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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第九章 王国へ
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第95話「弱い奴ほどよく吠える」

――甲板――



「うおおおおお!すっげぇぇ!」

 甲板に出ると、吹き付ける爽快な海風が体を包み、青い空と大海原が視界に飛び込んだ。


 いつの間にか船は離陸していて、大空を物凄いスピードで駆け抜けていたのだ。


「ここには……いない」

 リナはあたりを見渡して目標の有無を確認した。


「リ~ナ~! 見てよ!! すっごい綺麗!!」

 ルネも興奮気味になって海を指さして言った。


「そね。きれい」

 と言い海を見ているが、その仏頂面は何とかならないのか……。


「こんな景色見てるとさ~、思わず歌いたくなっちゃうよね? うーみーはー――」

「――さぁーてルネ行こうかジャミルはここにはいなそうだー!!」

 棒読みで叫びつつルネを引っ張っていく。

 もうあの歌は聞きたくないんだ許してくれ!!


 と思って船内に戻ろうとしたら、


「お、あんたがもしかして、ハリス団長の言ってたアークって男か?」

 言いながら近寄ってきた男達は……うん、盗賊団だなって1目で分かった。

 銀髪の若い男が一人、褐色の大男が一人、咥え煙草が一人、目付きの悪い奴が一人。

 全員頭に緑色のバンダナを巻いて、ガラが悪い。

 どこのゴロツキだよ……。


 声を掛けたのは銀髪だ。

 年齢は30代前半ぐらい?


「そうだけど。なんか用?」

 と言いつつ、いや~、変なのに絡まれたな~と思う。


「おいスコード、冗談だよな? こんなガキが団長を助けたって……」

「どんな実力者かと思ったが、こりゃトンだ期待外れだな」

「団長もお人好しだぜ。こんなクソガキと共同戦線張るなんざな」

 煙草と褐色と目付き悪いのが順に話す。

 つか、全部聞こえてんだが俺はなんてリアクションすりゃいいんだよ。


「おいガキ共。お前らなんか勘違いしているようだが、ここはお前らのようなガキがお遊びに来るような所じゃねえんだよ。団長の行為に感謝するんだな」

 スコードと呼ばれた銀髪がナメた口調で言った。

 おいそこまでガキガキ言われるとなんかむかつくぞ……。


「そりゃあ悪かったな。あとで団長にお礼でも言っておくよ。んじゃ俺はこれで……」

 こんな奴らと関わる必要は無いしな。

 つーか疾風の翼ガラ悪っ!


「ってめぇ! なんだその態度は! 疾風の翼ナメてんじゃねぇぞ!」

 褐色巨人ががしっ! と通り過ぎようとした俺の肩を掴む。


「いや別にナメて無いって。謝ったじゃねーか」

 なんだよもうめんどくさいなと思いつつ振り返る。

 つーかルネリナお前ら面白そうにこっち見てんじゃねーよおい。


「その態度がナメてんだっつってんだよ!」

 褐色巨人は何故か怒っていた。

 あれか、敬語使ってないからか?

 そういやハリスにも敬語使ってなかったけど。


「すみませんでした。先程の御無礼をお許しください」

 俺は自分でも驚くほど華麗に頭を下げた。

 なんて礼儀正しい俺!


「なんだと!? ぶっ殺すぞクソガキが!!」 

「いやなんでだよっ!」

 思わずベシッと右手でツッコミを入れる俺。

 もうなんなんだよどうしたらいいんだよコレ詰んでんだろ。


「……テメェ、やりやがったなァ!! もういいぶっ殺してやる!」

 違うそれ攻撃じゃない、ツッコミだぁぁぁぁ!! という心の声を言葉にする間も無く、褐色巨人の大木槌が頭上から振り下ろされる――が、そんなもんを避けるのに苦労はしない。

 ひょいっと、半歩引いて簡単にかわす。


「なんだよ、お前マジなんなんだよ。もういいよやりゃあいいんだろ!」

 まじめんどくせえええええ!!

 まあどうせこいつらザコっぽいしいいや。


「おお? なんだ、ボードマンとやるのか? はははははやめとけよ! ガキはガキらしく素直に謝ってりゃあ良いものを」

 さっきのスコードと呼ばれていた銀髪が面白そうにニヤニヤ見てきた。

 褐色巨人はボードマンというらしい。

 

 そしてその言葉で俺の心が沸点を超えた。

「だからさっきから謝ってんじゃねぇかああああぁぁぁぁ!! んだよお前ら頭悪すぎんだろうが!! いいよ面倒臭いからお前ら四人纏めて掛って来いよもう!!」


 もう面倒臭い。

 ホント面倒臭過ぎてイライラするコイツら。

 なに? 俺に何を求めてんの?

 なんなの? 俺がガキなの? お前らの方がガキだよね?

 

 こりゃあもう駄目だよ、つっこんでも意味無いよ。

 ボケとツッコミが成立してないもん、言葉が通じないもん。

 ならもう戦って勝つしかねえよ……この意味の分からない集団をやり過ごすには。


「んだと!!? 疾風の翼ナメてんじゃねえぞコラ! おいやるぞ、ボードマン、ジェニス、エドガー!」

 俺のセリフによってスコードという銀髪もプッツンしたらしく、こめかみにシワを造って怒鳴ってりながら大型の剣を構える。

 ちなみにボードマンが褐色巨人。デカい無駄にトゲトゲしいハンマー。

 ジェニスが大人しい喰え煙草。腰には一般的な長剣。

 エドガーがなんかずっと睨みつけてるやつ。手には鋭い槍がある。


「あ~あ~、アークがキレた……相手無事で済むかな……」

「多分無理。骨ぐらいは逝く」

 ルネとリナはそんな会話をしていた。


「そーら! 掛って来いよ!」

 銀髪スコードは左手で手をこまねいている。

 コイツやっぱ馬鹿なんじゃねえか?

 片手であの大剣を構える力はすごいが。


 と思いつつせっかく誘ってくれたので攻撃しに行く。


「おっと!」

 スコードは咄嗟に防御。

 ギリリ、と左ダガーが大剣に受け止められた。


「掛ったな。 喰ら――」

 後ろから長剣を振りかぶる煙草のジェニス。

 見え見えなんだよ!

 俺は右ダガーの柄の部分を向けて投げた。


「――え゛っ!?」

 右ダガーの柄はジェニスの脳天に直撃し、体制をくずす。

 煙草は落ち、右ダガーは空中をくるくると舞う。

 俺の予想外の行動に一瞬集中を切らすスコード。

 俺はスコードの腹を蹴る。


「ぐえ!」

 その反動でジャンプし、右ダガーを空中で掴む。


「ば、ばかな!?」

 ジェニスは驚愕の表情を浮かべ、俺の着地と同時に後ろ首を叩かれて気絶した。


「うおおおお!!」

 巨漢ボードマンがジェニスの気絶と同時に木槌で殴りかかる。


「余裕」

 俺は笑みを浮かべその打撃を回避。


「ならこいつはどうだ!」

 ボードマンは体を横にずらす。

 するとその後ろからエドガーの強烈な突きが襲ってきた!


「うおっ!?」

 これにはビビった!

 俺は左ダガーを思い切り振り、その突きを弾き返す!

 だが横から今度はスコードとボードマンの挟撃!


 両脇から大剣と木槌が迫る!

 足に力を込め、全力で背後にジャンプ!


 ――なんとか避けた……が、壁際に追い詰められてしまった。


「ククク……さあ終わりにしようぜ!!」

 スコードが攻撃を縦に繰り出す!

 俺はその攻撃を2本のダガーで防ぐ!

 さすが大剣だけあって、受け止めた衝撃はハンパじゃ無かった。・



 そこにボードマンとエドガーの攻撃がガード不可能な俺に襲いかかる!

 やべえ!


 ……なんつって。

 実は作戦通り!!

 俺は力を抜いて突然しゃがみこむ。


「ぬおっ!?」

 突然力が抜けた事によりスコードの剣は先端が床に刺さる。

 で、俺は2本のダガーの柄でスコードの腹を思い切り突く!!


「え――がはっ!!」

 スコードは気絶し、左右から来たボードマンとエドガーの攻撃は外れ、木槌と槍がお互いを交差した。

 俺はそのままボードマンに攻撃を仕掛ける!


「クロスエッジ!!」

「ぐああああ!!」

 2本のダガーをクロスさせ、ボードマンをふっとばす。


「ぬおぉぉぉぉ!!」

 エドガーは渾身の突きを俺に浴びせようと槍を突く。

 俺はジャンプして壁を蹴り、


「ダイヴ――」

 相手の背後に回る。


「なッ――なにぃぃッ!?」

 着地と同時に、ダガーを後ろ首へ叩く!!


「――スラッシュ!!」

「ぐはっ……」

 エドガーは倒れた。

 なんとか勝ったな。


「う……」

「いてて……」

「く、首が……」

「お前……反則だろ……」

 盗賊が口々に言った。


「そっちの望み通り、お子ちゃまなりに楽しませてやったよ。感想は?」

 俺はさわやかな笑顔でたずねる。


「「「「……失礼な事言ってすみませんでした!!」」」」



 これが後に疾風の翼内で伝説となる事は、俺はまだ知る由もなかったのだった……。


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