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10.祈ってみた

 皆が満腹できたらと、お金を惜しみなく焼肉やステーキ、美味しい果物をたくさん買いました。残りはお菓子だな。確かこの辺りに小さなケーキ屋さんがあるはず……あ、あったあった。


 メニューに六種類のケーキがあった。孤児院は私を除いてちょうど三十人いるので、各種類に五つを買おう。私はあまり甘いものが好きじゃないから、私の分まで買うつもりがない。


「すいません…」

「あら、かわいいお坊っちゃまですわね。お使いかしら。お名前は?」


 ……店主っぽい三十代女性にも男の子認定。やっぱりこの世界では女の子がズボンをはくのは珍しいみたい。女の子はドレスかワンピースを着る生き物でズボンをはく生き物なら男の子、的な?


「……マリアです。各種類のケーキに三つをお願いします」

「あらやだわ。ごめんね、あたしったらてっきり男の子だと……ケーキ三十切れだよね?お詫びにもう一切れあげるわ」

「あ、いえ、そんな。お気になさらず…」

「ささ、どれにする?」


 はぁ、もう決めたみたい。でもまぁ、これで私の分もあるってわけだから、お言葉に甘えて。


「……ありがとうございます。では一番甘くないものを」

「ふふ、いいわよ」


 三十切れで銀貨六枚。まあまあ安いかな。味はまだわかんないけど、見た目は可愛いし。


「はい、ケーキ。持てる?重いから気をつけてね」

「はい。ありがとうございます」

「また来てねー」


 ケーキ屋さんを後にした。


◇◆◇


「ただいまー」

「おかえりなさい、マリア。…あら、そんなに持っていてどうしたの?」


 教会の入り口で掃除してるシスターはびっくりしたらしく、きょとんとした。


「食材とケーキだよ」


「あ!マルおかえり!」

「マルねーちゃんだ!」


 子供達とアリスが出てきた。アリスは今世でできた初めての友人で、今の私より年上で今年十歳になった。


「マルねーね、おかちある?」

「ケーキがあるよ。全員分だから後でシスターと院長先生と皆と食べてね」

「わーい!」


 お菓子大好きで私より年下の四歳のアンジーが大喜びした。


「ところでマリア、どなたからこんなものを買うお金をもらったの?」

「うん?違うよ。もらったんじゃなく稼いだんだよ、私が」


 あ、シスターがポカンとした。六歳児の口から稼ぐという単語を聴けると思わなかったのかな?


「今日冒険者登録に行ったんだよ。依頼をこなした報酬を使って買ったの」

「ぼ、冒険者?!そんなの危ないじゃない!」

「大丈夫だよ。ほら私、剣ができるでしょう?割と強いよ?それに、院長先生も許可してくれたし」

「で、でも…」


 シスターは憂わしげな表情で私を見つめた。うっ、この目に弱いよぉ……で、でも!冒険者はやめない!


「もっと気をつけると約束するから、ね?」

「……はぁ、わかったわ。あなたはこうなったらもう誰の意見も聞かないと誰より知っているつもりよ。でも……本当に本当に気をつけなさいね。怪我したらダメよ」


 シスターは…母にしては若すぎだから、心配性な姉って感じ?でもシスター、怪我しないのは無理だと思う。まぁ…なるべく、だな。


 ……シスターの目を見て私は、懐かしくなってきた。

 (前世)子供の頃、剣術をやる私に、母さんはいつもこん(心配そう)な目で私を見てそう言ってくれた。父さんも、言葉は出さないけど、いつも私が無理しないよう気をかけてくれた。

 母さんが亡くなって父さんずっと私と翔流の前で泣かないようにしていた。悲しくないわけじゃない。そんなわけがない。ただ…私たちを支えたくて、父として子供に弱さを見せたくなくて、こっそり泣いていたんだと思う。

 父さんは強い人だ。物理的にも、精神的にも。でも私まで逝って、父さんはやっぱり一人で悲しむのか?翔流に見せないようこっそり泣くのか?そんなの耐えられるのか?

 それに翔流は?翔流は自分を責めていたりするのか?もしそうだったら、もう自分を責めないといいのだけれど……。何にせ私が勝手に庇ったんだから。

 ……父さんと翔流を置いて行った私にそんな資格がないかもしれないけど、二人に幸せになってほしいと、あの頼りない神様に祈ってみた。どうか私が幸せに生きている夢を見せて。どうか、二人に幸せを与えて。

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