表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/46

CARD35

 ◇


 気が付くと、カーテンの隙間から日が差し込んでいた。

「やべぇ……」

 関東大会当日だというのに、一睡もできなかった。

 一晩中、いや、この一週間ずっと、俺は貴文に勝つことだけを考え続けた。あらゆる可能性を模索した。

 だが結局、答えを導き出すことはできなかった。天才、白川貴文がいったいどんな手を打ってくるのか。彼は必ず、誰も思いつかない必勝の戦略を立ててくる。それがわからなければ俺たちに勝機はない。

 先輩に宣言をしてしまった。必ず勝って見せると。だが、今のところ彼に勝つ見込みは限りなくゼロに近い。

 大会は朝八時から。せめて三十分でも寝たほうがいいかと思ったが、結局起きることにした。眠れる気配はないし、逆に寝てしまったらそれこそ起きれないかもしれない。TCG界で俗にいう“ゼロ回戦敗退”なんて事態になったら最悪すぎる。

「おはよう」

 下の階に降りていくと、既に妹が朝食を食べていた。さすがスケーターの朝は早い。

「どうしたの、朝早くに珍しい」

 逆に、俺がこの時間に起きているのは珍しい。

「ああ、ちょっと今日大会で」

「ふーん」

 適当にトーストを焼いて、席に着く。食べている間も、スマホで何か試合に役に立つ情報がないか探し続ける。

「ごちそうさま」

 頭をスッキリさせるためにシャワーを浴びてから家を出る。

 会場へ向かう電車の中でも考え続けた。俺たちの【ゴブリン】デッキはこれ以上改善の余地がないように思ってしまう。おそらく貴文でもこれ以上のデッキは作れない気がした。

 だから【ゴブリン】以外のデッキを模索する。新弾のカードリストを隅から隅まで確認して、過去のカードと強いシナジーを発揮するようなカードがないか、検討していく。

 だが、既に発見されているコンボ以上のものは何一つ発見できなかった。

 会場となる東京の高校の最寄り駅に、一番乗りで到着し、先輩たちを待つ時間も思考をめぐらせる。

「おはよ、優輝くん」

 待ち合わせ場所に現れた先輩は、ひどく険しい表情をしていた。

「先輩、大丈夫ですか。気分悪いんですか」

 俺が聞くと、先輩は慌てたように両手を振って否定する。

「ぜんぜん大丈夫だよ~。昨日興奮して眠れなくて」

「俺も実は一睡もしてなくて」

 それからすぐに姉ヶ崎もやってきた。

「おはようございますー」

「おはよ。じゃぁ行こうか」

 会場の高校に着くと、案内板が出ていた。それに従って、校舎に入って、会場となる大部屋に入る。

 流石は県大会を勝ち抜いてきた強者が集う関東大会。部屋には全国的に有名なプレーヤーが集っていた。その中には、もちろん彼の姿もある。

 白河貴文。その姿を見た瞬間、フラッシュバックする彼の言葉。


――残念だよ。


 ダメだ。このままでは、こないだと同じ結果が待っている。

 もう何度も見直したデッキリスト。完璧な【ゴブリン】デッキだ。その自信はある。だが、貴文の頭のなかにもこのデッキはあるはずなのだ。

 彼は天才だ。常人が考える“完璧”は絶対に超えてくる。だとしたらどうやって? 彼はこのデッキをどうやって超えてくる?

「先輩、受付に行くのちょっと待ってもらっていいですか」

「まだデッキを変えるってこと?」

「ギリギリまで悩みたいんです」

「うん、わかった」

 考えろ。別に貴文と俺たちで使えるカードプールが違うわけじゃないし、初期手札の枚数も同じなのだ。少なくともデッキ構築の段階では、俺達はまったく平等なはず。彼にできることは、俺にだってできる。

 考えろ。どうすれば、やつが繰り出す、完璧を超える完璧をさらに超えられる。

 そして、無常にもタイムリミットはやってきた。

「そろそろデッキリスト提出しにいかないと」


 ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ