47話 どんなものでも "役に立つ” か ”役に立たない” かは、その人次第です・・・
デンジャラスな坊主から逃げ、またも全力で走る威流。
「あぁ、もう!!こげちゃんの馬鹿っ!!」
慎重に行動すれば、この恐怖体験は起きなかったはずだ。
こげちゃんの無警戒ムーブにもっと注意を払うべきだった。
そんな威流の後悔を他所に、こげちゃんは楽しそうにしていた。
いつも驚く事があるとすぐに漏らしてしまうこげちゃんが、
今回はお漏らしをしなかったのが腑に落ちない威流。
それもそのはず、こげちゃんは戦いだったと認識していなかった。
目の前で起きた ”石を弾き飛ばず男” や ”吹き荒れる風に抗う男” など、
アミューズメントパークで行われる刺激的な見世物とでも思っていた。
当然、こげちゃんがそう思っている事など威流には分かるはずも無く、
またあの坊主共に遭遇したら”見世物のお兄さん”と思って、
勝手に駆け寄ってしまう危険性があった。
「あの人達には近づいちゃダメだよ~」
威流がこげちゃんにお願いすると、
こげちゃんは「キュッ!!」と鳴いて返事をする。
その返事が ”もう一度同じものが見たい” という意味なのは、
残念ながら神様でもないと分かりようがなかった。
「それにしても、あの山賊みたいな見た目の僧侶はなんなの?」
僧侶だからスキンヘッドてのは、なんとなく理解は出来るよ。
けど、その頭とか腕が傷だらけな上に筋骨隆々の身体、
”洋食屋のシェフかっ!!”ってぐらい日焼けもしている。
きっとあいつは、元盗賊とか山賊だと思う。
威流の日焼けしてる人の代表が”サーファー”や”ギャル”ではなく、有名だけど稀有な例であったのは、おかしなバラエティ番組ばかり見ていた影響である。
「そういえば、もう一人のクレイモア持ちと何故やりあってたんだ?」
突然森から出て来たかと思えば、いきなり山賊僧侶を止めてたな。
「どんなタイミング!?」って感じで森から飛び出てくるものだから、
背中にライトニングボルトが直撃してるし、金属重ねて電気流しちゃうし。
そのせいであの山賊僧侶が感電して怒ってた。
情報が渋滞してるのに怒鳴るから、一瞬頭が真っ白になったよ、まったく。
「それにしても、我ながら機転の利いた見事な対応だった」
二人同時に来た時はどうなる事かと思ったが、
いかに屈強な人間であろうと突風の前にはなす術が無い。
台風中継のレポーターとかお笑い芸人の実験とかでも、
強い風に抗うのは不可能であると証明されている。
威流は魔石の応用方法を色々模索していたが、
そのアイデアは、テレビやゲームで見た ”何か” である事が多かった。
無駄そうな知識が意外な所で役に立つ事もあるんだなと威流は実感する。
「本当に誰だよ。テレビとかゲームが時間の無駄になるって言ってる奴」
こんなイレギュラーな事態で無ければ、
そこまで役に立ってはいないという事実を忘れてしまっていた。
威流はそのまま走り続け、池の広場まで戻るのであった。
その日の夜、村は襲撃を受ける。
現れた敵は ”骸骨兵” と呼ばれる、死んだ人間の骨を集めて怨霊を宿らせ、
創造主の傀儡とする、禁忌の術で造られた魔物であった。
アーク司教を筆頭にマティオンやティキン、ゴーレム(?)僧侶や、
大斧を持った僧侶の”ビーフィー”と棘付き棍棒の”ポーキー”の奮戦により、
死者は出なかったものの、村人に被害が及んでしまった。
このことで、威流が襲撃犯であるという僧侶達の疑惑が確信となってしまう。
ただ一人、ティキンを除いて。
襲撃が終わってから幾分かの時が経った頃。
村から歩いて半日ほど離れた薄暗い森の中。
街道からも村からも離れ、人が立ち入る事が無いこの鬱蒼とした森に、
大型の猛獣の住処となっている洞窟があった。
だが、その洞窟中には獣の姿は無く、
悪臭が漂い、汚物に塗れた悍ましい場所となっていた。
その洞窟の奥には本来の宿主であった物が転がっており、
蛆が湧き、死臭を放っている。
吐き気と眩暈を覚えるこの空間で、作業に熱中する一人の男が居た。
作業の手を止める事無く、男は骸骨兵に問いかける。
「おい、材料を調達してきたのか?」
その問いかけに反応を見せない骸骨兵。
「まさか、なにも取ってこれなかったのか。この役立たず共」
男は手を止めて骸骨兵に近づき、手に持っていた工具で頭を殴りつける。
殴られた骸骨兵の頭部の骨は砕け散り、その空洞だらけの身体から怨霊が抜け出ると、人の形を成していた骸骨兵は崩れ落ち、ただの骸に戻っていった。
他の骸骨兵は立ち尽くし、命令を待っている。
「作品の完成間近だと言うのに・・・。
この屑共が、さっさと材料を調達して来い」
そう吐き捨てると男は作業に戻り、
骸骨兵は必要な材料を探しに洞窟から出ていく。
黙々と作業を進めていた男はふと考える。
「そうか!!材料収集がてら、こいつを試してみてもいいんじゃないか」
洞窟内に男の高笑いが響く中、
どこからか、呟きにも似た呻き声が漏れる。
「・・・・リー・・・・・リリー・・・・」




