2.とある国の、終わりの始まり2
ブライトは『梟』なる人物についてもう少し詳しく知りたかったが、そこまで喋ってはくれなかった。相手がここまで愚かでなければ少しくらいは粘っても良かったが、こんな男たちに情報を渡すような暗殺者はいないだろうと察して動くのを辞めた。
その代わりに、すでに牢を出て自由の身になっている。ギャアギャアと騒ぎながら自分を探す声が聞こえるが、そんなことに構いはしない。興味もなければ関係もない話だ。
「ねぇ。君、手慣れすぎてない?」
「ちょっと。さっきも言ったけど、ケリーさんは声出すの禁止。僕は声もこんなに可憐で可愛らしいけど、あなたはそうじゃないでしょ」
脱走犯二人は、適当な部屋から鬘と服を掻っ払って女装をしていた。
ケリーは女にしては背が高いので少しばかり隠れるのに苦労はするが、ブライトは愛らしい女の子そのものに見える。お団子にした髪も愛くるしい顔に合っている。
「東宮は軟禁されていたな……。まぁ、あの皇帝に比べれば使いようもあるかも」
ケリーはそう言って笑みを浮かべるブライトのことを「うわぁ……」という顔をした。しかし、彼もまた皇帝に仕える身であるからだろう。静かに頷いた。
根が小市民なので慣れないが、皇族と近いような権力者はこういうものだというのは理解している。そういうところもハロルドと似ているかもしれない。
ケリーは周囲に結界を張り、それに防音の魔法も刻む。
「これで少しくらいは話しても大丈夫だろう?」
「まぁ……大声出さなければ」
「よし。それでなんだけど、梟と言われる存在に少しばかり覚えがあるんだけどいいかな?」
思わぬところからの情報にブライトは不思議そうに目をぱちぱちと瞬かさせている。
そんな様子にケリーは少しばかり不服そうなジトッとした目を向ける。
「忘れられがちだけど、僕だってうちの陛下の側近なんだよ。少しばかりマズいことにも片足突っ込んでるんだから、知っていてもおかしくない状況だろう?」
「いや。忘れてないよ。僕はあなたのこと、女帝の側近でなければ真っ先に殺しておくべきだと思っているから」
「ころ……!?」
息子の友人からしれっと口に出された言葉に、ケリーは目を白黒させた。ブライトからすれば「当然でしょ」としか言えない事実なのだが、本人に自覚はなさそうだった。
「それで、どういうやつなの?」
おそらく、あの場にいた榛色の少女がそうだろうと見当をつけながら、ブライトはなんでもないように聞いた。
「フィアンマ帝国の外れに知恵者と呼ばれる梟の氏族があるんだ。そこの族長の娘がまぁ……強者と戦うのが好きな子だった。最終的に傭兵になって集落を出たと聞いているけど……僕はその子が『梟』なんじゃないかなって思ってる」
「まんまじゃん。出自じゃなくて能力とかわかんないの?」
「そちらは彼女の『身内』の方が詳しいんじゃないかな」
ケリーが窓の外へ視線を送ると、鳥の羽ばたくような音が聞こえた。『身内』とやらは案外近くにいるのだろう。
ケリーを見ながら、ブライトはやっぱり「コイツ、女帝の庇護がなければ本当に殺しておくんだけどなぁ」と心の底から思った。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
今回は外見はお団子チャイナ美少女なブライトに妖艶美女なケリーパパを添えてお送りいたします。
4巻の女装ブライト挿絵に味を占めたとかそんなわけでは……(目逸らし)
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