↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2つの鬱ゲーがつながった世界で、僕は異常なほど愛されている  作者: 座間あぜん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

第9話 監禁(2)

クレモリーに監禁されてから、どれくらいの時間が経っただろう。


食事もお風呂も着替えも、すべて彼女が世話をしてくれる。部屋は毎日掃除され、食事も僕の好みに合わせて用意される。身体の調子が悪くなれば、すぐに気づいて治療してくれる。


不自由ではあるけれど、生活そのものに不満はなかった。問題は、僕の足につながれた鎖が外れないことだ。


「主様、お水を飲みますか?」

「ありがとう」


クレモリーが水を飲ませてくれる。彼女は僕の世話をするたびに嬉しそうに笑っていた。


この生活にすっかり慣れてしまったらしい。僕は何とかして鎖を外してもらおうと考えていたけれど、彼女はまったく聞き入れてくれない。話し合おうとしても、最後には必ず「主様は私のものですから」という結論に戻ってしまう。


どうしたものか。そんなことを考えていたときだった。家の外から魔力の反応が伝わってきた。





聞き覚えのある声が響いた。


「アルセリオは!」


ヴァネッサだ。


「落ち着いてください。彼はどこにいるんですか?」


ファティマの声も聞こえる。


「結界。こんなものを張れるなんて、なかなかの強敵。気を付けて」


最後はモルガーナ。


どうして三人がここに?


「お客様のようですね」

「クレモリー。手荒い真似は……」

「大丈夫ですよ、主様。私が対応しますから」

「俺の知り合いなんだ!」


クレモリーは笑顔で部屋を出ていった。





しばらくして部屋の扉が開いた。


「アルセリオ!」


ヴァネッサが駆け込んできた。続いてファティマとモルガーナも入ってくる。


「ヴァネッサ! ファティマ! モルガーナ!」

「よかった……! 本当に、生きてたんだね!」


ファティマが涙を浮かべて僕の顔を覗き込む。ヴァネッサも安心したように息を吐き、モルガーナは僕の身体をじっと観察していた。


「アルセリオ、怪我は?」

「大丈夫だよ。クレモリーが世話をしてくれているから」

「そう……」


ヴァネッサは僕の身体を見て、それから鎖へ視線を移した。


「……これは何?」

「えっと」

「どうして鎖でつながれているの?」

「それは……」

「主様は私のものですから!」


クレモリーが嬉しそうに答えた。いや、そこは説明しなくていい。


「クレモリー。これはどういうこと?」


ヴァネッサの声が低くなる。


「主様が夜中に勝手に外へ出てしまったので、鎖をつけました。もういなくならないように、家の周りにも結界を張ったんです」


ヴァネッサは僕を見た。


「アルセリオ。本当にこれでいいの?」

「よくはないけど、クレモリーにも事情があって……」

「事情?」

「主様は私のそばにいてくださるんです」


クレモリーが僕の言葉を遮った。


「私だけの主様です。私は主様のものですし、主様も私のものです。だから、ずっと一緒にいるんです」


ヴァネッサは黙っていた。ファティマはクレモリーと僕を交互に見つめている。モルガーナは顎に指を当て、何かを考えているようだった。


「……そう」


ヴァネッサが小さく呟いた。


「私も、もうアルセリオを一人にしたくない」

「ヴァネッサ?」

「ダンジョンで、私は何もできなかった。アルセリオが一人で戦っているのに、私は動けなかった。今度こそ守りたい。もう二度と、あんな思いはしたくない」


彼女の目には強い決意があった。


「だから、私もそばにいる」

「え?」

「ヴァネッサも、私と同じですね!」


クレモリーが嬉しそうに声を上げた。


「主様を守るために、そばにいるんですよね!」

「そうよ」

「ふふっ。仲良くできそうです!」


何だろう。嫌な予感がする。


「私も……」


今度はファティマが口を開いた。


「私も、アルセリオと離れたくありません」

「ファティマ?」

「あなたがいなくなってから、ずっと苦しかったんです。もう会えないかもしれないと思うたびに、胸が痛くて……。あなたと過ごした時間が、私にとっての楽園だったんです」


ファティマは僕の顔を見つめた。


「だから、もう離れたくありません。今度こそ、ずっと一緒にいたいです」

「ファティマ?」


ファティマは穏やかに微笑んだ。


「なるほどね」


モルガーナが僕の身体と鎖を交互に眺めた。


「つまり、あなたはここで保護されているわけね」

「保護というか……」

「怪我をしているアルセリオを一人で外に出すのは危険だし、再びあのような戦闘に巻き込まれる可能性もある。クレモリーが監禁という手段を選んだ理由も理解できるわ」

「いや、モルガーナ。そこは理解しないでほしい」

「それに、あなたの魔法についてもまだ調べたいことが山ほどあるの。あなたがいなくなってしまったら、研究を続けられないでしょう?」


モルガーナは真剣な顔で言った。


どうしてこうなった。


三人が顔を見合わせた。


「私たちも一緒にいるってことで、いいんじゃない?」


ヴァネッサがクレモリーに提案した。


「一緒に?」

「そう。クレモリーだけで世話をするのは大変でしょう? 私たちも手伝うわ」


クレモリーは嬉しそうに両手を合わせる。


「わあ! 主様のお友達が一緒にいてくださるんですね!」


何やら、話がまとまってしまった。僕だけが置いていかれている気がする。


「待って。みんな、少し落ち着いて話をしよう」


僕が言うと、ヴァネッサが僕の顔を覗き込む。


「私たちはあなたのことを大切に思っているの」


ファティマが微笑む。


「私たちが毎日お世話をします。食事も、着替えも、お風呂も。寂しくないように、ずっとお話ししますね」

「私も研究を進めながら、あなたの体調を管理するわ。必要なものは何でも用意するから安心して」


モルガーナまで話に加わった。


「鎖は外してくれるんでしょ?」


僕がクレモリーに尋ねる。


「外す必要はないんじゃない?」


なぜかヴァネッサが答えた。


「そうですね。アルセリオが勝手に外へ出てしまうと危険ですから」


ファティマも頷いた。


「拘束具の魔法構造は興味深いわね。もっと安全で確実なものに改良できるかもしれない」


モルガーナは鎖を見ながら、研究者の顔で呟いた。


やめてほしい。本当にやめてほしい。


「では、これからは四人で主様をお世話しましょう!」

「賛成!」

「私も賛成です」

「合理的な判断ね」


四人はすっかり意気投合していた。




僕は原作ゲームのことを考えた。『Rotten Eden(腐った楽園)』にも『共依存関係』にも、こんなルートはなかった。原作ゲームには存在しなかった新しいルートに入ってしまったのかもしれない。魔王化ルートで世界が滅びないだけマシなのだろうか。


「主様、これからはみんな一緒ですよ!」


クレモリーが嬉しそうに笑う。


「私たちがずっとそばにいるからね」


ヴァネッサが微笑む。


「もう寂しい思いはさせません」


ファティマも優しく頷く。


「あなたの魔法についても、これからじっくり調べさせてもらうわ」


モルガーナは楽しそうに笑った。


四人の視線が僕に集まる。誰も悪意を持っていない。誰も僕を傷つけようとしていない。全員が本気で、僕のことを大切に思ってくれている。


だからこそ、逃げ道がない。こうして僕は、クレモリーだけでなく、三人の仲間たちにも監禁されることになった。


彼女たちは幸せそうに笑っている。僕は鎖につながれた状態で思った。


……一応、ハッピーエンドってこと?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。