25.生意気勇者
結局、安全第一のはずのハロルドたちの方が早く次の階層への扉に到着するのが早かった。
「俺一人ならこっちの方が早かったってのに」
そう文句を言うロナルドを見て、カロルは溜息を吐いた。
確かに早かったかもしれないが、無傷では済まなかっただろう。今、ロナルドに傷がないのは聖騎士の数名が治癒の魔法をかけていたからである。
とはいえ、それを「意味がない」と言ってしまえる程度には勇者ロナルドは腕が立つ。
(やっぱり、オレが聖騎士なんてなるべきじゃなかったなー)
カロルはそんなことを思いながら、同僚と女神フォルテの神子を見比べた。
同僚たちが苛立っているのに対し、向こうはかなり集中してことにあたっている。冷静に人の意見に耳を傾けるだけで、こうもギスギスしないものなのだな、とどこか他人事のように思った。
「カロル殿、次の階層へ向かいますが準備はよろしいですか?」
「もちろんですとも、ラリマー様」
笑顔を作って、呼ばれた場所へ行こうとするカロルに刺さる視線には悪意すら感じる。
少しばかり、自分が生きて帰れるかという心配をし始めている。
「無駄に戦わなくていい、ってのがデカいよな」
「消耗が抑えられるに越したことはないからね」
「そりゃ、お前らが弱いからだろ」
勇者の言葉を鼻で笑うスノウに、アーロンが笑う。
「おれのアーロンのがかっこいいんだからな」
「しー、なのかしら」
聖獣たちは静かに、見定めるようにロナルドに目を向ける。
彼らの目には、今代の『勇者』が契約者と関わっていいような人間には見えていない。
「力に呑まれて死にそう」
「意外とタフかもしれないかしら」
赤い小鳥のルーチェが軽やかに「それとも、そうなって欲しいのかしら?」と問うと、スノウは「そりゃあなぁ」とのんびり返した。
契約者を馬鹿にされて怒らないような聖獣はいないのである。
なお、当のロナルドはローズに思い切り後頭部を蹴られていた。
「生意気言ってんじゃないわよ、ぴよぴよ勇者」
「ポンコツ勇者」
「もう少し、力の扱い方とか覚えてから偉そうな口を聞いてくれるぅ〜?」
「おい、ハロルド。こいつらの口の悪さなんとかならねぇのかよ」
「ならないよ」
何なら、もっと口が悪いのが側に控えている。
ローズたちが目立つのであまり出て行かないが、妖精たちの中で一番辛辣なのは実のところルクスである。いつも敬語であり、基本的に怒った姿を見せないが。
ギャアギャアと言いあうロナルドとローズたちの声をBGMに、一行は奥に進んで行った。




