LETSカウンセリング
名無しが遊び半分で対策課のカウンセラーを名乗った日のことだった。
「次の人どうぞー。」
最初の相談者が席へ座る。
「不正を暴きたいんですけど、反対意見が邪魔で……。」
名無しは頷いた。
「そういう時はねー。」
「他の誰かに『やって困る事は無いと思うんですけど、やる意味あります?』って言わせてからメリットを説明すると良いよ!」
相談者は困惑した顔をした。
次の相談者。
「意見を通したいんです。」
「あはは。」
名無しは楽しそうに笑う。
「毎日ハードなトレーニングしたらモテるって仮に言ったとして、何人がそれを実行すると思う?」
「え?」
「メリットだけで動くほど人は単純じゃないよ。」
さらに次。
「好きな子に告白したいんです。」
「すれば?」
名無しは即答した。
「成功するかは知らないけど。」
相談者が苦笑する。
「出来れば成功させたくて……。」
「成功させてどうしたいの?」
「え?」
「それに答えられないのは論外だよー。」
名無しはけらけら笑った。
「マラソンでスタート地点に立ったらゴールだと思うタイプ?」
「確かにグルっと回るマラソンなら一緒だね!」
「見た目と中身ならどっちが大切だと思いますか?」
「見た目でしょー。」
名無しはあっさり答えた。
「中身なんて分からないじゃん。」
「見えてる範囲の中身は……?」
「見える範囲ってのは嘘を付ける範囲って意味だよ!」
名無しは楽しそうに指を立てた。
「尚更意味ないね!」
「失恋で辛いです。」
「大変だね!」
名無しは満面の笑みで頷く。
「忘れたいんです。」
「大事なのは思い出しても大丈夫だと言い張れる事なんだ!」
相談者の目が少し輝いた。
「どうしたら良いんですか?」
「え?」
名無しは首を傾げる。
「知らないけど。」
「恋人の悪い所を直したいんです。」
「大丈夫だと思うよ!」
名無しは自信満々に答えた。
相談者が安心した表情を浮かべる。
「本当ですか?」
「うん!」
「そう思ってる時点で、あとちょっとで恋人じゃなくなるから!」
「努力が報われません。」
「どう報われたいの?」
相談者は言葉に詰まる。
名無しは肩を竦めた。
「報われるかどうかに運要素と外部要素が必要な話をされても困るよー。」
「人に嫌われるのが怖いです。」
「なるほど!」
名無しは大きく頷いた。
「自分が人を嫌いにならないって言い切れないのに面白い相談だね!」
最後の相談者。
「仕事を辞めたいんです……。」
「辞めたら?」
相談者が口を開く。
だが、その瞬間。
名無しが指を差した。
「今言おうとした事が答えだよ!」
その日のカウンセリングは当然ながら大不評だった。




