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其の一 出逢い2

 樹上の男と会話ができた事に気を良くした俺は、笑いながら男に向かって手を伸ばした。

「じゃ、マサキ。そこから降りてきてくれないか?見上げて話すのは疲れる」

 俺がそう言うと、彼は少し躊躇った後で樹から飛び降り、俺の横に音も無く着地する。

 そうして間近でみた彼は俺より頭一つ分背が高い。

「……やっぱり少しは見上げなきゃいけないか」

 聞こえないように呟いたつもりだったのに、見合った彼の目には疑問の色が浮かんでいた。

 それには薄く笑うだけにして足元に落ちていた枯れ枝を拾って彼に差し出す。

「名前、どんな字書くんだ?」

 思ったより素直に俺から枝を受け取った彼が、その先で地面をなぞって字を書いた。

『壮軌』

「へぇ、変わってるな」

「そうなのか?」

「その字で《マサキ》って読むのを聞いたのは初めてだ」

 ふと視線を感じて顔を上げると、壮軌が俺をじっと見ていた。

 やはりその瞳は黒に近い深く濃い緑色をしている。

 同じ日本人……、いや、最近街の方でよく見かけるという外国人でも、彼のような瞳は聞いた事が無い。

 その姿は今はもう見ることのなくなった(さむらい)のようであるのに。

「隆生」

 低くて心地いい声が俺を呼ぶ。その声にはっと我に返った。 

 どうやら彼の顔を見詰めたまま考え事に耽っていたらしい。

 そのことに気付いた俺の頬が熱くなり、急に恥ずかしくなって弾かれたように顔を逸らした。

「なに?」

「俺は、ここを出て行かなくてはダメか?」

 少し沈んだ声で壮軌が俺に問いかけてくる。

 理由もわからないまま高鳴る鼓動を誤魔化すように伸びをして、顔を上げた。

「どこか行くあてはあるのか?」

 俺の言葉に彼が困ったような表情になる。


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