13.身分
本日、オーバーラップ様より特設サイト&新作紹介ブログが出ています。
とても素敵に作っていただいたのでぜひ一度、見ていただけると嬉しいです。
馬車に乗り込む時に「男爵のくせに」などと理不尽にキレられて、ハロルドは「どうしたものだろうね」と少し考え込んだ。
元々、ハロルド自身には野心がない。神や精霊、妖精の加護を得た者として力を振るい、のし上がっていくつもりなんてないのだ。むしろ、そういうのは苦手で、できれば人の少ないところに引きこもって畑仕事をしていたい。ずっとそう思っている。
爵位というもの自体、ハロルドにとってはそんなに必要がないものだと思っていたが、それで舐められて余計な手出しが増えるのも面倒だった。
(俺はともかく、結婚したらエリザまで無茶を言われる可能性があるし)
貴族がああいった人間だけでないことはハロルドもよく知っているが、爵位が低いというだけで婚約者が何か言われるのは嫌だ。これが将来的に自分の子どもが生まれたらそちらにも危害が加えられるとしたら、ゾッとするどころの問題ではない。
「浮かない顔だな」
「少し、将来のことを考えちゃって……」
隣に座るアイマンにそう言われて、ハロルドは素直に先ほどの件を含めて相談する。彼もまた苦笑した。
「まぁ、身分に拘る人間はそれなりに多いからな」
彼は「まぁ、俺の場合は事情が特殊だが」と前置いて、故郷で婚約破棄された時のことを話してくれた。
義姉が王太子の婚約者ではなくなったことで、侯爵家の跡を継がなくなったアイマン。彼もまた、そのことで婚約を破棄されていた。
「侯爵家を継がないあなたに、何の価値があるというの?」
その頃はまだ王太子の側近になるという手段も残されていたが、彼女のその一言でぷつんとキレてそのまま貴族を辞めてしまった。
「俺は割とマメに関わっていた方だったと思うのだが、人格その他よりも、次期侯爵という肩書きの方が彼女にとっては価値があったらしい」
「なるほど、おかげで俺は優秀な家庭教師兼護衛が手に入れられた、と」
「はは、お前がそこまで評価してくれるなら出てきた甲斐もあったよ!」
頭を雑に撫でられて、少し不服そうな顔でアイマンを見上げた。
「まぁ、他のやつに左右されることはない。そもそも、お前はそこにいるだけで価値がある人間だ。それを王族もフォルテ教も認めている。なのにうるさい連中は、物の価値がわからない阿呆だ」
「あほう」
「ハルに何かあったらアタシたちが怒っちゃうしね」
「溺死?」
「生き埋めかもぉ〜」
物騒系妖精たちがニコニコとそんな言葉をつぶやいている。ハロルドはちょっとだけ「もうやってるんじゃないだろうな」と思った。
もうやっている。




