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第二十八話 あ。持ってっていいよ別に。

キョンシーの強襲を乗り越えた後、戦利品を盗賊ギルドに盗まれた。

「ちょっと待て!」

「え?」

盗賊ギルドと名乗る者たちの間をすり抜けて行こうとしたフーガとカノンとシエルは、盗賊ギルドの男に呼び止められて振り返った。

「いやいやいや、持ってっていいよ別にじゃないよ。なんでそんな冷めてんの。決闘で取り返すもんでしょ」

「いやまぁだって……」

「それ一枚だけだと何にもならないっぽいですし……」

「言うて数枚集めても誤差だからねー」

「はぁ!?じゃあ何アタシたちゴミ押し付けられたわけぇ!?」

「そっちが盗ったんだろうがよ!」

森の深くのど真ん中。魔族と人間の声が響いている。それを落ち着かせるように、女の肩に乗っていた小さな鳥の魔族が口を開いた。

「まあまあ。落ち着くドギャみんな」

「ドギャって何だ」

「ドギャってなんですか」

「ドギャって何」

「ワレワレは紳士だ。まずはワレワレから名乗るべきだドギャ」

「ああ、確かにそうだな? こんなふうに取り乱している場合じゃない」

そしてその盗賊ギルドと名乗る者たちは、その場で各々ポーズを取りだした。

「なんか始まりましたね」

男が黒い髪をかき上げ、黒い瞳を向ける。

「オレの名はノア。この世界に()()し、世界を股にかける盗賊となった者」

「今転生っつった?」

女がぱちっとウインクをし、その場に一回転して長い黒髪をふわりとさせる。

「アタシはエマ。()()により授かった能力で世界を盗む者」

「うん。転生って言ったね」

魔族はノアの頭の上に乗り、バッと翼を広げる。

「ワレはピウモッソ。元Top-1にして魔族きっての素早さを持った盗賊だドギャ」

「Top-1って言いましたよね今度は?」

「オレたち盗賊ギルドには、盗めないものなんて無いのさ!」

ノアはぐるりと一回転し、フーガたちを指さして決めポーズを取って見せる。しかし、そこにはもう遠くに見える三つの影しか無かった。

「ヤバイヤバイヤバイ転生者二体とTop-1とか駄目だよ決闘しても勝てねぇよ絶対」

「師匠!師匠!武器と魔石返して!この辺にいるでしょ!?」

「Top-1はわかるんですけど、転生者ってヤバイんですか!?」

「とんでもないよ!人間とは考えられない力に魔力に、強い技能もある!」

「ヤバイじゃないですか!早く逃げないと―――」

「決闘に逃亡なんて選択肢は無いぞ!」

逃げていたはずの三者。その声は前方から聞こえた。走って疲れたフーガとカノンに対して、余裕の表情を見せる盗賊ギルドがいる。

「恐れをなして逃げるのもわかる……だ、が? 決闘の申し込みは『はい』と答えるのが筋だ!」

「こっちは決闘を申し込まれた覚えもないからだよそっちが話進めてるだけで! こっちは先に行きたいとこがあるの!」

「厄介な性格の上に強いって本当にめんどくさいですね」

「そんなにオレたちとの決闘が嫌か。見た目とは違って強いオーラがぷんぷんだったからしつこくしたんだけどな」

ノアは腕を組み、フーガ、カノン、シエルと視線を動かす。少し棒立ちしたまま目を閉じ、考える素振りを見せてから開いた。

「じゃあー、もうアレだ。じゃんけんで良い」

「……は?」

「だから、じゃんけんで良いって。オレたちは寛容だからな」

「お前怖いよほんと!?」

「ほら、そっちの人間。じゃんけんだ」

「ああ、うん」

シエルは歩み寄り、ノアの前に立つ。

「じゃやるぞ。じゃーんけーんぽい」

フーガの視線からはシエルの背中で隠れて手が見えなかった。

「どう? 勝てた―――」

「よっしゃーい! ホラ決闘だよ決闘やってみろえぇ!?」

「あは」

「ここで負けてじゃねぇよ」

「まぁー、でも大丈夫。きみたちは先に行ってても大丈夫だよ」

そう言うと、シエルの前に一本の刀と赤い球状の魔石が飛んで来て地面に落ちた。

「師匠はちゃんと見てくれてるんだから」

そう言ってゆっくりと刀と魔石を持ち上げ、じっくりとそれの様子を確認するように見る。

「まあ、準備があれば僕一人にきみら三人で五分ぐらいにはなると思うよ?」

次回 第二十九話『本筋はお前らじゃないからな。ルースの街に行くことだからな。』

4/18 (土) 20:00更新予定

作者の都合により4/11はお休みとさせていただきます。

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