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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第九章 王国へ
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第91話「もはや腐れ縁」

前回のあらすじ……。


担当:エルアス・ミルード。

今日、夢にまで見た正規部隊への配属が決まったよ。

しかも、参謀長直々に書類を私に来てくれたからもうビックリ!!

でも、その指令書の内容に私はもっとビックリした。

配属される部隊の任務は、アークを捕まえる事だったの。

それは、私たちにとって一番やりたくない事だった……。

けど、多分私もリードも、あのアークを見送った日、覚悟はしていたんだと思う。

ただ、今回のアークは、冤罪で処刑されそうになったルネを助ける為に罪をかぶった。

だから私は、黙ってアークを捕まえる気は無い。

多分、リードだって同じ事を考えていると思うから……。



――ハックル・港部のベンチ――



 日差しが気持ちいいな……。

 照りつける太陽は、まるで母親のような暖かさだった。

 

 ときどき吹く風も、程良く熱を持って行ってくれた。

 とてもいい気持で、俺はうっすら眠っていた。


 ん、誰か目の前に居る……?

 誰だ……?

 

 まさか、母さ――


「――ん? って」

「あっ、きゃあ! い、いきなり起きないでよっ!!」

 

 目の前に居たのはルネだった。

 しかも、鼻が触れるような距離まで顔を近づけて。


「ば、ばか! お前こそ顔近すぎなんだっていつも!!」

 おうぅ……朝からまさかルネの顔をドアップとは……。

 刺激が強すぎ……じゃなくてびっくりするだろ!


「い、いやあれよ、すっごく気持ちよさそうに寝てたから起こすのなんか可哀そうになっちゃってね」

 そう言うルネは目をそらして顔を赤くしながら言い辛そうにする。

 ああもう……コイツはなんでかたまに可愛く見えるから困る……。


 ったく、黙ってれば顔はいいんだからやめてくれって……。


「だ、だからってあんな至近距離で覗きこむなって……」

 やばい、俺も多分なんか顔赤くなってるって。

 俺はなんとなく寝ていたベンチから腰を上げる。


 とりあえずあれだ、話題を戻そう。

 いや落ち着け、戻すも何も俺らなんも話してなくね?


「おォい、おッ、やっといやがったなアーク。朝起きたらテメェがいねェから全員で探しまわってたんだぜェ! ッて、なンでテメェら顔真っ赤にしてンだァ?」

 一番来てほしくない奴来たぁぁ!!

 おい、そのニヤニヤやめろ!!


「ひぇ! あ、あたしは走り回ったからちょっと暑いだけよ!」

「おお俺はあれだ、ずっと日が当たる所で寝てたから暑っつくてさぁ!!」

 二人で必死にそれっぽい弁解をするが、


「へェ~! そォかそォか。ここに来て新たなカップル誕生ってなァ! アークもリナと駆け落ちを狙った上ルネまで落とすたァ、やンじゃねェか」

 クカカカカ、と忍び笑いをするジャミル。

 お前また余計な事を……。


「えぇぇぇ!? リナと駆け落ちってどういう事! アーク、リナとそう言う関係だったの~!!」

 ガーーン! というショック音が聞こえて来そうなリアクションをルネは取った。

 ちなみに、半歩引いていた。


「違ぇよ!! おい何ややこしい勘違いしてんだよ!! ジャミルこれどうしてくれんだもう!!」

 おいおいおいおい朝からなんでこんなめんどくさい事態作ってんだよ!

 こっちは寝起きなんだよ!

 頭回らないんだよ!!


「こりゃァ女好きのアークの事だァ。幼馴染のエルもターゲットに入っててもおかしくねェな……」

 真剣な顔でこの人は何を言っているんでしょうか!!?

 俺にはもう理解出来ない!


「おお~~、そうなると三人を一手に引き受ける事になるね~。果たして、本命は誰なんでしょうか? ジャミル先生はどうお考えで?」

 …………おい。


「そォですねェ。天然系幼馴染か、天真爛漫な年上お姉さんか、ロリ系クール少女。まァアークは恐らくロリコンなンで、ロリに走るでしょォ」

 ……おい!


「そうですか~、アークはロリコンだったのですね~。彼に対して、かなりの支持率低下が見受けられそうですね~。こりゃ~次回の総選挙、だいぶ雲行きが怪しくなってきました」

 おいッ!!


「全くでェす。逆に同じロリコン党からの支持率はあがる可能性がありますがねェ」

「おいお前らホントいい加減にしてくんね?」


「これが実は、後のアークロリコン王国建国の、第一歩になるのであった……」

「ナレーションっぽく言ってんじゃねえ!! つーかどっから突っ込めばいいんだよ! どういう設定なんだよ! なんで俺ロリコンなんだよ! この茶番いつまで続けるんだよッ! なんで俺ロリコンなんだよぉぉぉぉぉぉ!!」


 なんて騒いでいると、リナが現れた。


「アンタ達遅い、うるさい」

 全員平謝りした。

 なんていうか、眼が怖いんだよリナは……。



――宿屋――



「……で、結局これからどうする?」

 俺達は落ち着いて今後の行動を決める為と、とりあえず朝食を取る為に宿へ戻っていた。

 

 ちなみになんでベンチで寝てたんだ? という質問に対しては、寝れなくてベンチに座って海を見ていたら眠れた、とか適当にごまかした。

 いやまあだいたいあってるんだけど。


「とりあえずどうにかして情報盤を解析しないとな」

 リナの質問に対し、俺はハムエッグをつまみながら答えた。


「問題はどうやって解析するかだよね~。あたしの記憶だと、そもそも情報盤自体、帝国では希少だからそれを解析する装置もあるかどうか……」

 ルネは堅いベーコンをはむはむと千切りながら言った。


「ってこたァ、王国にならあンじゃねェか? あそこァ確か、遺跡から派生した独自の技術で成り立ってっからなァ」

 ソーセージをかじりながら、ジャミルは記憶を探るように言った。


「へぇ。ジミーにしては貴重な意見ね。ま、アタシも王国に住んでたから分かるけど」

 と、相変わらずの無表情でクロワッサンを小さくかじるリナ。

 

「と言う事は、次の目的地は王国か……。ま、まだ戦争が起きた訳じゃないし、空駆船は出てるだろ」

 ここは丁度港町だし、丁度いい。


「いや、待て。俺ァ王国にはいかねェ」

 と、思ったら、ジャミルが顔を蒼くしていた。


「は? なんで?」

 突然の辞退宣言に俺は驚いていた。


「いやあの……あれだ……ちょっとホラァ……家庭の事情というかァ……」

 ジャミルは人差し指で頬を掻きながら、全員から目を逸らす。


「べ、別にアレだ! 全員で行くこともねェだろォ!! お、俺ァここで待ってっから、テメェらだけで行ってこいって! なァ!! ンじゃ俺ァこれで!!」

 と言って、朝食も残っているのにイスから立ちあがり、一目散に逃げて行った……が。


 がしっ!

 とルネがジャミルの右腕を掴んだ。


「そう言われるとさ~」

 ルネがニッコリと笑う。


「なんだか」

 リナも珍しく黒い微笑を浮かべながら、左腕を掴む。


「無理やり、連れて行きたくなるよな~」

 俺も笑いながら、両足を持った。


 確信した、俺達の意思は今一つとなった。

「やッ、やめろォォォォォ!!」

 店内に、一人の青年の悲鳴が木霊した。



――港部――



 俺達は驚異の連携で、ジャミルを港まで輸送した。

 あ、ちなみに金はちゃんと払ったぞ。


 当のジャミルは、もう諦めたようで、「大丈夫だァ、そォそォ出会う事もねェって……」とブツブツ言っているが、会いたくない奴でもいるのだろうか。

 

「さて、港へやってきたわけだが……随分と船の数が多いな……」

 俺は圧巻した。

 まあ、ここの港の規模がでかいのは情報として知っていたが、こんなに何隻もの空駆船がいるとは思わなかった。

 

 空駆船はどれも、海の上に着水している。

 空駆船は、基本的に空の上を飛ぶ乗り物だが、巨大な為、整備しやすいように着水させる事が多い。

 

 一応海の上を進むボートという乗り物もあるが、海は頻繁に荒れる為、大型のものは無い。

 

「オイ、あの船どっかで見た事ある気がすンだが……気のせいかァ?」

 ジャミルが1つの船を指さした。

 何故かげんなりしているように見える。


 ここからじゃ別の船が邪魔で見えん。


「あたしも……なんかどっかで見た事あるんだよねぇ~……」

 ルネまでもが頭を抱えている。

 ちなみにリナは小首をかしげている。

 見覚えは無いようだ。


 どれどれ……?

 その船は中の下くらいの大きさで、多数の砲台で武装してあった。

 この船って……もしや……。


「げぇッ! お前らは……いつかの破壊魔兼詐欺師!!」

 その声の主は……疾風の翼団長、ハリスだった!!


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