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―――君を守ると誓おう
全てのものから守るとこの剣にかけて誓うから、どうかこの世界に残って私と共に生きてくれ
もう君無しでは私の人生は満たされないのだ
愛している――――
キャー素敵こんな台詞私も言われてみたい、なんて悲鳴があがる店内。
私はついつい絞りすぎてしまった布巾をのばして、テーブルをふきはじめた。
午後は残ったパンの値段を下げて店内で食べれる簡単なカフェをしているのだ。
飲み物の用意と店内のパンを必要に応じて温めるだけなので、そんなに大変でもなく、たまにお客さんとお喋りするのでいい息抜きができるこの時間は大好きだ。
種類が豊富なため、幾つか売れ残ってしまうパンを見て発案した私は、適度に店内を動き回って運動できるし、沢山の人と話せて気分転換もできるし、売り上げにも貢献できているので、最近は内心ほっくほくだった。
だけど只今後悔の真っ最中。
なんでこんな事を提案した私。
いつもよりも長い時間居座れるこの場所は、お姉さんやおばさま達のお喋りに絶好の場所だよ、噂が飛び交う場所だよ。
絶賛、神子様御一行の恋愛譚綴ったあのにっくき雑誌の内容披露されてるよ。
なにそのくっさいセリフ
あのアルバート様がそんな小説にしか出てこないセリフ言ったとでも?
あの物腰丁寧で端正な顔立ちで騎士服をきっちり着こなすあのアルバート様が、そんなくっさ甘いセリフを?
...........くっそ萌えるんですけど
聞きたかった!!そのセリフ
リアルで!!
でも悲しいかなそれは現実に言われたこともなく、また物語中ですらそのセリフはあの彼女へのものだ。
どうしてもそれが心の中にあるからか、結婚前は性能抜群だった私の脳内のアルバート様再生は機能しなかった。
「うん、まぁ......離縁した身でこんな妄想もう虚しいだけだよ」
それに元々私へのプロポーズだって、あってないようなものだった。
愛してる、なんて...一度でいいから聞きたかったなぁ。
なんて思うけど、しょうがない。
どうせ、責任をとるだけの結婚だったのだ。