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CARD17

 ◇


 しばらく、俺達は南国の魚と戯れ海を満喫していた。

 だが、ある程度してくると、体が冷えてくる。確かに天気は良いが、やはり五月は五月だ。

「先輩、ちょっと寒くないですか?」

「そだね」

 よし、海から上がって、ビーチバレー、あるいはスイカ割り、という気分ではなくなってくる。

「風邪ひいたら嫌だし、次は暖まろうか」

 先輩はそんなことを言い出した。

「暖まるって?」

「まぁまぁ、私についてきたまへ」

 俺たちは荷物をまとめて、水着のままチャリに乗る。誰もいない田舎道をチャリで漕ぐこと数分。

 チャリから降りて、小道を下っていくと、それが見えてきた。

 黄土色の岩に囲まれた水面から、湯気が立っている。

「温泉、ですか」

「そう! 露天風呂!」

 崖とどこまでも続く海の絶景を独占できる、自然の中の温泉だった。

 雅の湯、という看板が立っている。なんでも皇太子殿下が結婚した際に、皇太子妃にちなんで名づけられたようだ。

 お湯をのぞき込むと、普通にごみが浮いていた。とても衛生的とは思えない。

「これ、入るのなかなか勇気がいりますね」

「確かにぃ」

「まぁ、何事も経験だよ」

 と、先輩がその真っ白ですっとした足をお湯に伸ばす。

「うわぁー熱い」

 俺も恐る恐る手で触れてみる。

「熱っ」

 今まで入ってきたお風呂の中で一番熱い。とても入れそうにないくらい熱い。

 と、俺がためらているときに、ギャル子が思いのほかぐいぐい使っていく。

「意外と気持ちいーですよ」

 とは言われても、俺は熱に対してそんなに耐性はない。固まる前のコンクリートにでも沈むように、ゆっくりと浸かっていく。数分かけて、ようやく肩までつかる。海と違って慣れてきても、それでも熱い。

「景色、最高ですね」

「うん、海と空と崖。雄大だねぇ」

 澄み渡った空と海。ゆったりとした時間が過ぎていく。

 そろそろのぼせそうだから、上がろうか、と思ったとき。

 水着姿の三人の少女が、こちらに向かって歩いてきた。全員かなり可愛いことが遠目にもわかる。

「お、来たね」

 先輩が三人に手を振る。

「え、知り合いなんですか?」

「何もこの孤島に、海に入って温泉に浸かりに来ただけじゃないのよー」

 近くで見ると、三人はそれぞれ違うタイプの美少女だった。

「久しぶりー。全日本ジュニア以来だね」

 先輩がそう言うと、真ん中の茶髪の子が元気よく答えた。

「あおいちゃん、久しぶりー」

 俺は突然アイドルを目の前にしたかのように唖然として、ただうろたえてしまう。

「去年の全国高校生選手権、千葉県代表チームの三人でーす!」

 先輩のその言葉に続いて、三人が自己紹介を始める。

「大野です」

 黒髪ロングでメガネ。学級委員長をやってそうなイメージ。だが、首から下に目を向けると、そこにはギャル子をも超えるダイナマイト級なお胸が揺れていた。

「中島でーす」

 一人だけ茶髪。もう露骨にギャル、という感じ。そのギャル感は、ギャル子を凌ぐ。こうしてみると、ギャル子はゆうて進学校のなんちゃってギャルだったのだ。

「小川っす」

 ショートカットで、肌が焼けており、スポーツ万能そうだ。四肢に目を向けると、筋肉が付いていて引き締まっている。

 この三人、面白いことに、名前が大中小になっている。しかも、お胸の方も、大中小になっている。

「っていうか、あの一ノ瀬君だよね!」

 そういうと、中島さんが俺の手を取ってブンブン振った。ついでに胸も揺れた。俺は思わず目線をそらした。

「ずっと大会に出てなかったんでしょ? 復帰したの!?」

 距離が妙に近い。本当に近い。初対面の距離じゃない。俺のパーソナルスペースが溶けていく。

「つい、こないだ」

「えーじゃぁ今年の県予選は超激戦じゃーん」

 と、俺の手をようやく話した中島さんは桜木先輩に向き直った。

「そういえば、去年のメンバーはどうしたの?」

 その瞬間、先輩の顔が曇った。

「ちょっといろいろあってね。みんな辞めちゃったんだよね」

 そこで中島さんの顔から初めて笑顔が消えた。

「でも、今年二人が入ってくれたから。二人とも一生懸命だし、負けないから」

「うん、そうじゃなきゃ面白くないよ」


 ◇

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