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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第七章 ジルド過去編
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第76話「このパターンは嫌な予感しかしない」


前回のあらすじ……。


担当:ジルド・クロームド(半年前)

北方軍をなめていたら、手ひどい反撃を食らってしまった。

やはり、いくらブラストレイズ装備とはいえこんなチマチマした使い方じゃあ魔導銃ブラスター持ちの衛兵の方がよっぽど強いな。

まぁ、どんな兵器も万能ではないという事か。

それでも何とかするしかないので頑張って撃退していたら、偶然目標と接触してしまった。



――北方軍基地・地下牢――



「で、アンタ何者? 何が起こってるの?」

 むすっとした表情で目標の金髪少女リナは問うてきた。


「あー、簡潔に言うと、おっさんはチミを救出しに来たの。リナ・ベルナールだよな?」

 一応名前を確認する。


「……そ。ならさっさと出してくれる?」

 この胡散臭い発言をあっさり受け入れ、立ち上がってこちらに歩いてきた。


「あのさぁ……、ちょっとは疑ったりしないの? 自分で言うのもなんだけどおっさん凄く怪しくない?」

 こっちが心配してしまうのもどうかと思うが。

 

「警戒ならしてるわよ。……アンタ、その腕輪付けてるって事は、アイツの関係者でしょ? アタシに何の用か知らないけど、牢に捕まってるよりはいいわ。今は何も持っていないけど、絞め殺すぐらいは出来るしね」

 そう話すリナ嬢の目は、明らかに殺気立っていた。


「待て待て、アイツの関係者って?」

 まさか真っ先にこの腕輪に目を付けるなんてな。

 やっぱリナ嬢は何か知ってるのかも知れん。


「決まってるでしょ。アタシの父親を殺した男の事よ! アイツもその腕輪をして、そこから変な能力を使ってた! アンタもその男の仲間なんでしょ! それともまさか……アンタがお父さんを……」

 やばい、なんか牢の中にいても殺されそうなぐらい凄い殺気を放ってる……。


「落ち着けって! おっさんはその男とは関係ない! むしろ追う立場だ!」

 オレは必死に敵ではない事をアピールする。


「追う立場……? どういう事?」

 リナ嬢は少し落ち着いた様子で聞く。

 どうやら話ぐらいは聞いてくれそうだ。


 少し、真面目モードで事情を説明するとするか。

 あんまりふざけてたんじゃ信用されないしな。


「君の父親を殺した犯人は、オレの親友を殺した男だ、八年前にな。オレは今まで、その犯人、ザイル・サファールについて色々と独自に調査していたんだが手がかりは無し。そんな時だったよ。ここセトラエスト王国ノウスフロークでザイルが殺人をやったって話をとある筋から聞いたのは。それで、その娘なら何か知っているハズだと思ってはるばるここまでやって来たのさ」

 チラチラと、話しながら周囲を気にしてしまう。

 出来ればいつ追手が来るかという状況で長話はしたくないのだが、かといって出したとたんに暴れだされてもそれはそれで厄介だ。

 そんな状態で追手に晒されれば詰む。


「……そ。事情は把握したわ。疑って悪かったわね」

 あまり気持ちが籠って居ないような平坦な声で頭を下げられたが、まあとりあえずは信用されたようだ。

 にしても、年齢の割に随分と落ち着いているように見える。


「ま、とりあえず出すわ。……襲うなよ」

「何ビビってんのよ、襲わないわよ」

 正直、この小さな体のどこからあんな殺気が出てくるのか不思議だ。

 ……よほど、父親と仲が良かったんだろうな。


「んじゃ下がってて。疾風の刃よ――ウインドエッジ!!」

 オレは風属性の初級魔法で牢屋を切り裂いた。


「ありがと」

 リナ嬢は牢屋から出てきて、もう一礼する。


「で、出して貰って悪いんだけど、アタシ多分アンタが知りたい情報なんも持ってないわよ? もしかして無駄足だったんじゃない?」

 ……は?

 オレは完全にフリーズした。


「ていうか、むしろアタシが知りたいぐらいよ。アタシ、あの男の姿、一瞬しか見てなかったの。見たときにはもう逃げる瞬間で、家にあった簡易爆弾を投げまくってたらいつの間にかアタシが犯人って事にされてただけだから」

 …………ワルキスあの野郎……。

 何が「あの娘はなんかしら情報を握っとる筈や」だ。

 思いっきりハズレじゃねぇか!


 と思っていたら、

「そこまでだ。両手を上げて頭の後ろにつけろ」

 という男の声が聞こえた。

 振り向くと、拳銃を構えた衛兵が一人、後ろから狙っていた。


「あららぁ、いつの間に」

 言いながら、とりあえず言われたとおりにする。


 綺麗な銀髪と対照的に、北方軍にしては珍しい褐色肌の男だ。

 服は先ほどの一般衛兵用の迷彩服とは違い、スーツのような軍服で、高官だと一目で分かった。


「ちょっと、どうするのよ」

 リナ嬢はめんどくさそうにこちらを見てきた。


「心配するな。お前達には……いや、お前には少し聞きたい事があるだけだ。他の兵はここには来ない」

 緑色の瞳で、オレを睨むように見ていた。

 オレに聞きたい事?

 侵入の目的かなんかか?

 

「そんな物騒な物向けられながら言われてもねぇ」

「数人の衛兵を手玉にとって撃破した人物のセリフとは思えんな。……まあいい。単刀直入に問おう。貴様、00ナンバー所有者だな? いや、帝国では『賢者』と言うんだったか」

 ッ!!

 顔が強張るのが自分でも分かった。

 まさかここでそれを言われるとはねぇ……。


「……へぇ、めずらしいじゃない。賢者以外からその言葉を聞くなんてねぇ。それとも、まさかあんたも賢者?」

 賢者には掟があって、普通賢者以外はその存在自体を知る筈がない。

 ……まぁ、昔のオレみたいに口が軽い奴がいるかも知れないが。


「違う。すまない、そう言えば紹介が遅れたな。俺はヴィクトリア・マクラーレン。王都中央軍、戦略情報部の大佐だ。ようするにスパイって所だ」

 そこまで言うと一端言葉を切り、拳銃を下した。

 手を下してもいいぞ、とジェスチャーで表し、オレ達二人はやっと解放される。


「いいのか? スパイがそんな簡単に素性を明かしても」

 口の軽さにちょっと驚いた。


「ここは王国の、しかも北方軍基地だ。ここの人員は信用しているし、ましてお前達が帝国の犬とは思えん。軍人であるならそれは一瞬の立ち振る舞いにも表れる。ま、そこまで計算して俺を騙していたならそん時は俺の負けだ。諦めるよ」

 なるほどな。一見、話していて悪いやつではなさそうだ。


「そいつはどうも。それで? なんでまた賢者の事を?」

 早速本題に入る。


「俺の主な任務は、ギル・ラシアトス帝国の極秘兵器『00ナンバー』および『レイズ量産計画』の調査と阻止だ。00ナンバーとはブラストレイズの事だな、確か世界に7つあるという話だ。その一つ一つに番号を付けている。例えば、貴様が持っている『ミラージュ』は、こちらでは『コード006』というコードネームで呼んでいる」

 ……まさか、ブラストレイズの事が他国にここまで知られてるなんてなぁ……。

 

「その情報はどこから?」

「文献だよ。歴史書や専門家を徹底的に洗い出した。それと帝都城やその他の研究所。表沙汰にはなっていないが、裏組織……おもに騎士団暗部組織ではレイズ量産計画の派生計画として、ブラストレイズの調査が行われてる。分かるか? 帝国は今、軍事力に飢えている。戦争の為にな」

 なるほど……、じゃあもしかして、たまにとは言えミラージュで魔物倒したり、目立つ戦闘をして騎士団に職務質問されたのはかなり危なかったんじゃ……。


「まったく、皮肉なもんだよ。王国は王国で、莫大な国土と遺跡、軍事力を誇る帝国に怯え、帝国は独自の技術と戦術を持つ王国に怯えてる。お互い話し合えば和平なんて簡単に出来るのに、誰もそれをやろうとしない。イラつくよ、まったく」

 マクラーレンは、そう言って壁に寄りかかり、溜息を吐いた。

 確か、もともと両国の仲は良くなかった。

 帝国も王国も、戦争で領土を拡大して来たいわゆる戦争主義の国家だった。

 帝国は大陸を制圧したし、王国は隣国とは同盟を結んだようで落ち着いてはいたが、互いに牽制はし合っていた。


 そんな中、古代遺跡の発掘で、急激に技術を発展した帝国を見て王国は焦り、遺跡の少ない国内を持ち前の技術で発展させた。

 互いが互いに侵攻してくるんじゃないかと思っているのが今の現状だった。


 ただ、緊迫はしているが、「先手必勝!」とかいう馬鹿が現れない限りは戦争は起こらないだろうというのが一般論らしい。


って、今はそんなのはどうでもよくて、

「んで? なんでわざわざそんな情報を教えたりした? まさか気まぐれじゃないだろうに」

 それは気になる。

 って……事前に訳も分からないまま重要情報を教えるこのパターンは……。


「そうだ。そこで、だ。貴様に頼みたい事があるんだが……」

 来た、来たよコレ……なんかデジャヴだと思ったらあのワルキスと一緒のパターンだ……。

  

「はは、そう身構えるなよ。貴様にとっても恐らくは死活問題になりうる話だ」

 ……どうやら、また無理難題を引っ掛けられそうだ。


 嫌な予感しかしねぇ……。

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