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パラレル!  作者: 入羽瑞己
第五話 魔王と神の日常
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拾陸の世界①

拾陸の世界――神様の話――九鬼グループ総裁室にて


「随分と大胆なことをするな」

「何、こうすればみんな幸せだろ? 神様からのささやかな贈り物だよ」

「そうは言うが、あまり勝手なことはしてくれるなよ。監察官に睨まれるのもキツイ」

「あの子も心の中ではハッピーだろうがね。この世界に残る口実ができたんだから」

「だといいが」

 そこにいるのは白髭を蓄えて常に不機嫌そうな顔をしている老人。そして、リクルートスーツを身に纏って行儀悪く机に腰掛ける女性。

「全知の神だって、たまには遊んでみたい」

「その遊びに付き合わされる立場にもなってみろ」

「神様に遊んでもらえるんだ。光栄に思えよ」

「抜かせ。特異点対策とは言え、本来合流する予定のない平行世界の扉まで引き寄せて。監理する立場にもなれ」

血に飢えた女神(バースト)様は常に退屈でね。予定通りと言うのも面白くない。……まぁ、余所から来た身の程知らずに立場を追われるほどではないがね」

「ああ、今回はいつになく大人気なかったな。――いや、神様気(・・・)なかったとでも言うべきか?」

「正直余裕を持ちすぎたな。お前がさっさと対策を講じていればああはならなかった」

「『人』のせいか。あまり関心せんな」

「この世界を管理するのは人間だ。神は本来創造主に過ぎない」

「そんなことを言って、いつまで経っても『創造』と称して世界を統廃合しているのはお前くらいなもんだ」

「神様だって時に不完全さ。『人間』なんていう不完全な存在を世に放つくらいだ。できちまった世界の手直しぐらい、したくなるときもある」

「巻き込まれる方はいい迷惑だがな」

「おいおい、何のための『世界の管理者』だ? そこら辺をうまいことするのが仕事だろうに」

「そうやって大事なところは『人』任せ。嫌になるな」

「うだうだ言ってもお前の仕事は変わらない。……それじゃあ、そろそろ神様も『世界の住人』に戻らせてもらおうかな。あまりこの身体をいじめてやるなよ、気に入ってるのだから」

「善処する。給料は大幅にカットさせてもらうがね」

「……きゅ、給料大幅カットだと!? 何をしたって言うんだ、十兵衛!」

「何もしなかったことが問題なんじゃて、玉城よ。魔族の連中の報告漏れ、儂が全部対処したんじゃぞ? 家やら仕事やら……」

 そこにいるのは白髭を蓄えて常に不機嫌そうな顔をしている老人。そして、リクルートスーツを身に纏って行儀悪く机に腰掛ける女性。

 老人は秘書に向かってグチグチと説教を続ける。秘書は飄々としているが、流石に給料大幅カットのセリフを聞いて言い訳を重ねる。

 いつもの光景。いつもとまるで変わらない光景がそこで繰り返される――。

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