26.三つの部屋
「ここで三つの部屋に分かれていますね」
先導するカロルが困ったようにそう告げる。
それぞれ、『隼の間』、『猫の間』、『鰐の間』とある。
そして、そこに入る前のこの広間には「すべての試練を遂げよ」という声が響いていた。
尤も、それが聞こえるのは三人だけだったが。
「それぞれの部屋で何らかの試練が課されるってことか。面白ぇ」
ロナルドがそう好戦的に笑う中で、彼と同じく声が聞こえるハロルドとアーロンはかなり嫌そうな顔をしていた。
この『声が聞こえる』という事象自体に意味があるとすれば、自分たちも何らかの役目をこなさねばならないのだろうと察したのである。関係ない神の試練に付き合わされるなんて、面倒以外の何物でもない。実際、本当ならば早く友人に追いつき、連れて帰りたいという気持ちの方が強い。
「なぁ。俺は隼の間から声が聞こえるんだけどよ」
「俺は猫だね」
声が聞こえる場所も違うということは、それぞれ行くべき部屋が指定されているのだろう。
試練をそれぞれで受けなければならない可能性が高い。
試しに声が聞こえない扉に触れたが何も起こらない。扉もびくともしない。
「これ、嫌な予感しかしないんだけど。ハルは?」
「俺もだよ」
とはいえ、ここまで来れば行かざるを得ないだろう。何せ、この広間に足を踏み入れると同時に入ってきた道が閉じてしまった。
これが神の意思というならば、やはりフォルツァートという神のことはやはり嫌いにしかなれない。ハロルドとアーロンの意見は一致した。
「じゃあ、俺行くわ。スノウ」
「おう!」
狼と呼べる大きさになったスノウとともに、アーロンは扉に触れた。すると、その姿が消える。
ハロルドも妖精たちを呼んで扉の前に立つ。
「神子様、どうしても行かれるのですか」
「はい。そうしないと出られそうにないので。皆さんを頼みます」
「……はい。ご武運を」
シャルロットの顔は納得しているとは思えないものだった。だが、ハロルドが決めたことを覆すことができるだけの材料が彼女にはない。
聖剣を握る手は悔しさを滲ませている。
「鰐は……早いな。もう向かったのか」
行動の早いロナルドに苦笑して、ハロルドも扉に触れる。
吸い込まれるような感覚と共に、どこかへ移動させられている。そして、目を開けた次の瞬間、そこには白い猫が座していた。
その後ろには土と、謎の種。
何か嫌な予感はあるが。
「まさか、ここで農業しろってこと?」
まさかの事態に、すっとんきょうな声を出した。
そんなハロルドの前で、丸くなった白猫があくびをしていた。




