↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/38

第29話:外縁の内側

 “外”は、これまで別の場所だった。

 自由で。

 不安定で。

 だからこそ――利用される場所。

(なら)

 キャルロットは、静かに書面を閉じた。

(“境界”を消す)


「外を取り込むってのは?」

 レオンが問う。


「簡単です」

 キャルロットは淡々と答える。


「“外にも基準を適用します”」


「……は?」


「任意です」

 わずかに間を置く。


「ただし――」


 視線が、わずかに鋭くなる。


「適用しなければ、“内側と接続できない”」


 沈黙。


「……それ、ほぼ強制じゃねぇか」


「いいえ」

 静かな否定。


「“選べます”」


 だが、その実。


(選べない)


 数日後。

 新たな枠組みが提示される。


 “外部適用基準”。


 内容は、これまでの統合基準と同じ。

 責任の明確化。

 処理の一元化。

 記録の共有。


 ただし――


「外部取引にも適用可能」


 という一点が、違う。


「……どういうことだ?」

「外の案件も、この基準で通せるのか?」


 ざわめき。


 そして。


「適用すれば、内側と同じ扱いになります」


 キャルロットの説明は、静かだった。


 つまり。


 外に出ても、安定を得られる。

 ただし――


(こちらのルールで)


「……来るか?」

 レオンが低く問う。


「来ます」

 即答。


 なぜなら。


 すでに知っている。

 外の不安定さを。

 内側の安定を。


 数日後。

 申請が、届き始める。


「外部適用基準の申請、増加しています」

 執事の報告。


「大口も?」


「はい」


 迷いはない。


 そして。


「……繋がったな」

 レオンが呟く。


 内と外。

 その境界が、消える。


 すべてが、同じ基準で動く。


(完全な統合)


 一方。

「……そこまで来ましたか」

 ローデリック侯爵は、報告書を閉じた。


「外部まで取り込みました」


「ええ」

 侯爵は静かに頷く。


「これで、“逃げ場”は消えた」


 短い沈黙。


 そして。


「……完敗、ですね」


 その言葉は、静かだった。

 だが、確かだった。


 側近が息を呑む。


「よろしいのですか」


「ええ」


 侯爵は、わずかに笑った。


「見事な盤でした」


 認める声。


「ならば」

 ゆっくりと立ち上がる。


「次は、“同じ土俵で”」


 敗北ではない。

 移行だ。


 同じ頃。

 キャルロットは、最後の報告を受けていた。


 内も外も、統合された。

 流れは、一つ。


 そして。


「……終わりましたね」

 執事の声。


 短い沈黙。


「いいえ」


 キャルロットは、静かに首を振った。


「“整った”だけです」


 勝利ではない。


(ここから)


 視線は、まっすぐ前へ。


 その先にいる人物。


「次は」

 静かな声。


「“正面から”です」


 盤は、閉じた。

 だが――

 戦いは、終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。