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第0章:原初の爪痕(The Primordial Scar)

大地は単に揺れていたのではない。それは地球の腹の底から響く、深く、低く、地鳴りのような呻き声であり、無数の消えゆく命の鼓動と同調していた。


数千年前、世界は灰と深紅の色彩で塗りつぶされた、広大で混沌としたキャンバスだった。攻城塔はその自重に耐えかねて軋みを上げ、泥と鋼鉄の戦場へと崩壊していく。鉄と鉄がぶつかり合い、耳を劈くような金属の悲鳴が響き渡る。分厚い革の鎧を身にまとい、乾いた汗と燃え盛る城塞の煤で顔を汚した男たちが、実の兄弟の胸に槍を突き立てていた。軍馬は恐怖に嘶き、打ち捨てられた盾や折れた弓を踏みにじる。


燃え盛るオレンジ色の炎の海に飲み込まれた都市の中心で、一人の母親が崩れかけの石壁に背を預け、我が子を胸に抱きしめていた。赤子の高く、絶望的な泣き声が立ち込める煙を突き抜けたが、その儚い音は、遠くで物見櫓が崩落する轟音にかき消されていった。人々は目的もなく走り惑い、その目は捕食者に追われる獲物のような、狂気的で原始的な恐怖に狂っていた。燃える背景に影が長く伸び、黒く染まった空からは、鉄のイナゴの災厄のように矢の雨が降り注ぐ。


どこにも救いはなかった。北の凍てつく峰々から、南の不毛な大荒野に至るまで、大陸は終わりなき、息の詰まるような紛争の連鎖に囚われていた。空気は血の混じった銅とオゾンの臭いがした。まるで人類の唯一の存在理由が、自らの身体を血まみれに引き裂き合うことであるかのように。


しかし、人間の矮小な残虐さなど、上空から見下ろしている宇宙の無関心に比べれば、無に等しかった。


大気圏を覆う息苦しい煙の遥か彼方、凍てつく宇宙の真空の深淵から、岩石と溶融金属の怪物が星々を切り裂いて進んでいた。それは、有害な硫黄の黄色と、打撲傷のような深い赤の不穏な筋に彩られた、巨大な小惑星の破片だった。その大きさは地球の3分の1に匹敵する。それは単に漂っていたのではない。黙示録的な運動量で突き進み、戦争に明け暮れる青い惑星へと容赦なく引き寄せられていた。


衝突の瞬間、その衝撃を表現できるほどの音はこの世に存在しなかった。空がひび割れた。


小惑星が大気圏を突破した瞬間、その衝撃波は一瞬にして山脈を平伏させた。海は沸騰し、沸き立つ蒸気の巨大な壁を上層大気へと噴い上げる。それが地殻に衝突したとき、地球は内側へと座屈し、構造プレートを脆いガラスのように粉砕した。


人類の70パーセントが、最初の1時間で消滅した――目も眩むような熱線によって蒸発するか、あるいは数千トンもの移動した土砂の下に埋もれた。太陽の光を遮る暗く不浸透な冬の灰の雲が世界を覆い、その後に続いた苦悶の数ヶ月間で、さらに20パーセントが飢餓、凍てつく嵐、そして有毒な雨に屈した。


誇り高き、好戦的な帝国は消え去った。武器も、王も、そして慢心も剥ぎ取られた、わずか10パーセントの脆弱で傷ついた人類だけが遺され、洞窟や深い谷に身を寄せ合っていた。何世紀にも及ぶ苦痛に満ちた沈黙を経て、生存者たちは暗闇から這い出してきた。彼らは復興し、その数を増やした。ついに地球に平和が訪れたが、それは旧世界の絶滅という代償によって購われた平和だった。


しかしその平和は、悠久の時間という壮大なスケールの中では、ほんの数秒間しか続かない運命にあった。


1,703年前

世界は再び人口を増やし、その数はついに限界まで膨れ上がっていた。都市は再び雲に届くほどにそびえ立ち、かつての古代の骨の上には緑豊かな大地が広がっていた。しかし、小惑星は土壌の奥深くに、決して癒えない、膿み続ける病を残していた。


世界各地で、天体の岩石の破片が埋まった場所が変異を始めた。これら衝突地帯の周囲の大地は、不自然な放射性を帯びた黄色と深紅の色に染まり、血を流した。草は枯れて灰になり、樹木はねじ曲がって黒ずんだ骨のような爪へと姿を変えた。これらの呪われた土地の深い亀裂から、濃い硫黄の煙が物憂げに立ち上り、喉を焼くような重い金属臭を漂わせる。


最初、人類はいつも通りの行動をとった。適応したのだ。彼らは有毒な霧の境界線のすぐ外側に高い防壁を築き、その穢れた土地から慎重に距離を置いた。そして、地球のこの流血する傷口に、トラウマと永久的な損壊を囁くような名前を与えた。


――「傷跡地帯スカー・ゾーン」。


何世代もの間、スカー・ゾーンは毒の澱んだ池のように静まり返り、休眠状態を保っていた。あの、海が引き裂かれたあの日までは。


暗く、押しつぶされるような深海の圧力の底で、最大かつ最も不安定なスカー・ゾーンが噴火した。海水は沸騰し、潮を内側へと吸い込む巨大な渦潮へと変わった。そして深淵から、地平線を覆い尽くすほどの巨大な影が立ち上がった。


それが「竜王ドラゴンキング」だった。


その鱗は黒曜石と硬化したマグマの分厚い装甲であり、その眼には冷酷で古代の知性が宿っていた。それが翼を広げると、国々を丸ごと覆い尽くすほどの巨大な影が落とされた。その獣は、縄張りのためにも、生存のためにも戦わなかった。ただ、生きている世界そのものが自分の存在に対する侮辱であるという理由で、全てを虐殺した。


局所的な恒星の炎に匹敵するブレスで、竜は数秒のうちに海岸線全体を灰燼に帰した。軍隊を紙切れのように引き裂いた。わずか数ヶ月のうちに、地球上の全生命体――人間、獣、植物の96パーセントが灰と化した。世界は完全に消滅する寸前の絶壁に立たされていた。


その時、廃墟の中から6人の影が歩み出た。


彼らは、何世紀にもわたってスカー・ゾーンから滲み出していた目に見えない環境エネルギー――彼らが「魔法」と名付けた不安定な力――を真に具現化した最初の人間だった。この6人の魔法使いは、鉄の剣ではなく、現実の根本的な法則を武器にして戦った。彼らと竜王との決戦は世界の基盤を揺るがし、海を砂漠に変え、砂漠をガラスへと変えた。


ついに竜が倒れ、その巨大な心臓が大地を貫いたとき、生き残った人類の残滓は涙を流した。しかし、その勝利は6人の生存者を永遠に変えてしまった。竜を討ち取った瞬間に吸収した濃密で生の魔法が、彼らの肉体の時間を止めたのだ。髪の白髪化は止まり、肌の皺も消えた。彼らの老化は完全に凍結した。


人類は、この6人の不老不死の救世主に、存在の絶対的な頂点にのみ許される称号を捧げた。


――「最強の頂天ゼニス」。


現代

その古代の黙示録の遺産は、現代世界のあらゆる息吹を形作っている。竜王とスカー・ゾーンが残した魔法の放射線は、人間の遺伝子コードに組み込まれた。今日、世界人口の47パーセントが、生まれながらに魔法を発現する能力を持っている。


この不安定な社会の変動を制御するため、人類は厳格で容赦のない階層制度を確立した。スカー・ゾーンと、そこに挑む魔法使いたちは、7つの厳格なランクに分けられている。「ランク7」は絶対的な最底辺――最も弱く、脆弱な初心者、そして最も浅いゾーンを指す。「ランク1」は人類の到達点の極みであり、文明を守るエリート部隊にのみ与えられる。


そして、それらすべての遥か上、時間に触れられることなく、今なおゼニス級の魔法使いたちが君臨している。


過去の傷跡は今も開いたままであり、人類文明の境界線に黄色と赤の煙を流し続けている。世界は安定しているが、一つの恐ろしい真実の影の中で生きている。


――ゾーンはシフト(移行)を始めており、そして、最後の傷跡が開くその時を待っている。伝統的な和風邸宅のふすまは、畳の部屋を支配する絶対的な静寂を遮ることはできなかった。登録された魔法使いである17人の武道家たちが、完璧で硬直した一列を成して座っている。彼らは正座し、背筋を痛々しいほどまっすぐに伸ばし、全員が同じ仕立ての黒いスーツに身を包んでいた。その列の文字通り一番端に、佐藤健次サトウ・ケンジは座っていた。無造作に伸びた黒髪は、正面からは普通に見えるものの、襟足にかかる部分は少し長くて荒々しく、その強烈な漆黒の瞳に微かな影を落としている。彼の体躯は細身であり、黒いジャケットの生地の下では一見華奢に見えるが、石碑のように微動だにしなかった。


規律正しく並ぶ戦闘員たちとは対照的に、部屋の上座には大柄な肥満体の男が立っていた。太い腹を締め付ける高価な仕立てのスーツを着た彼の、磨き上げられた革のブーツが、板間の境界を耳障りに鳴らしていた。男の名はサルバトーレ・グレコ。彼の背後には、表情を一切崩さず、鉄の彫像のようにベルトの上で腕を組んだ4人の巨大なボディーガードが控えている。


列に並ぶ武道家たちは皆、手のひらに小さく繊細な陶器のさかずきを乗せていた。サルバトーレは冷酷に、ゆっくりと部下たちに頷いてみせた。ボディーガードの背後から、激しい湯気を立てる巨大で重い鉄の水筒を抱えた二人の男が進み出た。


男たちは事務的に列を下っていった。彼らはただ杯を満たすだけでなく、意図的に熱湯を溢れさせ、武道家たちの剥き出しの手の上に直接、沸騰した液体を浴びせかけた。


「あぐっ!」


一人の戦闘員がうめき声を上げ、沸騰したお湯が肌を水膨れにさせると同時に、その手が激しく震えた。陶器の杯が震える指先から滑り落ち、畳の上で粉々に砕け散る。


次々と、陶器の割れる音が部屋中に響き渡った。熱さは耐え難いものだった。百戦錬磨の大人たちが、傷だらけの赤い手を胸に抱え、激痛の悲鳴を押し殺そうと歯を食いしばっている。


そしてついに、男は健次の前で足を止めた。


激しい湯気を立てる熱湯が注がれ、杯の縁から激しく溢れ出して彼の拳を濡らした。湯気が健次の顔に直接立ち上る。しかし、健次は眉ひとつ動かさなかった。その細い肩が震えることもなく、黒い瞳が瞬きをすることもない。熱湯が肉を焼き焦がしていく中でも、彼の指は熱せられた陶器をしっかりと掴み、杯を完全に水平に保ち続けていた。


サルバトーレの得意げな笑みが消え失せた。その目が本物の衝撃に見開かれる。彼は重いブーツの音を響かせて歩み寄り、跪く健次の真ん前で立ち止まった。


おもてを上げろ」


サルバトーレは、見下すような声を絞り出した。


健次はゆっくりと頭を上げた。無造作な黒髪の隙間から現れたその眼差しは、あまりにも冷酷で不敵であり、サルバトーレは思わず半歩後退りした。


「てめえが新入りだな?」サルバトーレは傲慢さを取り戻し、あざ笑った。「いい度胸じゃねえか。どれだけタフか見せてみろ。それを飲み干せ」


一瞬の躊躇もなく、健次は沸騰する水の入った杯を唇に運び、流れるような一連の動作で中身をすべて飲み干した。そして、空になった無傷の杯を再び畳の上へと置き、その表情は完全にフラットだった。


サルバトーレの顔に、暗く、面白がるような笑みが戻った。彼は踵を返し、部下たちの方へと歩きながら、部屋全体に向き直って声を張り上げた。


「よく聞け!」サルバトーレの声が轟いた。「お前たちのうち、誰であれ俺に『心臓ザ・ハート』のコアを持ち帰った者を、俺の右腕にしてやる。それだけじゃない――現金1万ドル(約150万円)の賞金も出す!」


部屋に静寂が落ちた。誰も動かない。誰も立ち上がらない。武道家たちは、火傷を負った手をまだ震わせながら、純粋な恐怖の中で互いを見つめ合っていた。


その時、列の端にいた細身の少年が立ち上がった。健次は背筋を伸ばし、その少し長い、荒々しい髪が光を浴びた。


「俺が行きます」健次の声は、冷静で静かだった。「俺なら、やれます」


近くにいた別の魔法使いが、冷ややかな視線を健次に向け、心の中で吐き捨てた。

(このガキ、正気か? 多少の痛みに耐えられたからって、あの『心臓ザ・ハート』のコアを回収できると思ってんのか? 死体すら見つかりゃしねえよ。あいつの身体じゃ、あのゾーンを生き延びることなんて絶対に無理だ)


サルバトーレは喉の奥で低く笑い、そっけなく手を振った。「行け。必要な装備は何でも持っていけ。ただ、あのコアを俺のところに持ってこい」


健次が去るために背を向けると、サルバトーレはその遠ざかる後ろ姿を睨みつけ、狡猾で残忍な思考を巡らせていた。

(バカなガキだ。あいつはかろうじてランク7の魔法使いにすぎん。そしてあのハート・コアを持つ獣は、ランク6の危険度だぞ。この俺でさえ処理しきれん代物だ。ここに集めた武道家どもだって、全員がランク7の最底辺のクズにすぎねえ)


サルバトーレはポケットに手を入れ、強欲に思考を加速させた。

(今までは、ランク7のスカー・ゾーンからコアを回収するのが関の山だった。だが、もしあのガキがどうにかしてやり遂げれば、今日、俺は初めてのランク6のコアを手に入れることになる。それを最高級のポーションに精製して、最高入札者に売り飛ばしてやる。大金持ちだ)


部屋に残された、負傷した男たちに視線を戻すと、彼の笑みは完全に怪物そのものの形へと歪んだ。

(たとえ失敗して死んだとしても、そいつらの死体を回収して闇市場で臓器を売り払えばいいだけの話だ。どちらにせよ、金は流れ込んでくる。十分な資産が集まったら、こんなドブネズミの這い回るような国は捨てて、別の国へ移り住み、王様のように暮らしてやるさ)

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