29.試練の先
ハロルドたちはこの先にも何らかの試練があるものと考えていたが、猫に案内された場所には大きな球体が回る他何もなかった。
「何だこれ」
「ダンジョンコアでもないみたい」
鑑定をしても名前が塗りつぶされたようになっている。
ただ一人、ロナルドだけが興味深そうに球体を眺めていた。そして、徐に手を突っ込む。止める間もなかった。
そして、何かを掴んだのか一気に引き抜く。
そこには、剣があった。
それは、ロナルドに溶けるようにして消えていく。
「今のは、何……」
「それが聞きたいのは俺だろ。つーか、剣くれるんじゃねぇのかよ」
ロナルドは唇を尖らせて「消えるんじゃ意味ねぇだろ」とボヤく。
しかし、ハロルドは先ほどの剣に覚えがあった。
あれは、ロナルドへ渡すために現在制作が急がれている聖剣と同一の見目をしていた。
これは、フォルツァートからの何かしらの催促だろうか。そうは思うものの、もうあの剣はハロルドの手を離れている。できることならばこの男と関わることだって避けたいのだ。催促などされたところで差し出すものなどありはしない。
「お前らもやってみれば?」
親指で球体を指すロナルドに「俺はいい」と返すと、足元で猫が鳴いた。本当にいいのか、と問うようだった。
しかし、どうにもそうする気になれない。アーロンも「別にいい」と言ってスノウを抱き上げている。
「そんじゃ、帰るか」
ロナルドがもう一度、球体に手を入れると、それは光を放ち、いつの間にか全員がダンジョン前にいた。
それは、中に着いてきていた聖騎士たちも同様である。
「猫、着いてきちゃったの!?」
「にゃ」
ローズの驚いた声にさも当然だと言わんばかり猫は返事をする。ハロルドにすりすりと頬を擦り付けている様子を見るに離れる気はなさそうだった。
「一体、何が起こったのですか?」
シャルロットにそう問われたハロルドたちは中での様子をきちんと説明した。
しかし、ロナルドはそんな気がないのか、すでに馬に乗って走り出していた。多くの付き人たちはそれを慌てて追いかける。そのため、カロルが残ってハロルドたちの説明を聞いている。
大変、よくわからない状況に追い込まれていた。




