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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第九章 王国へ
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第90話「迷いと葛藤」



前回のあらすじ……。


担当:アレン・ブエノース。

まずい事になった。

先日の襲撃で、ブラストレイズ“バンガード”を失って負傷した私は、騎士団ドーイング駐留軍に保護された。


だがここの軍長であるリコ・ウェルナー大尉は狡猾で、誤って犯人と断定した私の姪、ルネ・アーサスを処刑しようとした。

犯人は間違いなく、金髪の男。

私も噂ぐらいは聞いている、ブラストレイズを収集している謎の男だ。


ウェルナーは己のミスを隠ぺいする為にルネを犯人と決定し、同時に騎士団本隊の参謀長、マクシミリアン・フラッズ少将の指令を受けてブラストレイズの捜索に乗り出した。

このままではまずい……、なんとかここを脱出しなければ。




――帝都・ラシアトス城・帝国騎士団本部・入口――


 

 僕達は、バスキルト砦戦を生き抜き無事に騎士団本部へと、駆動輸送車で向かっていた。

 今ちょうど、正門をくぐりぬけて本部敷地内へ入った所だ。


「……、随分、減ったもんだな。ヴィクトルの野郎も、どこへ行ったんだか」

 少なくなった人数を見てロウ隊長は呟いた。


 結局、危機を救ったあの謎の攻撃の真相は分からなかった。

 遺跡が突然爆発し、周囲に居た進撃中の魔物は全滅した。

 

 それを見て北側へ走ると、中年の男と少年の二人がいた。

 その後、容疑者ルネ・アーサスを強奪後、逃走。

 

 騎士団はその一味をアレン・ブエノース大佐傷害事件の関係者及び、遺跡爆発、魔物凶暴化との関連性を調査する為、緊急指名手配。

 だが、バスキルト戦で多大な損害を受けた事や、遺跡調査に人員を回さなければいけなかった為、当日に十分な捜査はされなかった。


 今後、全国の駐留軍に捜索を依頼し、見つけ次第拘束する予定……。


 と、騎士団内部ではこんな話になっていた。

 まさか、ザイルを殺す前に、君を捕まえなければいけなくなるとは思ってなかったよ……、アーク。

 

「実戦、初めて経験して、分かりました。やっぱり騎士って、辛いですね……」

 エルは、ラシアトス城を見ながら言った。


「怖くなったのか? 迷いがあるならやめた方がいい。中途半端な気持ちでいると、簡単に死ぬぞ」

 駆動輸送車が敷地内に着いた。

 僕達は、輸送車から降りる。


 後は更衣室で着替えて帰るだけだ。

 見習いの勤務時間はとっくにオーバーしている。


「いえ、だからこそ、私は騎士になりたかったんです。この辛い戦いの中で、少しでも自分の力が役に立てるなら……」

 そう言って、ニッコリと笑う。

 いつものエルだ。

 それに比べて僕は……、なんなんだろう。

 目の前で死んでいく、助けられなかった味方がいるのが悔しい。

 隣に居るエルを……、失いそうになったのが悔しい。

 

 もっともっと強くなって、エルを、みんなを守れるようにならなければ。

 

「ッ、敬礼ッ!!」

 教官の声で言われて、反射的に気を付けの姿勢で敬礼をする。


 目の前に立っているのは……、フラッズ参謀長!?

 黒いしなやかで長い髪に、理性的で知的な顔立ち。

 だがその眼鏡の奥の瞳には、熱い何かが宿っているような気がする。


 ラシアトス皇帝の実質的な補佐を務める、帝国騎士団のナンバー2。

 マクシミシアン・フラッズ中将をここまで近くで見たのは初めてだった。


「楽にしたまえ。先のバスキルト砦戦、よく戦い抜いてくれた。君達は今日から立派な騎士だ」

 そう言って、僕ら二人に直接、指令書を渡した。


 その指令書の中身を見て、唖然とした。



 リード・フェンネス訓練騎士。


 本日を持って、騎士団養成部隊を卒業し、正規軍への配属を決定する。


 階級:少尉


 配属部隊:帝国騎士団・帝都即応部隊・第十三独立中隊・三番隊


 任務内容:容疑者アーク・シュナイザーの拘束



「二人はシュナイザー容疑者の友人だと聞いている。友人を捕まえるのは辛いだろうが、君達も騎士だ。そのくらいの事は理解しているだろう?」

 ……、何も言えなかった。

 騎士である以上、命令は絶対だ、そんな事は分かってる。

 そして、あの日分かれたときから、アークと敵対する事も覚悟していた。


 だが、こうして現実を見せつけられると……正直、キツいな。 


「君達をこの独立部隊に配属した理由はそれだ。友人である事を利用し、彼らを誘いだせ。後に、中隊指揮官から正式な命令を貰う筈だ」

 アークを……騙すのか!?

 いくら任務とは言え、そんな卑怯で信頼を裏切るような真似はしたくない……!


「アルバート・ロウ軍曹」

「はッ!」

 フラッズ参謀長は今度はロウ教官に書類を渡した。


「三番隊の指揮は君が取りたまえ。階級を中尉に戻そう」

「了解」

 ロウ教官が敬礼をすると、フラッズ参謀長は、


「では諸君。更なる活躍を、期待しているよ」

 と言い残し、その場から去っていった。


 後に残ったのは、なんとも後味の悪い空気だった。



 晴れて正規軍に配属が決定した時、前の僕はうれし泣きをするかと思っていた。

 小さいころから憧れだった正義の騎士。


 その正義の騎士になって初めての任務は、皮肉にも親友を裏切る事だった。


 だけどアーク。

 僕は、そう簡単に諦めたりしない。


 君はまだ、何も罪を犯していない。

 この誤解を解くのは無理かもしれない、だが絶対に、君を助けて見せる。



――港町ハックル・入口――



「ヘックシっ!」

「うっさい」

「いてぇよ!!」

 なんかクシャミをしたらいきなりリナにぶたれた!

 理不尽すぎね!?


 さっきからやけにクシャミが出るな……。

 誰か俺の噂してんのか?


「っていうか、やっと着いたね~、ここが、港町ハックルだね」

「ほォ~……、港町と言うダケあって活気があンじゃねェか。こういう街は好きだぜェ」

 町に入ると、いたるところに屋台が並んでいて、店員の宣伝の大声が響き渡っていた。

 屋台の種類は多く、武器や防具も多数揃っているようだった。


「ね~、おなか減った~、どこかで食べていかない?」

 ルネが提案した。

 気付けばもう既に昼だ……。


「そう言えば、ジャミルとリナは激辛殺人生姜焼き以来なにも食べて無いんだよな?」

「…………そう」

「…………あァ」

 俺が確認すると2人は急にげっそりした気がした。

 大丈夫かこいつら……。


「……そういや俺達金あるのか?」

 俺は重要な質問を投げかける。


「俺ァあるぜ。団長からドーイング牛買って来いって渡された金が……」

 言いながら、ジャミルは顔を蒼くした。


「やべ……そういァお使い頼まれてたンだっけェ……団長に殺される……」

「団長って、そっか、アンタ確か『紅の剣』ってギルド所属だったんだっけ」

 リナが思い出したように言った。

 そう言えば……俺もすっかり忘れてたぜ。


「団長って、そんなに凶悪な人なのか……確か……イーリスって言ったっけ?」

 俺は前に聞いた話を思い出す。


「あァ……鬼のようなお人だァ……」

 なんかジャミルの周囲にとてつもないマイナスオーラがッ!?


「あ、あはははは、し、しっかりしなよ! とりあえず食べて元気だそ?」

 ルネは空気に耐えられず、必死にジャミルを励まそうとする。


「ほら、なんならあたしが即席で作って――」

「「「それはやめろッ!」」」

 ハモった……。


 それから俺らは、一心不乱に宿屋でメシを喰い、そう言えば徹夜だった事を思い出し、そのまま宿屋で休憩を取った。

 


――――


 

 夢を見た……。

 俺は友達と遊んだ後、家に帰る。


 しばらくすると、なんだか怖い眼つきをしたお兄さんがやってきて父さんと話をしていた。

 その後見た父は、酷くやつれていて、なんだか嫌な予感がしたが、その予感を振り払い、俺は夕食を自分で作り、寝た。


 目を開けると、すぐ朝になっていた。

 父はいなかった。

 胸騒ぎがして、外に出ると、騎士たちがいっぱいいた。


 そうしてうちにやってきたんだ。

 1枚の紙を持って。


 その紙には、親父が死んだ事が書いてあった。

 信じられなかった。


 嘘だ……信じたくない……。

 父さんが……昨日まであんなに元気だった父さんが……!

 俺のたった一人の家族が……ッ!


 嘘だ……嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だうそだうそだうそうそだ――



「――ッ! ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 俺は跳ね起きていた。

 全身が汗でびっしょりだ。


「ったく……嫌な夢だ……」

 ……さすがの俺でももう寝る気はしない。

 チェックアウトまではまだ時間があり、ジャミル達を起こすのも悪い。


 そしてここにいても変な事ばかり考えそうだ。


「……出るか」

 俺は、とりあえず宿屋を後にした。


――――


 町は夕焼けで赤く染まり、幻想的な風景を醸し出していた。

 だが町の活気は留まり事を知らず、賑やかさは昼と大差無かった。


「……」

 俺は黙って町を適当に見渡す。

 1人でいてもする事ないな……。

 いつの間にか俺は、港にいた。


 海か……。

 日は既に海に沈み掛け、美しい風景を作っていた。

 

 ……俺は、迷っていた。

 俺は……この手で人を殺す事がはたして出来るのだろうか……。


 この前ザイルと対峙した時。

 俺はあの時、命まで奪おうとは考えていなかった。

 そうして迷っていたら、ザイルが急に喋り出したんだ。


 殺そうと思えば多分――殺せた。

 

 でも、あの後ジルドの話を聞いて分かった事がある。

 ザイルは――親父を殺していなかった。


 親父は自らの死を持ってザイルを止めうとしただけだった。

 確かに、ザイルは親父を殺すつもりだっただろうが、結果的にはそうはならなかった。


 今でも、結果的に親父を奪ったザイルが憎い。


 ああ憎いよ、殺したくて仕方がない。

 今更ザイルは親父を殺してませんでしたって言われたって、そんなもん納得できるかよ……。


 でも、俺は確かに今も迷っている。

 誰にも言っていないが、あの時ザイルは確かに雰囲気が変わったんだ。


 誰かに操られてるんじゃないか――そんな気がする。


 それに、俺気付いたんだよ…………。

 

 ザイルと、エイリアスは、目の色が同じだ。

 普段は炎のように真っ赤な瞳だが、あの2人、そうじゃない時がある。


 エイリアスは幽霊船で会った時、まるで別人のようだった。

 遺跡戦でのザイルも別人とまでは行かないが雰囲気が変わった。


 ジルドは言っていた。

 あの二人は仲間である可能性が高いと。


 でも、それ以外になにか共通点があるんじゃないか……?

 そう、思えてきた。

 

 俺はザイルの……何かを知りたい。

 あいつの本当の目的は何で、何故親父を殺したのか。

 裏には誰がいるのか、何を企んでいるのか。


 そして何より……あいつ自身の意志はあるのか。

  

 その答えが見つかった時……俺はどうするべきなのだろうか……。

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