表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desire Verse Online Next ~悪童と呼ばれた剣神、次の世界では悪目立ちせずに過ごしたい~  作者: 廿楽
第二章 『アフター・グロー』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/47

第45話 ざまあみろ

「……流石に、エリアボスともあろうエネミーが、ハメ対策をしていないなんてことは思ってなかったが。イカスミにしちゃあやり過ぎだろ」


「遠距離部隊、全滅です……。バレットさんのように直撃していないプレイヤーも、余波だけで消し飛んだというのですか……?」


「今はそっちの心配よりも自分たちの心配! 触手の速度がさらに上がってる!」



 タンク部隊がゴドーを残して、全員が触手に貫かれて砕け散る。アタッカー勢もかなりまばらになってきている。戦況が一気に逆転したといっても差支えがない。発狂によって防御力が激増したとでもいうのか、残り1割のHPが微動だにせず存在を誇示している。



「速すぎて触手への攻撃は悪手ですね……なんとか本体に接近しなければ」


「それこそ困難。近寄れば触手の密度が上がって、ああなる」



 カンナの視線の先、接近を試みたアタッカーの1人が、5本もの触手に絡め取られて引き裂かれる。即時の回復を許さない念の入れようだ。


 その間、残り3本が俺たちを食い破らんと暴れまわるのを、必死に抑え込む。比較的耐久にもステータスを振っているカンナはともかく、俺やエタニティは紙装甲も良いところ。一撃でも直撃すれば持っていかれる自信しかない。


 それに先ほどの超高圧水流ブレード、あれが次いつ飛んでくるかも分かったものじゃない。横薙ぎに振るわれれば、背後の街ごと俺たちは全滅する。実質次に発射されればその時点で負けが濃厚。チャージタイムがどれくらいか分からないが、一発限りの隠し玉と楽観視できる状況でもない。



「ちょっと賭けになるけど、私が行く。2人は3本の対処お願い」



 カンナの黒翼が力強く羽ばたき、上空へと舞い上がる。

 レベルが上がったとは言え、バレットのような無制限の飛行ではない。翼による飛行の持続時間はおよそ10秒。

 超高高度からの流星脚、空対地の最大火力の一撃への高度調整。スキル中の無敵モーションとシンプルな加速で迎撃の触手を振り切る算段か。



「それは構わんが、こっちはギリギリもいいとこなんだよなぁ!」



 継続ボーナスで得たスキルの中に『即応防御』というものがある。攻撃態勢に無い状態での反応速度にブーストがかかり、防御を容易にするというだけのものだが、今の状況ではこれ以上のスキルは無い。

 剣を強引に盾として扱い、触手の猛攻を防ぐ。本来の用途以外で装備を使用した場合、耐久値の減少が顕著にはなってくるが、背に腹は代えられない。


 天を仰ぐと、上空でスキル発動の発光が見えた。

 飛行時間の限界を終えたカンナの蹴りが、赤の軌跡を引く流れ星が、落ちる。


 迎撃の触手は5本。こちらで抑えている3本を除く全てがカンナへと殺到する。

 1本が攻撃判定を纏った爪先に触れて弾け飛んだ。次の2本の触手はその合間を抜かれ、防御の体を成していない。最後の2本は絡まり合い、本体の直上で即席の防護壁を形成する。そこにカンナが着弾した。



「……打撃は通りが悪い、だったっけ」



 彼女の渾身の一撃は、途中で粉砕した1本と、防壁としての役割を全うした2本、合計3本の触手を消し飛ばすことには成功した。それでも、絶命には僅かに届かない。



「あーあ。カッコつけたかったんだけどな」



 スキル後の硬直によって動けないカンナが、後方から追い付いた触手に捕獲される。空中に吊り上げられ、磔にされた彼女へと、クラーケンの巨体の口が向けられる。先ほどの高圧水流ブレードと同じ構え。

 足を潰された復讐ということか。前回の俺の時も過剰ともいえる報復を受けたが、こいつのAIはかなり執念深い性格をしているらしい。


 だが奴は知らないのだろう。自分が踏み潰してきたもののことなど。何度となく奴に殺され、それでも折れずに執念と狂気を目に宿した男のことを。



「ああ……ようやくそのツラを拝めた。覚えてる……ワケねえやな。だが俺はお前さんのことをこの数日間1秒たりとも忘れたこたァ無かったぜ」



 レンジャーの基本スキル、潜伏を解除した牙刃丸(キバマル)が、クラーケンの本体の目の前に立っている。これには流石にクラーケンも想定外だったのか、触手の動きがビタリと止まった。



豆丸(マメマル)、俺の相棒だがよ、お前の触手に立ち向かってなぁ。初めて水を見て怖がってたくらいなのに、俺を一瞬でも逃がすために嚙みつきに行ってなぁ」



 彼はぽつぽつと言葉を続ける。カンナを捕らえていた2本、俺とエタニティに相対していた3本の触手が全て眼前の男を排除するために殺到する。



「6回目くらいかァ? 目視してない船上のプレイヤーを、お前がどう認識してるかを確信したのは。目視していないと、動いてねえ相手を認識できねぇんだよな。水中なら水の流れの違いで、見えてなくても分かるみてぇだが」



 再び潜伏スキルで視界から消えた牙刃丸(キバマル)に対し、触手の全てが空を切る。



「どういう理屈か知らねえが、お前はプレイヤーを認識する。NPCが皇都から乗ってくる船を襲わねえのはそういうことだろ? だから本当は豆丸(マメマル)だってお前には見えてなかったはずだ。お前からしたらただ足を振った場所にいた、そうだろ?」



 独白のような、追及のような、言い訳のような。そんな言葉が淡々と流れている。クラーケンは明らかに焦燥した様子で、自身の周りの砂地を触手で滅多打ちにしているが、それが牙刃丸(キバマル)に当たることは無い。



「出会ってからたったの数時間、だけどあいつは俺の相棒だった。それをお前はゴミみてぇに殺しやがった。じゃあよう、お前もゴミみてぇに死ぬべきだ、そう思わねえか? 目には目をってやつだ」



 軽い音。クラーケンの本体に突き立てられたのは牙刃丸(キバマル)のナイフ。目に見えるほどのダメージはない。しかしこの攻撃によって触手の攻撃が一点に集中する。見えていなかろうが、ナイフを握る先に体はあるはずというシンプルな思考。だがやはり手応えがない。



「ポイズンエッジ、今の俺の唯一の攻撃スキルだ。くたばれイカ野郎」



 2本目のナイフが突き立てられる。クラーケンの残り僅かの赤いHPバーが、紫色へと変色する。毒の状態異常が付与され、定数ダメージが発生し始める。

 スキル後の硬直により潜伏が解除された牙刃丸(キバマル)に全ての触手が突き刺さり、彼のHPを吹き飛ばす。それでも彼は笑う。



「なあ、こういう時に、何て言うか知ってるか? ざまあみろ、だ」



 彼の体が砕け散るとほぼ同時、クラーケンのHPバーの色が失われる。

 最後の抵抗のように触手をプレイヤー達に伸ばしたが、届くことはなかった。


 水底のクラーケンはポリゴンへと身体を変じさせ、その命を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ