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第1話 サービス終了1時間前

初投稿です。拙いものではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。

 その日、街並みは派手にライトアップされ、夜空には花火が残光のエフェクトを散らしていた。空に表示されたモニターにはデザバスでは知らない人はいない有名プレイヤーの1人が酒酔いのバッドステータスを表示させながら声高らかに最後のひと時に華を添えていた。


「さあさあ皆様方、泣いても笑っても今日でおしまい! 私たちが愛した『Desire Verse Online』のサービス終了時間まで残すところあと1時間となりました! 今日も今日とてデザイアストリームJP、MC実況を務めますはギルド、『四神連合』の『祭神』、シンシア・カートレットでっす!」


 『Desire Verse Online』における祭りの象徴。各種イベントのMCマイクを一手に握り、男性プレイヤーに絶大な人気を誇るシンシアは今日もまた絶好調である。それが片手にジョッキを握り、悪酔いによる顔の紅潮があったとしても。


「残しておいてもしょうがありませんよ! お酒は今のうちに飲んでおきましょう皆さん! とうとうゲーム内でも酒カスが露呈してしまいましたがお姉さんは気にしません! さあさあ、銀ちゃんも飲んで飲んで」

「はい、お相手は『四神連合』の『槍神』、銀星(ギンセイ)です。心配せずともシンシアの酒癖の悪さについては皆様方理解されていると思います。一応運営から我々にマイクを渡されている以上、俺まで飲み始めたら収集が付きませんのでシラフでやらせていただきます。」

「あーん銀ちゃんが冷たいー!」


 モニターを見上げるプレイヤー達は見慣れた夫婦漫才に苦笑し、手元の杯をあおる。皆が別れを惜しみ、語らい、今後の道行きを教えあっている。それはこの街だけでなく、あらゆるワールドで同じであった。

しかしそのような時でも、戦いに身を置く者もいた。


「はいはいはい! それじゃあ皆様方が思い出を語らっているところ申し訳ないけれども! こんな世界も終わろうかというその時に、神に挑む我らが弟くんの雄姿をご覧くださいっ! 『悪童』、クロエ・アサルトバスターが『武神闘宴』に挑む模様でっす!」

「一応最後の公式イベントMCなのに身内ネタで申し訳ありませんが、しんみり終わるのはこの世界の流儀じゃありませんよね? 9人しか存在しない神の職にこの最後の瞬間まで挑もうとしている男を、どうか応援してやってください」


 モニターに映る二人の姿がワイプになり、画面には一人の剣士が映る。大きな扉の前でポーション類をがぶ飲みし、バフ効果のエフェクトが空の花火よりも煌めく。彼の後ろには野次馬とおぼしき複数人のプレイヤーの姿。中継ドローンに気づいたのか何人かがはしゃいでいる。

振り向いた剣士は不機嫌そうにモニター越しのシンシアへと怒鳴る。


「人がこれから大勝負に挑もうって時に茶々入れんじゃねえよシンシア! 普通に各ワールドの様子とか映してろ!」

「いえいえクロちゃん、そりゃあ各ワールドに散ってる中継ドローンの映像はこっちも把握してるけどさぁ、ここより面白そうな絵が撮れそうなところなかったんだって。そんな怒らないでよー」

「あーもう締まらねえ……ミュートだミュート」


 手元のコマンド操作でラジオ音源をミュートにしたらしい。大扉をこじ開け、クロエは決戦の舞台へと上がる。すげなく返されたシンシアは気を取り直して言葉を続ける。


「あっこいつミュートしおった可愛い奴め……っと、弄るのはこれくらいにして。知ってる人も多いとは思いますが! 『武神闘宴』のクエストについて銀ちゃんから説明をどうぞ!」

「はい、『武神闘宴』とは六大神が一柱、武神ゼルギオスの分身体に挑む戦闘クエストです。最大6人で挑むクエストではありますが、彼の場合はソロ、武器戦闘職の頂点に至るための挑戦となります。クエストの特徴としては分身体の性能がプレイヤーのステータス配分や所有スキルを参照して変動するというものですね」

「ははあなるほどお詳しい……それもそのはず彼もまた神の職を持つ男! 武神ゼルギオスの眷属神、槍神を戴く彼こそが『武神闘宴』の初回ソロ制覇者! なお弟くんの『武神闘宴』その戦績は99戦全敗! つい3時間前にも黒星が増えています! 完全治癒霊薬エリクシールが切れたとお姉さんに泣きついてきた姿に私は涙がちょちょぎれそうで!」

「今更使わないからタダで良いと言ったのに律儀に金銭トレードを譲りませんでしたね。『悪童』の呼び名は捨てた方が良いんじゃないでしょうかクロエは」


 クロエもまたデザバスにおける有名プレイヤーの一人。数年前の彼の行いを知っている古参のプレイヤー達は、ある者は苦笑し、またある者は感慨深く頷いている。モニターに映る彼の前に、荘厳な雰囲気を纏った巨人が生成される。その手に携えるのは長大な槍。


「さて、他愛の無いおしゃべりはこの辺りにしておきましょう! ゼルギオス分身体がPOPしました。槍持ちAGI偏重、クロちゃんが一番苦手とするタイプです! これもしかしなくても仮想敵としては銀ちゃんなんじゃないですか?」

「彼の挑戦を何度も見ている私から言わせるとあれならまだ私の方が強いです」

「これはまた手厳しい!」


構えをとる武神ゼルギオスの分身体にクロエは語り掛ける。


「ようカミサマ。リベンジさせてくれよ」

「この期に及んでまだ神を諦めきれぬか若き子よ」

「当たり前だろ。不本意ながら今回はギャラリーがワールド中にいるらしいんでね、だせえ終わり方は出来ないさ。神よご照覧あれ、ってな」

「我の最後の相手に相応しい宴とならんことを願う」

「その首貰い受けるぜ」


 終わりゆく世界で最後の戦いが、始まる。

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