第02話:いじめ
放課後、俺は学校の屋上にやってきた。
目の前には、聡美に好意を寄せているクラスメイトの三崎 達也がいる。
「話って何?」
「好きだ! 俺と付き──」
「イヤだ」
と、俺は三崎が言い終わる前に返事をした。
「まだ最後まで言ってねえよ!」
「ごめんね。私、今は誰とも付き合う気はないから」
そう言って歩き去る俺。
「待ってくれ!」
三崎が追ってくる。
「俺は真剣なんだ!」
「無理なものは無理!」
俺は教室に入り、席へ着く。
「坂上さん、もしかして他に好きな人が?」
「いや、そう言う訳じゃないけど……」
俺は聡美じゃないので、彼女の断りなく告白を受けられる訳がない。が、俺的にはイケメンだからオッケーしてやりたい。
「じゃあ何?」
「詮索しないで」
三崎は自分の席に着いた。
俺は携帯を取り出し、三崎の事を聡美に送った。
聡美が送ってきた返事には、「無理」と書いてある。
ほらね。
俺は携帯をしまう。
「聡美」
クラスメイトの女子が声をかけてきた。
誰だったかな?
「あのさ、宿題やってきた?」
「何の?」
「五限の数学よ」
「やってきたよ」
「写させて」
「てめえでやりな」
「冷たいわね。もうアンタとは口利かないから」
はいはい。
チャイムが鳴り、数学の教師が入ってくる。
「授業始めるぞ。先ず宿題を提出してくれ」
俺は数学のプリントを教師の下へ届けようと歩き出すと、先程の女子に足を引っかけられて転んだ。
「痛!」
「何やってんだよ、坂上。大丈夫か?」
心配してくれる教師。
俺は先程の女子を睨ねめ付けた。
「何よ?」
「(後で折檻せっかんしてやる)」
聞こえないように小声で言う。
「あ?」
俺は無視して教卓に宿題のプリントを置いて席に戻った。
授業が終わり、放課後を迎える。
尿意を催した俺はトイレへと駆け込み、個室へと入ると、真上から大量の水を被ってびしょ濡れになってしまった。
クスクス──外で数人の笑い声。
その中に足払い女の声が混じっていた。
なるほど、これが虐めか。すまん、聡美。
俺は取り敢えず用を足し、個室を出た。
「くちゅん!」
嚔が出た。
トイレを出ると、足払い女とその取り巻きがいた。
「聡美、びしょ濡れじゃん。高校生にもなって水遊び?」
俺は足払い女を蹴飛ばす。
尻餅を着く足払い女。
「何すんのよ!」
「アンタが水をかけてくるからだろ!?」
「そんなことしてないわよ。ねえ?」
取り巻きに聞く足払い女。
「美佐子はそんなことしてないわよ」
「そもそも私たちには関係ないし。行こう?」
足払い女とその取り巻きは歩き去る。
俺は水の冷たさで体が震えた。
男子トイレから聡美が出て来る。
「ちょっと、アンタびしょ濡れじゃん! どうしたの!?」
俺は足払い女たちを指差した。
「あの不良どもが……」
「それっぽい感じだったけど、やっぱりそうなのか」
「取り敢えず、着替えなよ」
「うん」
俺は教室へ行き、ジャージを手に女子トイレに戻ってそれに着替えた。
「さっきの奴らフルボッコにしていいか?」
「それはアンタに任せる」
それより──と続ける聡美。「帰ろう?」
「うん」
俺は教室に行き、濡れた服を鞄に押し込み、聡美と共に学校を出て帰路に就いた。
帰宅途中、俺は銭湯の前で立ち止まった。
「寒いから一風呂浴びてくる」
「じゃあ先に帰ってるね」
聡美と別れ、銭湯に入店する。
番台で金を払い、風呂道具を借りて女子更衣室へ入る。
全裸になり、浴室へ。
やばい、みんな裸……。
女子風呂にいる客が全員裸で興奮しそうだったが、何とか抑え込んだ。
俺はシャワーの前で椅子に座り、温水をかけて体を濡らし、頭と体を洗って浴槽に浸かる。
「ふー……」
温かくて気持ちがいい。
五分後、俺は風呂を出て体を拭き、服を着て帰路に就くのだった。