第28話 クエスト申請
神殿を出た俺とエタニティ、ユークリッドは、中央区にある冒険者ギルドの受付カウンターに来ていた。
カウンターには大勢のプレイヤーがごった返しており、パーティ募集の呼び込みも盛んに飛び交っている。
「しかし意外だ。お前がギルドを作るのに興味があるとはなあ」
「意外ですか?」
「『四神連合』に誘われた時も断ってたし、サービス終了まで結局どこにも所属したことなかったんだろう?」
「別に、大した理由は無いのですが……」
「まあそんなものだよねぇ。ぼくも特定のパーティとか入ってなかったし」
「ユークリッドはまた別の話じゃないか……?」
この少女の恐ろしいところは、巡礼の長旅を終えた後も、定期的に徒歩での放浪の旅を行っていたところである。
巡礼の旅の中で見られなかった街を、秘境を、絶景を観光目的で渡り歩く辻ヒーラー。行く先で出会ったプレイヤーと共闘したり、未知のクエストを発見したりと、彼女こそが本当の冒険者である、と呼ぶプレイヤーもいた。
「まあまた旅はしたいかな! 北大陸の樹氷原とかまだ歩けてないんだよね」
「そこにいるだけで冷気ダメージを受ける魔境なんだけどな、あそこ。クエストで一回だけ行ったけども、クリア後即帰ったくらいには過酷だったし」
「それも旅の醍醐味ってやつだよ。準備も含めて楽しまなきゃ」
本当に楽しそうに笑う少女だ。未知の場所への好奇心に満ちている。
それは、隣にいるエタニティの表情とは対照的。
「お兄様」
「何?」
「わたくしが、このクエストを終えてギルドを立ち上げた時、お兄様はわたくしと共に来てくださいますか?」
いつになく真剣な表情。
彼女のこんな真剣な表情を見たのは、それこそ件の同居騒動の時以来だ。
彼女の心境に、どんな変化があったのかは分からない。しかし今まで誰かとつるんで遊ぼうとしなかった彼女が、ギルドを作るという。
兄は、妹のわがままを聞いてやるものだ。
「いいぞ。でもその前に、まずはクエストをクリアするところからだ」
エタニティの、その奥の永久の表情がぱっと輝いたように見えた。
「ええ、その言葉を聞けただけでわたくし、勇気凛々です」
「わあ、ぼくアニメ以外で聞いたの初めてかもしれない、勇気凛々」
「茶化さないでくださいっ」
「とはいえだ、ダンジョン探索に3人で挑むには、ちょっと厳しいものがあると思う。剣士2人に魔術士1人だと探索要員いないし」
初期から挑めるダンジョンとは言え、トラップの類や奇襲の対策などを怠ると酷い目に遭う。これはデザバス時代に痛いという程思い知らされている。
そこで俺はフレンドへとメッセージを送る。
ダンジョンアタック行くから、時間合ったら付き合って、と。
程なくして、了承の返事を受け取った。
「人脈って大切だよなぁ」
「リリース2日目で、もうレンジャーのフレンドに当てがあるんだ?」
「昨日一緒にパーティを組んだ子らでね、神官とレンジャーの2人だ。デザバス未経験だから優しくしてやれよ、エタニティ?」
「わたくしを何だと思っているのですか、お兄様」
「外面だと平気そうに見えるけど超絶人見知り」
「オブラート、オブラートを要求します!」
「あははっ。エタニティって初対面の時は結構かっちりした子だと思ったけど、そっちの方が自然な感じがするね」
「ユークリッドさんも!」
ユークリッドと2人がかりでエタニティを弄って談笑していると、予想よりも早く卯月、闇食みの2人が到着する。
「セツナさん、今日はお誘い感謝です! そちらの2人が今回のパーティメンバーですか? はじめまして、卯月です、職は神官です!」
「ちょうどレベリングもキリ良かったし、ダンジョン、楽しみです。私も自己紹介を。闇食みです。レンジャーやってます」
小柄な人間男性神官、卯月と、火竜人のハーフのレンジャー少女、闇食み。
レベリングも順調なようで、昨日のサンダーバード戦、ラストアタックで経験値ボーナスを得た俺と同じレベル5まで2人とも上がっている。
ちなみにエタニティとユークリッドは現状レベル2である。
「はじめまして。エタニティ・アサルトバスター、人間で剣士です。本日のクエストの募集主になります。まずは参加に感謝を」
「ぼくはユークリッド・カノンだよ。人間で魔術士、僧侶の掛け持ち。2人とも、今日はよろしくね」
お互いに自己紹介を行ったところで、辺りがざわつき始める。卯月や闇食みはデザネクからのプレイヤーなので知りようもないが、エタニティとユークリッドはかなりの有名プレイヤーだ。
我先にと周囲からパーティへの加入を申請されるが、人見知りモードに入ったらしいエタニティが全員笑顔で門前払いしている。貼り付けたような笑顔がミリも動かないのが怖い。
ユークリッドはどうも旧知のプレイヤーもいたらしいが、エタニティを慮ってか断っていた。
「……セツナさん、あの2人って有名人?」
「まあ、デザバスやってたプレイヤーなら大体みんな知ってるかな……」
「あー、ゴドーさんやふぉーりなーさんみたいなものか。……大丈夫ですかねセツナさん、ヤミはともかく俺虐められたりしませんかね……?」
「ユークリッドは人畜無害だから大丈夫。エタニティは人見知りするのと、慇懃な態度であんまり近寄らせようとしないけど、根は良い奴だから」
「ちょっと卯月。なんで私はともかくなの」
「だってダンジョンならレンジャーは重宝されるだろ。俺の方は、ユークリッドさんと微妙に役割被るんだから」
「気にしなくていいと思うぞ。メインはアタッカーしたいらしいし」
「そうなんですか? 良かったぁ……」
あらかたの加入申請を断ったらしいエタニティが、クエストカウンターへと駆けていく。応対が面倒くさくなったのだろう。5人でのクエスト申請を行っている。
元『凶剣』、剣士、エタニティ・アサルトバスター。
元『癒神』、魔術士兼僧侶、ユークリッド・カノン。
元『剣神』、剣士、セツナ・リンドー。
神官、卯月。
レンジャー、闇食み。
ダンジョン探索クエスト、『集いし星』が受注された。




