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パラレル!  作者: 入羽瑞己
第一話 爆ぜる。
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肆の世界②

肆の世界――結社の話――ヘルサターン本部にて


 イーーッ!

 イーーッ!

「いやぁ、見回りご苦労。異常は?」

「ないない。あるわけ無ぇよ。ってかこんなこと、アホらしくてやってらんねぇっての。侵入者つっても警戒されるのは、巨大ロボット有するカラフルな五人組とか、腰にやたらダサイベルト付けてバイクとか乗り回す改造人間とかだろ? でも、ぶっちゃけ言っちまえば……」

「口を慎めよ、戦闘員139号。幹部連にでも聞かれてみろ? 即座に主力怪人部隊への編入だぞ」

「うぇ!? やめてくれよ戦闘員134号。主力怪人部隊への編入って、左遷もいいとこだぜ。傷害手当や死亡手当は付かねぇわ、司令官クラスに改造手術されて爆死フラグ立っちまうわ。……そりゃまぁ、給料はべらぼうに高いけどよ」

「給料ねぇ。にしても、秘密結社(・・・・)なんて現実的な職じゃないよなぁ」

「それを言うなら、巨大ヒーローやら魔法使いの勇者やらの方がよほど現実離れしてるぜ」

「まぁ、同感だよ。秘密結社なんて、それらと比べたら……いや、それでも充分現実離れしてることには変わりない」

「そうかぁ?」


 ――☆☆☆――


 秘密結社ヘルサターン。一言で言うところの悪の組織。しかし秘密結社というわりには、一般人の知名度は極めて高い。

 活動内容は多岐に渡るが……とりあえず非合法な改造手術を受けた怪人達が、幼稚園バスジャックや市営遊園地占拠などといった、社会的に意味のないような“悪さ”を行う組織である。それもやたらと頻繁に。

 何か事件を起こすたびに、『正義の味方』と呼ばれる、同じく改造手術を受けた人間達と戦い――必ず負ける。

 一般に、主力怪人部隊に編入させられた怪人たちは、爆発してその生命を全うする。道徳観や倫理観に関係なく、『正義の味方』は彼らを「断罪」「治安維持」という名目の下、毎週殆ど同じ時間に爆死させる。そこに容赦はない。

 それなのに、『正義の味方』は常に民衆のアイドルだ。彼らを非難する人間はいない。何せ彼らは『地球平和の為に戦う超絶ヒーロー様』なのだから。


 しかしながら、実のところ『悪の組織』にしても『正義の味方』にしても、大本は一緒だということはあまり知られていない。加えて、彼らがどうして存在しているのかも、これまた同様。

 突飛な話だと思うかもしれないが、彼らを組織したのは政府。勿論、政治を行い、民の生活の基盤を作るあの「政府」。

 何故、政府はそのような秘密結社を組織する必要があったのか? それには二つの大きな要因が存在する。

 一つは、住民の政治不信の目を違うところに向けるため。

 相次ぐ政権交代や、官僚の汚職事件。住民の与り知らぬところで強行採決される法案の数々。その他諸々の、政府が行ってきた愚考、愚行の数々は国民の不信を招くのに充分な材料であった。当然支持率も下がり、住民の政治的無関心の加速度的増加にも拍車がかかる。

 そこで、政府がとった一つの打開策が「自作自演(狂言)」。

 悪の軍団が民衆を襲い、それを“政府が組織した正義の味方”が助けに入れば、『正義の味方』の民衆からの評価は上がり、同時に政府に対する支持率も上昇する。また悪の改造人間軍団を用いて、反政府組織(レジスタンス)に秘密裏に攻撃を加えることも可能だ。

 二つ目は、外敵駆逐及び世界の防衛のため。

 『悪の組織』などは公に認められている組織ではないので、人体実験などが比較的容易に行える。

 人体実験――即ち改造手術を施された人間は、およそ常人には考えられないような超絶的能力を身に付けることができる。

 それは兵器にも勝るとも劣らない――むしろ兵器と呼んだ方が自然な怪人達(彼ら)は、異世界の住人然り、地球外生命体然り、巨大怪獣然り……全ての『侵攻』に対して力を発揮することになる。

 言ってみれば、『正義の味方』も『悪の軍団』も、政府の思い通りに如何なる手段にも用いることができる体の良い「私兵」。

 そして、政府から法外な給料を貰って活動している彼らは時に――ある種の仕事柄への自尊心と自虐を込めて――自分たちのことを『渡鴉(レイヴン)』と呼んだ。


 ――☆☆☆――


「にしても、(さい)ヴァスターさんもひどいよなぁ。『尺の都合』とかで、名乗り口上も無しに、エクスカラベイザーさんを一刀両断にしちゃうんだもん」

「馬鹿言え。『正義の味方、サイヴァスターをよろしく!』なんて一々言ってたら、あからさま過ぎるだろうが。それに段取りが悪い元上司があれだけサクッとやられて、お前は内心スカッとしてるんだろ?」

「おいおい、そういう意味じゃねぇっつの。ってかお前こそ、そんなこと言ってたらめでたく主力怪人部隊への仲間入りだぞ」

「誰も聞いてやせんさ」

「いくらウチのトップが穏和で有名だからって、あんまり危ない発言は控えた方が良いと思うぜ」

「ほう、まさかお前から言われるとはな。覚えておくよ、戦闘員139号」

 刹那、基地内に「ジリリリリリリ――」というけたたましい警鐘と共に、

『伝令。緊急出動命令。侵略者(イレギュラー)出現。総員は直ちに戦闘準備を整え、D87ポイントへ出動せよ。繰り返す、緊急出動命令。侵略者(イレギュラー)出現。総員は直ちに戦闘準備を整え、D87ポイントへ出動せよ』

 『大総統』からの命令が各所のスピーカーより響き渡る。

「……おいおい、こりゃ久々に俺らも『正義の味方』ってわけじゃねぇか、134号!?」

「そのようだな、139号。……して、今回の相手は何なんだ、諜報員203号?」

「今回の相手はですね……どうやら『マゾク』を名乗ってます。『我ラ、魔界ヲ治メル者ナリ。人間界ニ巣クウ人間ヲ滅ボス為、イザ参ラン』などと、宣戦布告文が送られているそうですよ」

「おお! そりゃあ、新しいタイプじゃねえか! 腕が鳴るねぇッ!!」

「いやはや、我々戦闘員ごときに仕事なんて残ってないだろうさ。あったとしても、下っ端の処理。こういうときは決まって、怪人クラスのお偉いさんが鬱憤晴らしに皆殺しにしちゃうんだから」

「それを考えれば、わざわざ『マカイ』とかいう異世界からいらしたのに、『マゾク』のみなさんは不憫ですねぇ」

 そう言って、黒い専用のコスチュームに身を包んだ戦闘員たち――一人でさえ、政府所属でない『正義の味方』の一個中隊くらいを圧倒できる力を持つ彼らは、変声機を通じた総統の命を受け、侵略者を殲滅するべく基地を後にした。

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