9話 意味がありそうなことは、大体意味が無い・・・
かなり眉唾ものの神様の存在を知った威流と蓮。
だが、胡散臭さよりも好奇心?が勝ち、威流は既にその気になっていた。
「大将、なんかお供え物とかしたんですか?」
早速情報を聞き出そうとする威流に、
”うわ、こいつ行くつもりだ”と思っているのが表情に出ている蓮。
「実は、この話は私の父から教えてもらった話でして、
お供え物は白いものでなくてはいけないそうです」
「白いものですか、大将は何を?」
「公園の中に鯛焼き屋があるんですが、
そこの白鯛焼きをいつもお供えしてますね」
「白鯛焼きですか。ありがとうございます、私も立ち寄ってみようと思います」
”今、すぐだろ”と思っているのを表情に出さない蓮。
「そうですか、願いが叶うといいですね」
「ありがとうございます、願いが叶ったら大将にご報告させて頂きます」
そう言って威流は勢いよく席を立つ。
「大将、ご馳走様でした」
蓮は急いで会計を済ませ、威流の後を追う。
「待て、待て、待て、今すぐ行くつもりなのか?」
「そうだ、今すぐ行くつもりだ。心配するな鯛焼きは俺が奢る」
「そういう事ではないんだが。はぁ、もういいや」
「あっ、蕎麦ご馳走様です。そんじゃ行こうぜ」
蕎麦のお礼を蓮に伝え、そそくさと歩き出す。
店主に言われた通りに公園の中を歩きながらお社と鯛焼き屋を探す。
そもそも、何故詳しい場所を聞いてこなかったのかと思う蓮ではあったが、自由奔放な威流を見ていると、自分は心配し過ぎなのではないかと思うこともあった。
公園内を歩き回っていると”鯛焼き”と書かれた寂れた屋台が見つかり、屋台に近寄ってみると、中には店主と思われる大柄で白髪の老人が座りながら店番をしていた。
その老人の右目の”何かに引っ掻かれた”と思われる三本線の古い傷跡と鋭い眼光が、鯛焼き屋の店主のそれでは無かった。
屋台のお品書きには”鯛焼き 1つ 200円”と書かれおり、
どこにも白い鯛焼きについては記載が無かった。
話し掛けにくい雰囲気を醸し出す店主に、”白い鯛焼きありますか?”と聞いたら、「お前には目玉が付いていない様だな」とか言われそうで、威流がオロオロしていると、屋台の店主は立ち上がり声を掛けてきた。
「お客さん、以前にうちの屋台にお越しになられた事ありますかね?」
突然の質問と店主の迫力に少し狼狽えながらも、威流は答える。
「いえ、初めてです。蕎麦屋の店主に白い鯛焼きを売っているお店があると
聞いて探してたのですが」
「そうでしたか、私の知人に似た雰囲気を感じたもので・・・」
そう言う店主の顔には何かを懐かしんでいる様な、悲しんでいる様な、
そんな不思議な表情をしていた。
「白い鯛焼きでしたね、それは馴染みのお客様のみにご用意してる物なんです。
まあ、蕎麦屋の店主のご紹介でしたら、お作りしましょうか?」
先程とは違う、いかつい顔ながら穏やかな表情の店主。
「それでは、3つ、お願いできますでしょうか?」
「かしこまりました、少しお時間を頂きますね」
そう言って店主は白い鯛焼きを焼く用意をし始めた。
待っていたら、きっと休憩時間をオーバーするとは今更言えない蓮と、
最初から休憩時間をオーバーするつもりであり、もし何か言われたら、
倒れたおばあさんを助けていたと嘘をつこうと考える威流なのであった。




