第2話:目覚めと再会
「キャロ、おはよう」
柔らかな声が、耳に届いた。
目を開けると、そこには見慣れた天井。淡い光がカーテン越しに差し込んでいる。
ゆっくりと起き上がる。
「……お母様?」
「どうしたの? ぼんやりして」
優しく微笑む母の姿。
思わず、息が止まる。
「……お父様は?」
「もう仕事に行ったわよ。朝ごはん、すぐできるから降りていらっしゃい」
母のその何気ない言葉に、胸が締め付けられる。
――生きている。
その事実が、現実味を持たない。
キャルロットは震える手で自分の頬に触れた。温かい。確かに、ここにいる。
鏡を見る。
そこに映っていたのは――幼い頃の自分。
(……戻ってる)
あの処刑の日より、ずっと前に。まだすべてが壊れる前に。
キャルロットはゆっくりと、深く息を吸った。
胸の奥に、あの日の感情が蘇る。
恐怖、絶望、そして――
怒り。
「……ふふ」
思わず、小さく笑いが漏れた。
前の自分なら、ただ怯えていただろう。
でも、今は違う。
(やり直せる)
未来を、変えられる。
「ヴァイス家……」
その名を口にするだけで、血が冷える。
けれど同時に、奇妙なほど冷静な自分がいた。
(感情だけじゃ、また負ける)
あの家は狡猾だ。証拠を捏造し、王家すら動かした。
正面からぶつかれば、同じ結末になる。
だから――
(先に潰す)
微笑みを浮かべたまま、キャルロットは決意する。
もう、泣かない。
もう、奪わせない。




