表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の天使、金の魔法使いを婿に迎える  作者: ジュレヌク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/50

第二十四話ポンコツ魔道士メガネを取る

 裁判も片が付き、マックスとシャーリーの距離も少しずつ近くなってきた。馬車に座る際も、開いていた二人の隙間が拳2個分から1個分に減った。

 そうして、やっと、ある事を実行する日が来た。


「大丈夫そう?」

「は、はい」


 シャーリーは、声を上擦らせながらも、なんとか答えた。目の前には、眼鏡を取ったマックス。


「やっと、素顔で会えた」

「な、長い間、ごめんなさい」


 今日は、エンジェル伯爵家にマックスを招き、結婚式の日取りや招待客の選定をする予定なのだ。


 最近では、ジポーノ国の桜姫や髪結が縁で仲良くなったテルルなど、親しくする人が増えてきた。


 だからこそ、誰を呼んで誰を呼ばないのかを決めるのは、かなり頭の痛い所であった。


「俺の方は、このリストに書かれた10名で十分。他は、全員、シャーリーの友達でも良いよ」


 ニッコリ微笑むマックスに、シャーリーは、やや背中を反らせながら、


『微笑むマックス様の眩しい事!』


と心の中で叫んでいた。


 しかし、それ以上に破壊力があるのは、『シャーリー』と呼び捨てにされる事だ。つい2週間前、婚約して半年が経った日、もうそろそろ敬語を取ろうと、マックスに言われた。


「そんなの、直ぐになんて、無理です!」


 必死に抵抗したが、


「それは……悲しいな」


マックスのあざと過ぎる悲しげな顔に、了承するしかなかった。


「ねえ、シャーリー」

「それでね、シャーリー」

「これもいいね、シャーリー」


 一旦許すと、マックスは、彼女の名前を連呼するようになった。


『ちょっと、何処で練習してきたのよ!』


 滑らかに名前を呼び捨てるマックスに、シャーリーはアワアワと焦りまくり、一人挙動不審になってる。その背後では、カサンドラが爆笑していた。


「カサンドラ、笑わないで!」

「シャーリー様、八つ当たりは止めてください」


 暫く、こんな状況が続きそうで、シャーリーの胃はキリキリと痛んだ。そして、もう一つの心配事が頭を過ぎり、マックスに直接聞くことにする。


「あの・・・裁判の方は、どうなりましたか?」

「うん、時間はかかったけど、一応、判決は、下ったよ」

「どんな?」


 シャーリーは、実質的被害を被っていない為、なるべく穏便に済めば良いなと思っていた。


「ドワンゴとその妻は、既に社会的制裁が加えられたとして、情状酌量。家財を裁判所の仲介を経て、適正価格で売却し、支払いが滞っていた仕事先へ優先的に渡されることになった。残りは、ドワンゴ達が受け取れる」

「ラビナさんは?」

「何故か、俺に怯えるようになってさ」


 マックスは、最後に会った時のラビナの変わりようを思い出す。顔は強張り、視線すら合わせず、逃げるように去っていった。


「怯える?」

「うん。まぁ、どうでも良いんだけど、一応うちの家に関することは、不問にした。確かに、お金を貸してもらって領民が助かったのは事実だし。ただ、クイーンに対する暴行に対して、三年間、厳しいと噂の北の修道院へ預けられることになった」

「まぁ」


 北の修道院と言えば、社会奉仕と神への祈りを軸に、厳格な戒律を遵守しながら必要最低限の生活をする所。


 信仰心の篤いシスターは、きっとラビナに酷い事はしないはずだが、贅沢に慣れた彼女には、かなり辛い修行になりそうだ。


「その話は、もう、お終い。ここからは、俺達の話をしよう」

「あ、はい、マックス様」

「いつになったら、様が取れるの?」

「それこそ、無理です。でも・・・」

「でも?」

「結婚したら、『旦那様』と呼ぶから、不都合ありませんでしょ?」


 シャーリーは、顔を真っ赤にしながらも、プイッと顔を背けて立ち上がり、庭に逃げることにした。


 背後から、マックスの変な叫び声とカサンドラの爆笑が聞こえてくる。


『私だって、やられたら、やり返すんだから!』


 自分も相当な精神的ダメージを受けたが、マックスに仕返しできてシャーリーは満足だった。

 


 帰宅後、マックスは、食卓に突っ伏しながら、


「俺の婚約者が、可愛過ぎる。どうしたら良い?」


とつぶやいた。


「それ、俺に聞く?」


 弟のスコットは、心底呆れ果てた顔でマックスを見た。そして、食べ掛けのサンドイッチを皿に置くと、盛大にため息を吐いた。


「ずっと、言おうと思ってたんだけどさ」

「何だよ」

「マックスって、ポンコツな」

「はぁ?」

「シャーリー様が、可愛いのも、綺麗なのも、優しいのも、素敵なのも、お前の婚約者だからじゃなくて、シャーリー様だから。それ故に、一々俺の物的アピールを弟相手にする必要ナッシング」

「なっ!」


 絶句するマックスを放置して、スコットは、再びサンドイッチを食べ出した。


「最近、お前の毒舌、磨きがかかり過ぎ」

「はぁ?別に、そんなもん磨いてねーけど。それより、さっさと結婚して出てけよ。お前の部屋、俺が使うから」


 ブリリアント男爵家は、年功序列。

子供部屋で一番大きな部屋は、長男のシャルト。次が、サックス。その次が、マックス。


 スコットは、末っ子キリックが生まれてから、二人部屋に格下げされた。だから、ずっと、兄の誰かが独立するのを待ち続けてきた。


「シャーリー様に、結婚、半年早めてもらえねぇの?」

「彼女の卒業式まで、無理だ」

「なんでー、別に、学生結婚したって良いだろ?そんなんじゃ・・・他の男に取られるぜ」


 スコット独特の、意地の悪い笑み。

マックスの焦りを見透かしているような、そんな表情に、舌打ちをした。




 一方のシャーリーは、マリア達を連れて桜姫の元を訪問していた。


『しゃくりゃしゃま、こねぇこ、よしよしねー』

『しゃくりゃしゃま、こねぇこ、もふもふねー』


 桜姫は、子猫を抱えて微笑むマリア達に心が癒される。未だに、滑舌の悪い子達だが、一生懸命ジポーノ語を覚えようとしてくれる事が嬉しかった。


『妾にも、触らしてたも』

『どーじょ』

『あー、まりゃ、じゅりゅいー、しゃらが、わたしゅのー』


 子猫そっちのけで、争い出した二人を、後ろから来たシャーリーが抱きしめた。


『こーら、だめよ!桜姫様が、ビックリなされているわ』

『ごめんなしゃいなの、ねー、まりゃ』

『ごめんなしゃいなの、ねー、しゃら』

『調子がいいわね。あとで、おしり、ぺんぺんよ』


 二人を両脇に抱えたシャーリーは、叱りながらも、愛おしそうに、マリア達を見つめている。


 桜姫は、その様子に母を思い出した。妹が出来て拗ねてしまった彼女を、苦笑しながらも優しく抱きしめてくれた。


舎利シャーリー、妾も抱きしめて良かろうか?』

『二人をでしょうか?』

『其方でも、良いぞ』

『まぁ』


 シャーリーは驚きながらも、マリア達を桜姫の両側に据え、両手を大きく広げた。


『『わーーーーーい』』


 マリア達は、桜姫の両腕を取ると、そのまま3人一緒にシャーリーの腕の中に飛び込んだ。


ポプン

ギュッ


 シャーリーの腕に抱きしめられ、桜姫は、その暖かさに目を閉じた。


『あぁ・・・母上と同じじゃ』


 優しさに包まれ、桜姫は、懐かしさにポロリと涙を落とした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
スコット君の指摘はごもっとも(*´艸`*) マックス君は意外とシャーリーちゃんに関しては ぜーーーんぶっぽんこつofぽんこつ君なんだよねw 可愛いと言えば可愛いんだけどねーーっっ 敵さんは身内だけで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ