季節はいかづちの秋 新天地は精霊の街
~前回のあらすじ~
タイラァの村を出たタツリとサキハは道祖神に呼び出されていた。
「それで道祖神様、僕たちに話というのは?」
[うむ、それなのだが。汝のステータスについて改めて話しておこうかと思っての。」
「僕のステータスについてですか?」
[汝、これまでの旅の道中自分の能力の高さはこれで良いのかと心密かに悩んでいたであろう?」
「あぁ、そうですね。」
「へぇ、どれくらいのステータスなの?見せてよ。」
「うん。」
僕は手元にステータス画面を出した。
ステータス
名前:タツリ・イズコ
年齢:20
職業:Fランク冒険者
HP:5607
MP:640
攻撃力:人畜無害
俊敏性:雷神の次に速い。
防御力:必要ある?
【スキル】
闇魔法 保冷魔法 給水魔法 かくかくしかじか
アイテムボックス 道祖神の加護
「ん?どこにあるの?ステータス。」
「あ、ごめんステータス画面僕にしか見えないんだった。道祖神様、サキハにも見えるようにしてください。」
[すまぬ。今すぐにやろう。・・・これでどうか?]
「あぁ、見えた見えた。ふむふむ・・・・」
「ど、どう?」
「どうって、これの何が不満なのタツリ?平均より圧倒的に高いじゃん。」
「それだよ、それ。これまで行った街で色んな人に会話の流れでステータスを聞いてみたんだ。そしたら体力の高さが強みである戦士職でも高い方で700〜1000くらいで、魔力が強みである魔法職でも250〜300くらいが1番高い方だって知ったよ。つまりは僕は規格外。ハァ、罪悪感ハンパないよ。今までこのステータスに助けられたことはあったけど、僕がこんな力持っていて良いものかと時々悩むんだ。」
「汝は初めて会うた時感心する程の楽天家だと思ったのだが、常にそういう訳では無いのだな?」
「ネット小説に登場する同じ境遇の主人公をタツリはいっぱい見てきたでしょ?今いる此処とは違う異界の地に飛ばされ、ついでに非凡な才能も授かって未知に溢れた世界でもなんとかやっていけてます。こんな好待遇に何を罪悪感を抱くことがあるの?」
「・・・・僕は、これだけのステータスを与えられる程の器じゃないんだ。ある物事を使用・管理・制御する為にはそれ相応の実力、及び資質が伴っていないと周りに悪影響を与えてしまう。僕はそれを恐れてるんだ。その例としてあげたいのが運転免許の事なんだけど。サキハは分かる?」
「あぁ、それなら分かるよ。鋼鉄の乗り物を動かすのに必要な国家資格証のことでしょ?」
「その通り。今から三年前僕は運転免許をとったよ、車を運転する資格を得たよ。だけど取った日から三年経っても僕は一切運転をしなかった。何故か?嫌なんだよ、怖いんだよ、事故起こして人や物を傷つけてしまうのが。気にすべきは車でぶつけた相手だけじゃない。一緒に乗るかもしれない身内の命も預からないといけないんだ。教習所に通ってた時、僕はたくさん教官に怒られたよ。決して故意にでは無いけど危険な運転をしてしまい教習所の中でも、実際の道路の中でも教官に止められ怒鳴られたり、交差点でエンジンストップを何度も起こしてしまったり。失敗ばかりですっかり自信が無くなった。そして思ったんだ。”僕はこの社会で当たり前に使われている文明の利器を、持って生まれた不器用さで社会に迷惑をかける怪物に変えてしまうんじゃないか?“って、つまりは事故を起こしてしまうくらいなら運転しないほうがマシだって思った。まぁかなりネガティブな事だとは自覚しているよ。でもそう言う方面でネガティブな僕だからこそ伝えたい。この数値はあまりにも大き過ぎる。もしこれだけの数値が与えられるならそれ相応の長い長い努力の積み重ねで得るべきだ。いきなり不相応な力を与えられても困るんだ。」
「汝の懸念はよう分かった。まとめると汝はこの世界にて相応の積み重ねをしていないのにこれだけの力が与えられた事に納得がいっていないのだな?」
「そうです。」
「うむ・・・言っておくが、この数値は非常に妥当なものなのだ。」
「・・・・・なんだって?」
「決して汝を特別強くするために贔屓したものではない。」
「いや、一体どんなカラクリでそんなことになるんですか?!」
「ならば図で説明しよう。待っておれ。」
道祖神様は僕のステータス画面を光らせると裏側に新たな文字を写し出した。裏面がくるりとこちらに向けられる。僕はその書かれた図の理解に少しばかり時間をかけていた。
[ステータスの割り振り]
『1G=80E』
HP:70(G)=5600(E)
MP:8(G)=640(E)(前世では精神力)
俊敏性:900km/h(G)=72000km/h(E)
「えーっと、この図は一体?」
「見ての通り汝のステータスの割り振りを記したものだ。数字の横にGと書かれているのが汝の前世でのステータス、汝の使う言葉で言い換えるならば現代日本でのステータスになる。一方でEと書かれているのがこの世界での汝のステータスだ。これも言い換えるならば異世界でのステータスになる。」
「この1G=80Eというのは?」
「それは1Gが現代日本で生きるのに最低限必要な値で、80Eがこの世界で生きるの最低限必要な数値だ。この図を解する参考に応用して欲しい。」
「はぁ・・・・。」
「さて、汝のステータスであるHP、MPそして俊敏性が前世と比べてどう変わっているのか分かるか?」
「えーっと、HPが70から5607に上がってて、MPは前世では精神力が魔力に変換されて8から640に上がってるな。あと俊敏性は900km/hから72000km/hに変わってる。ということはもしや、この世界に来て僕の能力値が全部前世の数値から80倍上がってるって事ですか?」
「いかにも。」
「ど、どうしてこんな数値に?」
「それはこの世界から汝の元いた世界にこの世界の人間を転生させる事が関わっている。」
「というと?」
「先に言うたようにこの世界で生きていく為には最低でも、平均の数値が80以上を超えねばならぬ。しかしあちらの世界にいる人間達の数値は誰もがその平均を下回っておる。そこで儂ら神がこの世界にあちらの人間を転生させる際にその者能力値を一律に元の数値から80倍に上げるという措置をするのだ。全員を平等に80倍にあげるのは生まれたばかりの幼子も命を落とした場合この世界に無事生まれ落ちる事が出来るようにだ。逆を言えばこちらから向こうへ転生させる際には能力値を80分の1に下げるようにしている。それを表しているのが一番上の方に書いてある1G=80Gだ。」
「そうしないと、この世界の人間があっちで生まれた際にあまりにも人外なポテンシャルを持って生まれて来てしまって、あっちの世界に悪影響を与えてしまう恐れがあると?」
「まったくもってその通りだ。転生は一方通行では決して行われない。そして二つの世界で個人の能力の優劣に圧倒的な差が生まれさせないためにこの仕組みを用いている。」
「なるほど。」
「そして汝、汝が車を運転できる器ではないという主張はこちらも理解した。しかしながら、汝が有しているこれらの能力値が妥当なものであり、汝はこれらの力を扱える器である事にはどうか納得して欲しい。確かにこれらはこの世界に生きる人間の平均値を遥かに上回っている。だが汝の前世で得た長旅の経験が、積み重ねられた努力がそのままこの世界の仕組みにのっとって変化しているだけに過ぎん。だから汝よ。自分が与えられたこの数値が自分には不相応だと悲観する事はないのだぞ。」
「ハァ・・・分かりました。これは妥当なものである事を受け入れますよ。」
「うむ、良かった。」
「道祖神様だったけ。それでながーい前座は終わりかな?」
「え、前座だったのコレ?」
「まさかタツリに”お前は自身をそう過小評価する必要はないぞ”、と諭すために呼び出したんじゃないんでしょ?だったらわたしを呼ぶ必要はない。わたし達を呼び出し長い前座を話したという事は本題はここからなんじゃない?」
「その通りだ。此度汝らに話したいのは雷神の事についてだ。今更だが汝よ。何故汝は雷神に会いたいと願う?」
「それは、単なる好奇心ですね。ステータスを見た時雷神の次に速いという表記を見た時、そんな神秘的でカッコいい存在がいるんだなぁって。僕は前世でそういうスピリチュアル的な存在にまつわる伝承とか逸話を幾度も聞いた事があってそれに憧れてたけど、神も仏もサンタも精霊も、雷神を含む龍族すらもこの目で見た事は無かった。でもこの世界で神様である道祖神様にも龍族であるオウルエさんにも会えた。もちろんサキハにも。」
僕の横にいたサキハがフッと笑ったのは気のせいじゃなくて事実である事を祈りたい。
「子供の頃の夢で終わるに過ぎなかった事が今叶っているんです。だから僕よりも速い相手である雷神が一体どんな相手なのか会ってみたいんです。」
「会ってどうする?」
「会って話すくらいですかね。倒したいという願望とかは一切無いです。」
「そうか。汝が会いたいというのではあれば好きにすると良い。がしかし、雷神はとても人間に対して友好ではないという事を覚えておいてくれ。」
「そうなんですか?人間嫌いとか?」
「そうだな。それ故に相対した時はくれぐれも用心せよ。あと汝の俊敏性の表記が変わっていたのに気づいていたか?」
「はっ!言われてみれば確かにそうでした。今までは雷神の次に速いと書かれていたのに、今書かれているのは72000km/hです。どうして数字に変わったんですか?」
「もう一度言うが雷神はあまり人間に対しては友好的ではない。下手をすれば汝は雷神に相対したその刹那に命を奪われるやもしれぬ。自身が命を奪われた事に気付くこともできずに。いずれにせよ汝が雷神と相対すれば、まず戦うことは避けられぬであろう。今のうちに汝と雷神にあるその力量の差はどれほどのものか教えておこうと思ってな。」
「そ、そんなに速いんですか?雷神ってのは・・・」
「最高速度は260000km/h。汝の3倍以上の速さを有しておる。今の汝ではとても対処出来ぬ速さだ。」
「・・・確かに圧倒的ですね。勝てないですか?」
「うむ。」
「というか殺されますか?」
「なにせ人間嫌いだからのう。」
「あ、あーーーーーーーーーーー、あぁ…」
「どうしたのタツリ。」
「やっぱ雷神に会うのやめよっかな〜って、」
「あら、やめちゃうの?」
「・・・・うん。」
「ぬっ?待つのだ汝よ。確かに戦う事は避けられぬとは言ったがそれでも」
「戦うものなんじゃないかって言いたいんですか?いやですよ。わざわざ殺されるかもしれない相手の所に行くなんて。好奇心が周りよりも高い僕でも流石にそこまで命知らずじゃありませんもん。」
「うーむ、汝だったらそれでも構わないと決意してくれるのを念頭に入れてその上で儂からも頼みたい事があったのだがのう、非常に残念だ。」
「頼み、ですか?えっ、もしやそれって!」
「うむ、汝に雷神を倒し」
「無理無理無理無理無理無理無理!ムリです、ムリ。死んじゃいますって。」
「最後まで話しを聞いておくれ。何も無策で討ち取りに行けと言うつもりはない。こちら側もそれなりの援助をするつもりだ。」
「こちら側ってまるであんただけの意思じゃないみたいな言い回しをするね。もしかして雷神を倒して欲しいと思っているのは別の誰かなの?」
「察しが良くて助かる。そう、これは儂ではなく儂の知り合いの八柱の神からの頼みだ。」
「どんな相手なんですか、その神様達は?」
「今から汝らをその神達が居る場所へ送りだそうと思う。ではな。」
「え、ちょっと道祖神様!まだ僕は引き受けるって言ってませんけどぉ〜〜〜!」
突然眩しい光に辺りが包まれ視界がぼやける。やがて視界が晴れると僕達は先程とは違う場所に居た。
満月に照らされかすかにその姿を見せる見覚えのある瓦の屋根の木造の建物。左右の方にはこちらを睨む険しい顔の二匹の犬の像、そして太い御神木、あとは後ろを向けば確定だ。
「やっぱりか。」
思った通り振り返ると鳥居があった。
「タツリ、ここがどこか分かるの?」
「うん。この場所は神社と言って、僕の故郷にある神に祈りを捧げる場所。教会とか神殿って言えば伝わるかな?」
「へぇ、ここがタツリの元いた世界か。ん?何か変わった音が聴こえる。」
「変わった音?なんか聴こえる?」
「ほら、グワッグワッグワッってのと、リィィン〜リィィン〜って二つの音が。」
「あぁ、それはグワッグワッの方はカエルの鳴き声でリィィン〜リィィン〜の方はスズムシの声だね。」
「カエルって生き物が鳴いているのは理解出来たけど、スズムシの声?タツリにはこの震えるような高い音が言語として聴こえるの?それで、スズムシはなんて言ってるの?」
「ハハ、ごめん言葉が足りなかったよ。僕の故郷であるここ日本では、スズムシなどの虫が羽を擦り合わせて音を出すことを虫の声と表現するんだよ。この世界の多くの人達はこの音を”雑音”として認識していて、僕みたいな日本人という人種がこれを”声”だと認識しているんだ。」
「となるとタツリ達ニホンジンってのは虫が羽を擦り合わせる音を声だと思うの?」
「そうだね。これは虫達の声だと思う。というのもこれは虫達が仲間同士で意思疎通を図る為の手段らしいからね。人間が喉から声を出す、動物が鳴くだけに限らず、それが意思疎通を図る為の行動なら、それはその生き物達の”声”だと思うよ。」
「なるほど、そういう解釈もあるか。ところで、わたし達に話のある神達はどこにいるんだろうね?」
「あぁ!そうだった。そういえば姿が全然見えないや。ここにはいないのかな?」
その時だった。
[こちらへ・・来い。]
突然渋い男の声が頭に響いた。
「これはもしかして僕達に話がある例の神様の声?」
[本殿に、来い・・・・]
「ホンデンって言ってるみたいだけど分かる?」
[はやく、来い・・・・]
「あぁ分かるよ。目の前にある建物の奥だ。でもあそこって立ち入り禁止なんだよなぁ。そんなことしたら罪に問われるんじゃないかな。」
[気にせず、来い・・・]
「気にせずって言ってるし入ろうよ。」
「そう?いや、でもなぁ。」
[はよ来いやぁ!]
さっきとは別の声が早く来るように催促してきた。
「うおっ!びっくりした。」
「声の主はお怒りのようだから、行こ行こ。」
「分かった。」
僕はホントにこれで良いのかなと思いながらも本殿に向かった。本来人が入れるのはたった今僕が通り過ぎた賽銭箱のある拝殿という場所。そこ通り過ぎてさらに奥へ行くとあるのが各神社の神々が鎮座する本殿という場所。つまりは建物の中に入るという事なので僕は前世で体に刻み込まれた日本人としての習慣を本殿の前にある戸の前できっちりとこなすのである。
「ん?ホンデンに入る時って靴を脱ぐんだ。」
「本殿に限らずだね。普通の家の中でも日本人は靴を脱いで生活する習慣が根付いているんだ。特に畳という作りのものだと、土足で入るのは良くないね。靴についた泥で汚してはいけないのが理由かな。」
「ってなるとわたしは入れ無さそうだな。」
「そっか、サキハは車体だから・・・。じゃあ浮いたら?上に引力働かせてさ。」
「そうだね。」
そうしてサキハも浮きながら拝殿を通りすぎ本殿の戸の前まで来た。そして僕がある程度両輪についた泥を落とすと両開きの戸を開けた。すると中は体育館よりも広く奥が見えない程どこまでも広がっている空間で、とても小屋のような外装からは考えられない作りをしていた。空間全体には薄いもや、そして下は床でも畳でもなく枯山水。靴下とは言えこれで踏み入れるのは敷き詰めた小石の角が足に刺さって痛いのではと思ったが意外と平気だった。それから僕達はとりあえず奥へ奥へと進む。するとその途中涼しいそよ風が頬を撫でるとそれは同時に辺りのもやを晴らし満天の星空を見せた。おぉ、こんなにも美しいの一言でしかこの感動を表現出来る星空を見れる機会は今まで無かったなぁ。これで星座の場所やどこにどの惑星があるのか分かっていたらもっと楽しめたのに。すると突然ピカッと激しい枝分かれした形の光が見えたかと思えば、それは次第に一筋の光になり、やがて神々しく煌びやかに光る龍の姿へと形を変えた。
「ようやく来たか。イズコタツリよ。」
その低くて少し威圧感のある腹に響くような声はまさしくゴロゴロと聴こえる重々しい雷鳴のよう。見た目は威圧感がありながらも親しみやすいオウルエさんとは対照的だった。
「あなたが僕達をここへ呼んだのですか?」
「いかにも、我は八雷神が一柱、大雷神。」
八雷神!?日本神話に登場するイザナミの体から生まれた”八柱の神々”?そしてこの大雷神はその中でも最も強い力を持つ一柱だ。それが一体なんで?
「ど、どうも。それで今日はどういったお話しで?」
「その前に、他の雷神も紹介しよう。皆、出て来い。」
大雷神様がそう言った瞬間、地面に激しく太い雷が落ちると雷の中から橙と緑の龍、落雷で地面に付いた一瞬の火炎の中から紅い龍、雷が直撃し爆破した地面から黄色い龍、遅れて聴こえて来た雷鳴と同時にまた紫の龍とそれぞれ色の違う龍が現れた。
「紹介しよう。橙色が析雷、緑が若雷。こちらの紅のが火雷、黄が土雷、紫が鳴雷だ。」
おぉ、みんな登場の仕方がかっこいい。落雷と共に登場、いかにも雷神って感じだ。あれ?でも・・・
「あのぅ、大雷神様。」
「ん?如何した?」
「僕の勘違いでなければなんですが後二柱の雷神様はどちらに?」
「あぁ、またあいつらは・・・。少し待っておれ。おい、鳴雷。」
大雷神様は鳴雷神様に目配せをした。すると鳴雷神様はそれに頷き大きく息を吸い込むと
「こらあぁぁぁぁ!!!!伏雷!黒雷!大雷が呼んでるぞ!早う来んかい!」
腹にも心の臓にも響く程のけたたましい声が、空間全体に響き渡る。まさしく彼は雷親父の第一人者と言うべき存在だ。
あ、そうか。なんか聴き覚えのある声だと思ったら、さっき僕らに怒号をあげた声の主は鳴雷神様だったのか。
その時だった。満天の星空を覆い隠すように黒い雷雲が現れ、そこからヌッと黒い龍が頭だけをのぞかせて口を開いた。
「騒がしいぞ鳴雷。そんなに叫ばんでも良いだろうが。のう、伏雷?お主もあのうるさいだけの霹靂になんか言うてやれ。」
数秒の静けさの後、黒雷神様は雷雲の中に向かって耳を澄ませて何ならうんうんとうなづいている。そして顔をこちらに戻すとこう言った。
「今宵、帰り道くれぐれも用心しておけだとさ。」
あ、伏雷神様怒ってる。こりゃ鳴雷神様を闇討ちする気だ。
「なんだと伏雷、その身に噛みついてここへ引きずり出してやろうか!?おぉ!?言葉通り雲隠れしているお前は身だけでなく精神も青く未熟だなぁ。」
それに対し再び黒雷神様がうんうんとうなづいて伏雷神様の話を聞いていた。
「お前が引きずり出す前にお前のその怒号を息の根と共に止められるだとさ。」
「いいだろう!我がお前に噛み付くのが先かお前の稲妻が我の身を焦がすのが先か決めようではないか!」
「伏雷、鳴雷、止めぬか!大雷の御前だぞ!」
このビリビリとした場の空気感に痺れを切らし雷を落としたのは火雷神様だった。
「くっ、火雷・・だが元あと言えば伏雷が、」
「いいからひとまず口を閉じろ。伏雷も降りて来い。それと黒雷、本来ならばお前が伏雷をそこから出すべきなのだからな?」
「はぁ、悪かった。ほれ伏雷、静かにして欲しいなら降りて来いだとさ。雲も消すから。ほら、出た出た。」
黒雷神様がそう言うと彼の後に続くように青の龍が姿を現した。全員が揃ったことを確認したのか大雷神様は再び口を開いた。
「はぁ・・・・黒雷と伏雷が無作法ですまない。それで道祖神から少しばかり話は聞いていると思うがタツリ、そして闇の精霊サキハ。お主らにはあの世界にいる雷神と呼ばれる龍に会って欲しい。」
「うーん。いきなりそんなこと言われたって」
「まずなんでわたし達に会ってほしいのか、会ってどうしてほしいのか、なぜわたし達を選んだのか理由を言ってもらっても良いかな?」
「ふむ、そうだな。順を追って説明しよう。まずあの雷神と呼ばれている龍は我らが加護を与えし眷属で名はアルブと言う。お主らが今いるシワナノ地方からずっと南西の所にある荒れ地に棲まいし白龍の娘だ。アルブは生まれて間もない頃引っ込み事案で病弱だった。それを見かねた我らは同じ雷の力を持つ者としてあの子を手塩にかけて長い間育ててきた。次第にアルブはすくすくと育ちそれはまぁ元気に育っていった。そしていつか我らのようになると目を輝かせて我らに言っておった。だがそれから数百年が経った頃、アルブの様子が豹変してな。我らの誰かと顔を合わせたりこちらから話し掛けると”鬱陶しい、触れるな、臭う”などそれはもう棘のある口調で我らの胸を抉る事を言うのだ。」
「それ反抗期ってヤツなんじゃない?ねぇタツリ?」
「うん、僕もそう思う。自分の事は自分で決めたい気持ちが強くなって家族に干渉されるのが嫌なんですよ。多分。」
「ふむ我らもそう思っておる。少し寂しいが、子が成長するのには必要な過程なのだろう。だからこそ我らはあの子に話しかけられない。だがタツリ、お主ならもしかしたらと思うのだ。」
「それはなぜ?」
それに答えてくれたのは今まで口を閉じていた若雷神様だった。若雷神様は爽やかな好青年のような声で僕に言う。
「それはタツリがあの世界で最もあの子に近しい速さを持っているからだ。」
「え?」
「アルブは私たちの加護と持って生まれた雷の力から成されるその速さに強い誇りを持っていると同時にあの子は自分に等しい実力を持つ相手を追い求めている。要するに自分という存在をぶつけられる存在を探しているんだ。あのようになってしまったのは未だにその相手が見つからないからかもなぁ。よってあの子の心を開かせるには速さがあの子以下かあの子と同等か、あの子より少し上か。このいずれかの条件を満たしていないといけないと思うのだ。だがそのような相手はあの世界にはいなかった。同じ龍族でも、他の種族でも、アルブの速さには着いていけないし、かくいう私たちもあの子にとっては強すぎる。」
その若雷神様の発言に交代するように次に口を開いたのは土雷神様だった。土雷神様は縁側でお茶を飲むおじいちゃんのような声色で僕達に言う。
「そんなある時、あの世界にアルブの次に速い人間が転生して来たと道祖神から話を聞いたのじゃ。それが其方じゃタツリ。人間という龍とは掛け離れた生き物でありながらも、あの世界で生きていく為の措置を受けて力が底上げされているとはいえそれほどまでに人並み外れた速さで動けるのはわしらの知る限り其方だけじゃ。その速さはまだまだあの子に及ばぬとはいえあの子に近しい程の力を有しておる。そしてそっちの闇の精霊が宿っている自転車はあのオウルエの加護によって簡単に壊れないようになっているじゃろ?その状態でお主がその自転車を漕げば今の限界以上の速さを出すことができる。さすればあの子との差を埋める事も無理な話ではない筈じゃ。」
「つまりまとめると。一つ、タツリに目をつけたのは道祖神という伝手があったから。二つ、そのアルブって奴に相手してもらえる可能性があるのが、あるいは当てになるのがタツリだから。三つ、オウルエの加護によって強化されたこいつをタツリが全力で漕げばアルブの実力に匹敵すると見込みがあるから。それがタツリを選んだ理由。そしてわたし達にやって欲しいのはアルブと戦ってほしいって事だね。」
それに返事をしたのは大雷神様。
「そういう事だ。」
「悪いけど断らせてもらうよ。わたしは勿論のことタツリ本人もアルブと会う事を嫌がっている。道祖神に聞いたけど人間嫌いなんでしょ?」
「あぁ。」
「やっぱり駄目だね。向こうは出会うなり殺そうとしてくるかもしれない。なら例えタツリが同等の速さを身に付けても相手にしてもらえる可能性は低い。それにわたし達がそれを引き受ける理由が見当たらない。アンタ達には自分達の希望を話すだけで交渉しようとする気が全く見られない。こっちはなんでもかんでも引き受ける程お人好しじゃないよ。どうしても引き受けて欲しいんだったらそっちは何を差し出せる?」
「それならば私たちの加護を其方達に」
「ならぬ若雷。」
「しかし大雷、この二人に差し出せるのは私たちの加護しか」
「仮に我らがこの者達に加護を与えればその力に耐えきれず体が崩壊してしまうわ。我が知る限り我らの加護に耐えうるのはアルブだけだ。」
「うっ、確かに・・・」
「交渉は決裂だね。というわけで大雷神。私たちを元いた場所に戻してもらえるよう道祖神にも伝えてくれないかな?時間の無駄だったって文句も言いたいし。」
「分かった。こうして話を聞いてくれる時間を設けて貰っただけでも嬉しく思う。では」
「待った。」
話が交渉決裂にまとまり僕達が去ろうとした時、それに待ったをかけたのは析雷神様だった。その声に全員の視線が集まる。
「どうした、析雷?」
析雷神様の隣にいた若雷神様が聞いてくる。
「今思いついたんだが、お前ぇらを旅立ったあの村から一番近い街まで飛ばすってのはどうだい?それが交渉材料って事で。」
「その街に何かあるの?」
「あぁきっとお前ぇらが喜ぶ物があるさ。街の名前はヴァトエルドルラ。お前ぇなら知ってんじゃねぇか闇の精霊?」
「”ヴァトエルドルラ”?本当にそんな所まで飛ばしてくれるの?」
「あぁ、もし今回の頼みを引き受けてくれるんなら俺様が直々に道祖神に掛け合ってくるぜ?」
「・・・・分かった。道祖神が了承次第、依頼を受ける事にするよ。」
「ちょっと、サキハ!」
僕が引き受けるのを止めようとするとサキハ小声で僕に言った。
「タツリ、この依頼は引き受けた方がいい。今は訳を説明出来ないが今は飲み込んでくれ。」
「・・・分かったよ。」
サキハにそう諭され僕はそう返事をした。僕はまだ彼女に会って数ヶ月しか経っていない。けど、今までの経験上彼女は無理だと思う事に首を縦に振る事は無いはずだ。きっとサキハには何か考えがあるんだ。
「じゃあ早速道祖神にこの事を伝えに行って来る。待ってな。」
そう言い終えると、析雷神様は全身から一瞬雷光を放ちふわっと消えてしまった。
「本当に感謝する闇の精霊よ。」
大雷神様がサキハに頭を下げながら感謝の言葉を告げそれに続いて他の雷神様も同じように頭を下げた。最初は反りが合わない同士なのかと思っていたけれど、アルブさんを想う気持ちは同じなようだ。そっぽを向いている伏雷神様を除いて。
「まだ引き受けるとは言ってないよ。道祖神が今の話を受けてくれるか次第だ。という訳でしばらく待たせてもらうよ。」
「うむ、好きなようにくつろいでくれ。おい、土雷。」
「おぉ、ちょいと待っておれ。ほいっと。さぁさぁ、待ってる間これでもつまんでくれ。」
すると土雷神様はどこからともなくどら焼きと煎茶を持ってきた。あとついでに座布団も。僕は座布団に腰掛けると土雷神様が地面に置いてくれたどら焼きを手に取った。
「いただきます。」
ぱくっと一口。うん・・・・・久しぶりだなぁ、このふっくら生地となじみのある餡の香りと食感。そして断面を見ずとも分かるぞ。栗も一粒入ってるな。涼しい風に虫の声、栗の入ったどら焼きを一口食べて温かい煎茶をすする。うーむ、秋を感じるなぁ。僕は目閉じると、二度と味わう事が叶わぬはずだった秋の味覚と故郷の秋そのものを今噛みしめていた。
「幸せそうだねタツリ。そんなにそれ美味しいの?」
「あぁ。これも美味しいけど、秋そのものを感じることが出来て嬉しいんだ。」
「季節の訪れに喜びを感じるんだ。それもニホンジンとやら独自の物なの?」
「うーんはっきりとは分からないなぁ。あ、そうだ。」
「ん?どうしたの?」
「僕さ、秋が恋愛対象だった事があるんだ。とは言っても数年前の話なんだけどね。」
「・・・・・・・は?」
「アハハッ、ごめんごめん。今の忘れて。」
「いや、もっと深掘りしたいなその話。聞かせてよ。」
「え〜?自分から話し始めたけど、なんか恥ずかしくなってきたよ〜。」
「いいからいいから、話してみてよ。」
僕はサキハにだけ聞こえように出来るだけ小声で話すことにした。
「分かったよ。数年前(高校生の頃)、僕は恋愛というものがしたかった。好きな子もいた。何度も何度も話しかけてアプローチしていたつもりだったけど、異性としては見てもらえなかった。告白したけど結果振られたよ。その後好きな人が新しく2人ほど出来たけど、ダメだった。そうして好きな人に振られまくってもう誰も好きにならない方がいいのかもしれないと落ち込んでたあの日もこんな秋だった。雨に冷やされた肌寒い空気、雨に濡れた落葉と針葉の香り、夏のようにむせかえるような暑さも、冬のような凍り付くような寒さでもない。ちょうどいい肌寒さの季節。紅葉と一緒に見る川や滝は絵になるし、食欲の秋と言われるくらいに数豊富な野菜や果物、あったかい汁物系の料理が美味しく感じるんだ。僕は鮭っていう白身魚と大根っていう根菜を使った鮭大根ってのが好きでね。前世ではよく作っててね、これが美味いんだよ。」
僕は自分の言いたいことを言い終える前に湯呑みの中で冷めていたお茶を飲み干した。そしてふぅとため息を吐いて続けた。
「とまぁ秋の良い所を言ってきたわけだけど、要するに僕はそれだけの恩恵を与えてくれるこの季節が好きになってたんだ。一年に二月しか来ない秋という存在に。秋に近い夏の終わり頃になるとより一層待ち遠しくなっていたんだ。早く秋が来ないかなって。そして思ったんだ。これって秋に恋してるんじゃない?ってね。」
「ずっと過去形で話してたけど今は違うって事?」
「そうだね、今は憧れの存在かな。僕は恋人が出来たらいっぱい話したい。だけど秋に意思は無いから恋愛対象として見ることが出来ない。でも僕が秋から毎年いっぱい恩恵をもらっているのは嘘じゃない。そんな相手に憧れ、もしくは尊敬の念を抱くのはあってもおかしくはないと思うんだ。」
「ふーん。秋という自然界の概念に恋をするのか。そういう人間もいるんだね。」
「今となってはもう昔の事だけど、かつてこの世界にあるカリブ海という海を支配していた悪名高き賊の初恋の相手は海だったと言われているんだ。」
「うーん、その賊はなんで海に恋したんだろう?」
「さぁね。多分だけど海はなんでも受け入れてくれる包容力ってのを本人は感じたんじゃないの?僕が秋を憧れの存在として見ているみたいに。」
「それも恋なの?」
「その相手が気になって仕方ないとかそんな気持ちを抱きつつも会えない状況にいるから寂しいなぁって気持ちが世間一般で言う恋だとは思うけど、僕やその賊みたいに相手が人ならざるものだったとしてもそれは一種の恋だと思うよ。」
「それって、わたしも入るの?」
「え」
突然の思いがけない問いにどもってしまっているとそのタイミングで稲妻と共に析雷神様が戻って来た。
「待たせたなぁ!話をつけてきたぜ・・・・・ってタツリ、どうかしたか?」
「えっ、あいやっ・・その〜」
「なんでもないよ。それで道祖神はなんて?」
その問いに析雷神様は笑顔で答えた。
「ヴァトエルドルラへの送迎、問題無いらしいぞ!良かったなぁ闇の精霊?」
「そうか。」
「・・・・という事は?」
「あぁ、交渉成立だね。雷神アルブの件わたしとタツリで引き受けよう。」
「ガッハッハッハ!ありがとさん、恩に着るぜ!」
「じゃあ早速道祖神の所へ行きたいんだけれど?」
[その必要は無い。]
その声と共にと神々しい光がふわふわと枯山水に降り立った。道祖神様だ。
[闇の精霊サキハ、此度の件引き受けてくれた事に儂からも感謝する。]
「どういたしまして。それで本当にわたし達をあの街まで送ってくれるの?」
[あぁ勿論だ。此度の頼みを引き受けてくれるとあらば汝らを無事あの街、ヴァトエルドルラに送り届けよう。]
「そう、それを聞いて安心したよ。」
二人の会話をよそに僕は一人で一番憂鬱な気持ちになっていた。
ハァ、めっちゃ嫌だなぁ〜。行きたくないなぁアルブさんの所。前世で絶対に行きたくなかった歯医者、予防接種、面接が今になって可愛く思えて来たよ。
「おい人間くん。聴こえるか?」
そんなことを考えていると突然僕の脳内に声が聞こえてくる。ふと周りを見渡すと何かを訴えかけるような目で見てくる雷神様が一柱いた。伏雷神様だ。僕の脳内に語りかけているという事は聞かれたくない話なのかもしれない。ならば僕も念話を送ろうと思う。届くかどうかはわからないけど。
(どうしました、伏雷神様?)
(おう、なんとなく分かるとは思うがこの会話は僕と君しか聴こえないようになっている。このようにしているのは君に伝えておきたい事があるからだ。)
(僕に?なんですか?)
(もしあの子に、アルブに会う事になったら・・)
それから僕と伏雷神様はサキハと道祖神様が話終えるタイミングを見計らって、二人が話し終えたのを確認すると同時に話を切り上げた。途端にサキハがこちらを向いてくる。
「タツリ、行くよ〜。」
「うん。」
普通だったら「伏雷と何話してたの?」と聞かれるだろう。しかし彼女はそれを聞いてはこない。それはサキハが僕と伏雷神様の会話に興味が無いとか、サキハが道祖神様との会話に夢中になっていたからでもない。伏雷神様は地上の僕に近づく事なく空中でずっと僕に語りかけていたからそこには結構な距離があった。だから客観的に見て僕らが会話しているようには見えないのだ。
それにしても伏雷神様がまさかあんな事を僕に頼むなんてなぁ。戦うより難しいよ、あれは。全く道祖神様といい、他の雷神様といい、無茶言うなぁ〜。サキハもなんで急に引き受けたんだか分からん。
[では闇の精霊よ、汝の望んだ場所まで飛ばすぞ?準備は良いな?]
「うん、良いよ。タツリも問題無い?」
「うん、行こうか。」
神々しい光が辺り一面を包み込む。
[汝らの旅に幸があらんことを・・]
道祖神様の声が響くように聴こえてくる。今更ながらコレなんでだろう?エコー強めのマイクじゃないとこんな風に聴こえないよなぁ?あれかなぁ、神様達ってアーティストぶりたいのかな?歌番組とかでアーティスト達がトークする時マイクを持って喋ってたりするし。その可能性無きにしもあらず。
やがて景色がはっきりとしてくるとそこは先程までいた紅葉の彩る山々ではなく、見知らぬ路地裏だった。それも普通の路地裏ではない。空を見るに時間帯は日没の夜。だからこういう場所は昼夜で多少の差はあるものの光が当たりづらく薄暗いのはずなのだ。しかし僕達が今いるこの路地裏は明るい。それは街灯に照らされているからじゃない。街灯は無い。石造りの地面全体が青白く光っているのだ。耳を澄ますと地面から川のせせらぎのような音もする。そして靴越しにしみるように伝わってくるこの冷たさ、この青白い光はもしかして・・・
「水が地面に流れてる?もしかして洪水?」
「その答えは大通りに出たら分かるさ。行こう。」
そう言われサキハについて行き大通りに出ると水の流れは大通り全体に広がっていた。ただ違うのは上の方にぼんぼりの火袋のような形をした提灯が均等に幾つも飾られているという事。その灯火はパチパチと音を立てながら火袋からわずかに吹き出していた。これだけ数があるからその熱が伝わってくるなぁ。それにしてもあの火袋はなんで燃えないのだろうか?
地面に流れる青白い水、火袋から火を吹き出す街灯。これだけでも珍しいが僕が一番驚いたのはその大通りを行き交う人々だった。”赤い髪に赤い瞳”の人と、”水色の髪に水色の瞳”の人が何人もいた。赤は女性、水色は男性というふうに色で性別が分かれているわけではない。赤い男性も水色の女性だっている。
「サキハ、なんなんだこの街は?今まで行った街とは明らかに雰囲気が違うような気がするするんだけど?ここが析雷神様が言っていたヴァト・・なんとかっていう」
「”ヴァトエルドルラ”。ここは水の精霊と炎の精霊が共に住む街。地面に水が流れているのは炎の精霊が感情的に熱くなるのを防ぐために水の精霊が作った。街灯が熱いのは冷え症気味な水の精霊が凍り付くのを防ぐため炎の精霊が作った。ここにいる精霊達は互いの弱さを互いの強さで支え合っているんだ。」
「おぉ・・・・」
精霊の街・・・か。なんてロマンがあるのだろうか!精霊が住む街という事自体にも惹かれるというのにそれよりも魅力的なのがこの街の雰囲気!熱い街灯と青白く光る水。どちらも夜だからこそこれだけ幻想的に、まるで夢の中にいるみたいに見えて、息をするのも忘れる程にうっとりしてしまう程に美しい。
「ほら、呆けてないで行くよタツリ。」
「え?あ、あぁ。ごめんごめん。」
僕はサキハの後ろを歩いて大通りを歩いた。通り過ぎていく建物をキョロキョロと見渡すと皿や壺、調理器具などの生活用品が売っている店。剣や盾などの武器が打たれて、並べられている鍛冶屋。ネックレス、イヤリング、ブレスレットや指輪などがあるジュエリーショップと人間の街とはあまり変わらないようだ。
「ねぇ。」
「ん?」
「よく見るとこの街って工芸品が多いんだね。職人街ってやつかなぁ。」
「そうだよ、炎の精霊は体だけでなく熱血漢が多いからね何か打ち込めるものがあったら全力で取り組むのが多い。水の精霊は好奇心が旺盛で気になった情報や知識はなんでも取り入れたがる。その互いに違う傾向を利用してこれだけの街を作ったんだ。性質上互いに打ち消し合う存在が双方活かし合ってこの街を支えている。その事からここは”水明火発の職人街”とも呼ばれているんだ。」
「水明火発の職人街か、凄いなぁ。あ、そういえばサキハ。どうしてこの街に来ようと思ったの?」
「それはね、タツリの持っている炎天下・黒い舞姫を持ち主に返すためだよ。」
「持ち主?この街にあの短剣の持ち主がいるの?」
「うん、正確には作り主かな。」
「え〜返しちゃうんだ、あれで肉焼くの気に入ってたのに。」
「それはわたしも気に入ってた。でもあれを持ち主に返せばもっと良いものがもらえるかもしれない。」
「もっと良いもの?」
「ヴァトエルドルラは職人街、特に武器の出来にはこだわっていてね。凄腕の鍛治師が多い。炎天下・黒い舞姫を作ったのもこの街にいる精霊の鍛治師なんだ。」
「という事は、もしかして!」
「そう、炎天下・黒い舞姫を対価とすれば新しい神器を手に入れられるってわけさ。」
エピソードの中で書けなかった事 ”4選”
1:タツリの体力が70から5607と中途半端になっているのは神様達からの「おまけ」です。老舗の飲食店で店員さんがやる「お嬢ちゃん可愛いから〇〇一個おまけしておいたよ〜」的なノリです。
2:タツリがどら焼きを食べるシーンがありましたがどら焼きに使われていたのはこしあんです。みなさんは「つぶあん」と「こしあん」どちらが好きですか?僕はどら焼きだったら「つぶあん」。大福だったらこしあんがいいです。いちご大福との相性が良いと思うので。
どら焼きで「つぶあん」が好きなのに「こしあん」の設定なのは、書いてた時こしあんの気分だったからです。
3:水明火発という言葉は水と火の美しさを表現する言葉無いかなぁ〜って探してたら見つけた言葉です。水の流れる様子と火の燃え上がる様子を表しているみたいです。
4:タツリの前世での最高時速は時速900kmだった!
調べると1秒で250m進めるらしいですね。オリンピックや陸上界を追放されるくらいの実力ですよね?(褒め言葉)。この世界での時速72000kmはマッハ58・8。走ったら風圧でビル壊れるらしいです。




