と復活させていった』
魔核大戦の禁畏――これってまさか……ブラストレイズなんじゃないか!?
『その中でも魔核大戦以前から力を誇っていた民族がいた』
しかも、魔核大戦以前から力を持ってたって……。
じゃあまさか……7人の賢者って……シャルル人!?
ちょっと待てよ!!
そしたら俺の体には、シャルル人の血が流れてるってことなのか!?
いや待て……それは無い。
『その後、数年間にわたる帝国の掃討作戦により、シャルル人と、その血を受け継いだ者全ては歴史から姿を消した』
シャルル人の血を受け継いだ者は、全て殺されてるんだ。
なら、俺がシャルル人の血を受け継いでる訳がない……。
きっと、俺の杞憂だろう。
俺は、そう思う事にした……。
そんな事に集中していたから、俺はルネが、何かに耐える悔しそうな表情に全く気付かなかった――。
――――
「……読み終わった」
銃数分後、リナはパタンと本を閉じ、唐突にそう言った。
「早くね!? もう!?」
俺はその読む速さに驚愕。
だって、あんなに厚い本が一時間もたたずに……。
「普通」
いや、絶対普通じゃない!
それとも俺か?
俺が間違ってるのか!?
「ンで、面白かったのかァ?」
「ハラハラドキドキ」
そう言ってリナは親指をグッと突き出して、
「この感動を理解できないのは残念」
とジャミルに哀れみの視線を送った。
「う……うるせェ! 余計なお世話だっつーの!」
ジャミルは「読めなくたって悔しくないぞ!」的な態度を取った。
分かりやすいなコイツ……。
「んじゃ、ジャミルとも合流したし、もうちょっとこの船に何があるか見に行こうぜ」
俺は立ち上がって言った。
「だなァ」
「ん」
俺達は図書室から出ようとした。
「おいルネ、行くぞ」
「…………」
珍しくボーっとしているルネ。
どうしたんだ?
「ルネ?」
「ああ、うん、なんでもないよ~! 行こ!」
いつもどおりの笑顔で、ルネはそう告げた。
……まあ、気にするほどの事でもないか。
そう思い、俺達は図書室を後にした。
――――
「ここは……」
俺達がいたのは、だだっ広い倉庫のような空間。
ただし、荷物は一切なく、ホント、ただただ広い。
「倉庫みたいだね~。荷物なんにもないけど」
ルネが俺の心境と全く同じ事を言う。
しつこい。
なんでこんなところに来たかと言うと、『四日過ごすんだし色々探検しようよ~』というルネ案が採用され、適当に歩きまわっていたのだ。
「……オイ、誰かいンぞ」
ジャミルは誰かを発見し、すたすた歩いていく。
俺達も後に続く。
「……………………」
そこには、両刃の薙刀を無言目を閉じて構えるハリスの姿があった。
そしてその先には鉄のドラム缶。
俺達も声を掛けられず黙っていた。
なんでかって?
すっげぇ殺気を放ってたからだよ!
「…………――、一閃ッ!!」
突然、カッ! と目を見開き、そう叫ぶと、目にも止まらぬ速さで目の前のドラム缶を叩き斬った!
俺達の目が追い付く頃には、ドラム缶は真っ二つ、ハリスはドラム缶の後ろに立っていた。
「……ふう、ん? なんだお前ら、いたのか」
ここでようやく、俺たちの存在に気付くハリス。
「ハリス……今の技……」
俺達は絶句していた。
「ああ、『一閃』ってんだ。剣、槍、斧……刃があればなんでもいい。接近戦最高峰にして最高難易度の技さ」
ハリスは得意げに説明したあと、
「まあ、これでもまだ未完成なんだけどな」
と落胆して言った。
「これで未完成とか……本物はどンだけなンだよ……」
「さあな。これには個人差があるからね」
「俺……俺にも、できるのか?」
俺の武器は二刀流ダガーだ。
一応接近戦だけど……。
でも今の技は……すごい。
とにかく、すごいって思えた。
「さあね。少年の才能と努力と……後は運命次第かな。……つーか聞いたぜ。お前さん、ウチの団員四人を一人で片づけたらしいな……?」
驚きながらハリスは言った。
あ……、さっきのガラ悪い四人組の事か。
「あいつらはあれでもウチじゃ結構有名な方なんだぜ? 通称『フェニックス』と呼ばれる不死鳥の4人。そいつらをコテンパンにするって……バケモンかよ」
いやいやいやいや。
あんたにだけは言われたくないね。
それに……勝ったのはこの『ラプター』のおかげで俺の腕じゃないしな。
「そうだ……! せっかくだから、……やろうぜ?」
ハリスは腰にしまってあった剣を再び抜いた。
え……まじ?
「お前さんとは初めて会ったときから一度やってみたかったんだ……どうする? 乗るか?」
二ッとハリスは笑った。
……勝てる気しねぇ……。
でも、もしかしたら一閃の何かが掴めるかもしれない……!
「いいぜ……やってやる!」
俺は、誘いに乗った。




