其の一 出逢い3
「いや……」
「親兄弟は……って、壮軌は人間なのか?」
「俺はヒトではないよ。妖の類だ」
自分で自分のことを妖だと言い切る壮軌に若干驚きながらも、俺は次第にこの壮軌という男を傍に置いておきたいと思うようになっていた。
それが、どういった類の感情からきた物かはわからない。
だた、彼と離れてはいけない。と囁くものがある。
「そっか。まぁ俺も似たようなものだし、行く処がないならここに、俺の処に居ればいい」
そうと決まれば話は早い。
俺は壮軌の返事を待たずに袖を掴むと屋敷へと歩き出した。
「おはようございます。隆生さん」
「おはよう、弥市」
自室の傍まで戻ってくると、雨戸を開けていた弥市がいた。
「また桜の木の所に行ってらしたんですか?おや、そちらは?」
雨戸を戸袋にしまった弥市が俺の傍らに立つ壮軌に気付き、不信感も露に彼を見る。
「この人は壮軌って言うんだ。今日から一緒に住むよ」
「そうですか。わかりました。
では絹に言って朝餉の数を増やします」
「うん、よろしく頼むよ」
弥市は自分の立場をよくわきまえていて、俺の決めた事に滅多なことでは反論しない。
壮軌の事もそうらしく、弥市の顔から不信感は拭われていた。
「今のは?」
「あぁ、弥市の事?」
弥市の姿が見えなくなってから壮軌が口を開いた。
「彼は俺の世話をしてくれてるんだ」
こんな老いる事の無い身体になった時、俺の世話をしていたのが弥市の祖父だった。
それから今に至るまで、親から子へと受け継ぎながら俺の面倒を見てくれている。
たとえそれが本宅から任された仕事だからという責務からだとしても、俺を気味悪がらずにいてくれるこの家族にはとても感謝していた。
「彼は人間か」
「そうだよ。普通の人間だ」




