CARD19
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とりあえず、最初は俺と中島さんが対決することになった。
「あの優輝君と対戦できるなんて!」
そう言ってくれるのはうれしいが、もはやプレッシャーですらあった。彼女たちは昨年の県代表実力の彼女た
ちを失望させてしまうようなデュエルはできない。「中島さんは、とにかく“いやらしい”デッキを使ってくるよ」
先輩が笑いながら言うと、
「いやらしいって、ひどーい」
と中島さんはおどけてみせた。
とりあえず中島さんは恰好がいやらしいので、いやらしいデッキを使っていてもなにも不思議ではない。
「じゃぁ、お願いしまーす」
オレのサーヴァントは<ゴブリンの指導者>。
一方、中島さんのサーヴァントは<オーラウの拷問官>。
なるほど。中島さんのデッキは【ライブラリーアウト】か。
TCGにおいて、相手のライフを削りきることで勝利を目指すのが一般的だ。このタイプのデッキは【ビートダウン】と呼ばれる。 だが、大抵のTCGではそれ以外にも勝利の方法があることが多い。中でも相手の“デッキ切れ”による勝利は、どのTCGにもある定番ルールだ。
デッキにカードがなくなり、ドローできなかった場合に敗北になる。このルールによる相手の敗北を目指すデッキが【ライブラリーアウト】あるいは【デッキ破壊】と呼ばれるタイプ。
「俺は<角笛吹き>を発動……」
安定した一連の動きをしてからターンを渡す。すると、中島さんは珍しいカードを使ってきた。
「<休戦の使者>発動」
<休戦の使者>サモン
お互いのカードは攻撃できない。
このカードのプレーヤーのドローフェーズにこのカードを破壊する。
最近登場したカードだ。通常の【ビートダウン】ではなかなか活躍しないカードだ。このカードで守るくらいなら、他の使い魔を呼んで攻撃した方が手っ取り早い。
だが【ライブラリーアウト】のように、時間を稼げば勝てるデッキならば、ある程度生きてくるだろろう。
「じゃぁ<ゴブリンの先遣部隊>召喚で」
こちらは軽いゴブリンを中心に召喚して攻めていくが、相手の妨害にあってなかなか攻撃が通らない。そうこうしている間に、相手はものすごいスピードで、こちらのデッキを削ってくる。みるみる薄くなっていく俺のデッキ。
さらに追い打ちをかける中島さん。
「切り札を使っちゃうよぉ~! 発動、<復活の代償>!」
そのカードに驚く。それが実際のデュエルで使われるのを見たのは初めてだったからだ。
<復活の代償>
相手はカードを3枚ドローする。
墓地から召喚アーツを手札に加える。このターンそのカード、そのカードの詠唱時間は0になる。
俺がかつてプレイしていた頃に登場したカードだが、その強烈なデメリットゆえ見向きもされていないマイナーカード。
使い魔を復活させる効果は悪く無い。だが、デメリットがあまりにも大きすぎる。
二枚ドローする<強欲>が禁止になっていることから、三枚のドローがいかに大きいかがわかるだろう。それほど大きなアドバンテージを相手に与えて、できることがモンスターの復活では割にあわないのだ――普通は。
だが、【ライブラリーアウト】とは極めて相性が良い。相手の攻撃を確実に稼ぎながら、同時に相手のデッキを減らすこともできる。
まさかこんなシナジーが生まれるとは。
さすが去年の県代表。古今のカードの特徴を理解し、新たなコンボを見出す。一流プレーヤーにしかできないことだ。
結局、フ大量のゴブリンが展開できているにも関わらず、攻撃そのものを封じ込められて、そのままライブラリーアウトで敗北。
「まさか、<復活の代償>が【ライブラリーアウト】と相性がいいとは思わなかったよ」
普通は“弱い”とされるカードが、意外なデッキで活躍することがある。これがカードゲームの面白いところだ。
「もう一回いいかな?」
ライブラリーアウト主流デッキとは言えない。だが、一敗も許されないトーナメントでは、こういう地雷デッキにも対応する必要がある。だからこういう一流の地雷デッキ使いとの対戦は重要な経験値になる。
特に、あの貴文は、だれも考えつかなかった独創的なデッキや戦術を多用する選手だ。彼に対抗するには、環境デッキ相手に戦える、というだけでは不十分なのだ。




