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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第七章 ジルド過去編
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第78話「サリー島へ」


前回のあらすじ……。


担当:ジルド・クロームド

マクラーレンの話は、軍人らしく色々面倒だった。

要約すると、ザイルの手掛かりを掴む為に賢者と接触してくれ、という事らしい。

その間マクラーレンは騎士団を調査する。

ちなみに、リナ嬢がワルキスに会いたがっていた。

流石に仇を討たせるのも嫌な感じだったので、適当に嘘を言っておいたがどうも本気にしてしまったようだ。

まさか、そんな場所にワルキスがいるとは思えないが。

まあ、とりあえずオレは、賢者を探しにサリー島という所へ向かっていた。



――帝都・海港区――



「そこをなんとか! 頼むってぇ!」

「駄目だ。“近くの島に行きたいから空駆船を貸せ”なんて無茶言うなよ。燃料だってタダじゃないんだぞ?」

 オレは、サリー島に渡る為、船を探していた……が、出発前からかなり難航している。

 サリー島は帝都沿海部から200km程離れた場所にあるらしい。


 当然泳いでいくなんて馬鹿な真似は出来ないので、空駆船が必要なのだが、見ず知らずのオレに貸してくれる親切人はいない。


 今も空駆船の近くにいる水夫に声を掛けていたが、ことごとく断られてしまった。

 これで5人目だ。


「……そう言えば、あれ見えるか? “モーターボート”と言うらしいんだが」

 ん? と水夫が指差した場所を見る。

 船着き場に小さいボートがある。だがオールが見当たらない。

 代わりにボートの後部に鉄の塊がくっ付いている。


「なんだありゃ」

 名前からして普通のボートではないようだが。


「王国で開発されたボートだよ。なんでも雷元素を動力に変換して自動で走るボートなんだが、あいにく俺らはみんな帝国育ち。使い方がサッパリなんだ。コイツで良かったら貸してやるよ」

 ま、自分で頑張って動かしてみるんだな、と言い残して水夫は去って行った。


「……なんとかやるしかないか……」

 手を付けてから発進するまで、実に半日を費やしてしまった。



――幽霊船・船長室――



「どういうつもりだぁ?」

 部屋に入ってきて第一声がその声だった。


 不機嫌そうな濁声。

 その主は、金髪で、ジーパンと迷彩柄のコートを着た男ザイル・サファール。


「何の事やねん」

 対するのは、豪華な船長イスに座り、キセルを吹かす男、ワルキス。

 服装は赤を基調に金や黒の装飾を施した船長服だが、それを男と呼んでいいのかは分からない。


 なぜなら、肉体が存在せず体が骸骨だからだ。

 かろうじて男だと分かるのは、服装と声のお陰だった。


「とぼけんのか? 俺の周囲を嗅ぎまわってるウザってぇ賢者の事だ」

 そう言ってザイルは一層ワルキスの事を睨んだ。

 その殺気立った視線に嫌気がさしたのか、ワルキスはイスを回転させて目を合わす。


「言ったはずや。ワシらは目的の為に協力し合っとるだけや。目的を達成した瞬間、ワシらは敵同士。それでカウンターを用意しない訳ないやろ?」


「ちっ……そんな事の為にわざわざヤツを王国まで行かせたのか? おまけに今度はサリー島に向かってるらしいじゃねぇか」

 ザイルは下らない、とでも言いたげに溜息を吐きながら視線を下に向けた。

 ワルキスのカウンターなど、気にする必要もないとでも言いたげに、話を続ける。


「ジルド・クロームドとアスロック・タリスマンの接触か。タリスマンが協力すりゃぁオマエの手駒になって良し、協力を拒否すりゃ俺にブラストレイズが手に入って良し、警戒を強めたとしても俺の消耗を誘い、仮に俺が負けようがそこでオマエがタリスマンを襲撃すりゃあ良し。ハッ! いいねぇ、実に良く出来た作戦じゃねぇか!」

 ザイルは憎たらしい笑顔で拍手を数回した。


「褒める為にそないに長々としゃべっとったんか?」

 ワルキスはザイルの考えが見えず、聞き返した。


「オマエの思い通りには行かせねぇからだ。タリスマンの野郎がどうなろうが、オレが瞬殺して、ついでにオマエの手駒も消してやるよ。ククク……自分だけが世界を回してると思ってんじゃねぇぞ?」

 ザイルの表情は、まるで今にも暴走しそうなくらいに狂気の笑みを浮かべていた。


「そういうジブンこそ、それだけのブラストレイズを一手に集めて満足に操作出来とるんか? 大方個々の力を抑えるのに精いっぱいで、ロクに動けもせぇへんのやろ」

 そのザイルの顔を見ても動揺せずに、ワルキスは逆に挑発するような口調で言う。


「……ちっ、流石は製造元ってところか。んだがなぁ、それは“常人”の話だ。俺の本当の正体、オマエならもう分かってるよなぁ?」

 ワルキスの言う事は的を射ていたようだが、それでもザイルの自信は変わらなかった。


「フン、仮にそうだとしても、力を十二分に発揮できない事は変わらん。だいたい、ジブンがブラストレイズ手に入れたとして、ワシに損は無い。だからこそ協力しとるんやろ?」

「はっ、違いねぇ。……邪魔したな」

 詰まらなそうにそう言って、ザイルは部屋を後にした。


「……ジルド・クロームドにサリー島行きの情報を与えたのはワシや無いやねんけどなぁ。にしても、あのヴィクトリア・マクラーレンという男……。上手くいけば、シャドウ勢力と騎士団の繋がりを暴いてくれるかも知れへんなぁ」



――サリー島・沿岸部――



「ふ……ふへぇ……じぬがどおもっだ……」

 オレは、海水がまだ残ったようなガラガラする感覚の喉でかろうじて声を出した。

 モーターボートとやらは、使い方を手さぐりで探しながらもほぼ問題なく進んだが、海がかなり荒れていた為、何度も転覆の危機を迎えた。


 そんな感じで海水にもみくちゃにされてきたので、ここへ来た時にはボートの制御を誤り、磯に乗り上げてしまった。


 が、とりあえず島に着く事は出来たので、磯を渡り切ってから草むらに思わず寝そべった。

 そして、今に至る。


「さ~て、とりあえず、タリスマンさん家にお邪魔しないとな~っと」

 いつまでも寝ていては日が暮れてしまうので起き上がって歩き出す。

 マクラーレンの情報によれば、島の西部の建物の地下に住んでいるという。


 ここからそう遠くは無い。

 オレは足を進めた。

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