10話 嘘か本当かなんて、案外どうでもいい事・・・
程なく白い鯛焼きが出来上がり、それを受け取った威流。
もしかしたらと思い、店主に声を掛ける。
「もしご存じでしたら教えて欲しいのですが、
この公園に神様を祀ったお社に心当たりがありませんか?」
「ああ、しらがみ様のことでしたら、この道を真っすぐ歩いていったら、
右手に見えて来ますよ」
そう言って屋台から身を乗り出して、その方向を指さす。
「ありがとうございます、すいません、色々とお手間をお掛けしました」
丁寧にお辞儀をし、指定された方向へ歩き出す。
威流は歩きながら、鯛焼きを1つを頬張る。
「もう食べるのか、むぐっ」
ついでに、蓮の口にも鯛焼きを1つねじ込む。
数分歩いたところで、草むらの中に古びたお社らしきものを見つける二人。
「蓮、あれじゃないか?」
蓮の返事も待たず、お社に近づいていく威流。
「なんか、思ってたよりも小さい感じだな」
蓮の言う通り、そのお社は犬小屋程の大きさしかない。
二人がしゃがんでみると、そこには石を彫って作られた白い魚の像が祀ってあった。
「さっき”しらがみ”様って言ってたのは、白い魚の神様だったんだな」
威流は鯛焼き屋の店主の言葉を思い出す。
「魚の神様のお供えに鯛焼きってのも、どうなんだ?」
「白い物ならなんでも良いって言ってたから、いいんだよ多分・・・」
威流は手に持っていた白い鯛焼きを、像の前にそっと置いた。
しゃがんだままの体勢で、目を閉じ手を合わせ祈る威流。
蓮は立ったまま、手を合わせて祈る。
目を開け立ち上がり、蓮の様子を伺うと、まだ両手を合わせていた。
その間、威流は、改めて白い魚の像をよく眺めてみる。
素材に使われている白い石材や、目や鱗などその1つ1つの造りに製作者の拘りが感じられる。製作者にとってこの白い魚は信仰の対象であり、神としての神聖なものだったのだろうか。
「さあ、もう行こうぜ」
いつの間にか、お祈りを終えた蓮が威流に声を掛ける。
「そうだな、休憩時間も過ぎてることだしな」
悪びれてるとは思えない笑顔を見せる威流。
「威流、こういうことは仕事が終わってからにしような」
「まあ、そうだな。 とは言え、意外に楽しかったろ」
「何言ってんだよ、威流に付き合ってると気苦労が絶えないよっ、ほんと」
「何を大袈裟な。そういや蓮も神様に手を合わせてたけど、何か願いごとでもあったのか?」
「ああ、勿論。威流がアホな願いごとをしても叶えないで下さいって、
強く念じておいたから、”彼女が欲しい” とかまともな願いじゃなければ叶わないかもな」
「蓮、お前なんてことを」
「どうせ、病気にしてくださいとか、お願いしてたんだろ」
「違います~、何かしらの理由で仕事を休めますようにってお願いしました~」
「何かしらって、病気以外にどんな理由で休めんの?」
「えっ、会社に隕石が直撃するとか?」
「やる事が物騒過ぎる。願いの叶え方が破壊神」
「隕石はきっと・・・上からくるぞ!気を付けろ!」
「そりゃそうだろ、なんの注意だ」
「古より伝わる、注意の言葉だ」
「お前、たまによく分からない事言うよな」
「まあ、気にするな。取り敢えず、何か休みが取れそうな事があったら教えるわ」
「はいはい、期待しても無駄だと、早く気が付くといいな」
この後、休憩時間を大幅に超過していた理由を埋め夫に問われたが、
仕事のことを考えていたら時間が過ぎてしまったと威流は平然と嘘をついた。
蓮は心の中で”嘘をつくにしても、もっとマシな言い訳があるだろ”と思っていたが、埋め夫は、笑って許してくれた。




